2012年11月17日
千葉・八日市場「そばの里 秋山郷」
千葉県匝瑳(そうさ)市。
のどかな田園風景の中にこんな店が現れる。
店というよりは倉庫のような、工場のような外観。
それもそのはず、建物のほとんどは製粉所なのだ。
いや訂正しよう。
面積からすれば店舗部分だってかなり広々しているので
「ほとんどが製粉所」ではないのかもしれない。
しかし店主の製粉にかける情熱、努力、労力にふれると
「ほとんどが製粉所」に思えるし、
店舗はあとからそこに併設されたものに思えるのだ。
製粉スペースの物凄い設備、雰囲気からすれば、
店舗部分はのんびりゆったり食堂のような雰囲気。
お品書きは蕎麦に集中した、シンプルなものだ。
「十割そば」
強い野性味を感じる瓜系の香り。
するんふるんと驚くほど軽く、ごくやわらかい個性的な食感だ。
こんな十割はめずらしいなあ
「田舎そば」
褐色の肌にふんだんにちりばめられたホシ。
平打ちの繊細な輪郭線。
先程の「十割そば」との対比が楽しい。
しかしながら香りの印象は意外にも「十割そば」と全く同じである。
これこそが店主の狙い定めた香りなのだろう。
「秋山郷」の店名から、長野・秋山郷の蕎麦かと思い込んでいたが
店主は理想の蕎麦を追求するため毎日蕎麦のブレンドを行っているそうだ。
今日はなんと4種のブレンド。
「キタワセ」「でわかおり「会津のかおり」「信濃2号」。
ごくやわらかくふるふると軽い蕎麦で、
その中で感じるやさしいザラジャリが楽しい。
「そばがき」
ん? なんだか表面がカピカピ・・・?
と最初は驚いたがこれは店主が試行錯誤の末たどり着いた
テフロンフライパンによる調理のためらしい。
食べてみると不思議とカピカピ感は全くなく、
なめらかな微粉のフワッと軽いそばがき。
先に出た2種のそばとは違う印象の香りで
甘くたくましい印象の、椀がきそばがきに近い風味である。
店に入った時から「どこかに小さい子がいるのかな?」と気になっていたのは
店主夫妻がかわいがっている「しゃべるぬいぐるみ」であった。
1人1匹ずつ飼って(?)いるそうで、その2匹が絶え間なくおしゃべりしている。
人なつこい笑顔でそのぬいぐるみの話をしてくれる時はいかにものんびり温和な夫妻だが
蕎麦の話となるとその熱さたるやものすごい。
工場内の設備の説明をしてくれているときの真剣な眼差し、
製粉にかける情熱は特に印象的だった、
他の店にはない個性が炸裂した「千葉の秋山郷」。
看板の「味の程いかがですか!?」っていうのも面白いなあ〜(^^)
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それはそうと、秋山郷の栃の木鉢を狙っているんだが、なかなか大変そう。
栃は当方の祖父が近隣の山から切り出したばかりの材木を背負って帰ってきて、(きっと祖父のつもりでは)蕎麦切り板にしていたが、父の代になって餅切り板になった。
そして、何も知らないガキの当方は、蕎麦切り包丁を「餅切り包丁」と思い込んでいた。
いい加減年を食ってきて、はあは、あれは蕎麦の…と漸く思い至ったのでした。
今、祖父が背負ってきた蕎麦(打ち)切り板は、当方が上京してからテーブルに姿を変えて、何の作業過程で付いたのやら知らず、大小傷が表面を走るテーブルは、夏にテーブル、冬は炬燵替わりの布団を着て、毎日活躍しています。
秋山郷、来年は行きたいものです、木鉢を買いに。
秋山郷さんは、もちろん秋山郷とは関係が深いようですよ〜
店内の美しいポスターを眺めながら素晴らしいところだと伺い、わたしも是非行ってみたくなりました。