2012年10月09日
西国分寺「潮」
毎度おなじみのこの景色。
この外観をこの角度から撮る夕暮れ時は
私の胃の中はほぼ空っぽである。
そのくらい期待でいっぱいの、気合の空腹。
この「たまの贅沢」を最大限に愉しむために、もちろん昼食は食べていない。
(今日は昼間、すごーく楽しいところに行ったのに頑張って我慢した!)
早めの集合であるから、私の胃の中と同じく店内はまだ誰もいない。
私の胃の中がしあわせに満ちてくる頃には
この店内もしあわせなお客さんでいっぱいになるのだ。
梁の上には、空腹の6人をニコニコ遠くから見下ろしているような
店主手彫りの仏さまたち。
さあー こちらも負けないくらいニッコニコで、乾杯!
(今日は一口飲んじゃってから撮ったのではなくあまりの空腹にセーブしました(^^;;))
先付
「秋茄子丸煮 隠元 茗荷」
この、たったひとつの野菜の美しさ、美味しさに初っ端から驚かされる。
夜空のような濃紺の、絵のような茄子は
美しい出汁の風味とともに実に端整に口の中に現れ消えていく。
私が煮た田舎くさい代物とは別物で、姿も高貴なら食感も高貴。
ぐじゃっとしたところがまるでなく、繊細な輪郭を際立たせながら
その身の味わいを繊細に伝えてくる。
秘密は美しく刻まれた肌。
店主が後で「茶筅に包丁を入れる」という言葉を教えてくれた。
さて次の前肴が毎回お楽しみなんだなあ〜
来たー!全長60cmほどの長皿に、3人分ずつ!
前肴
この、宝のような眺め。
皆それこそキャッキャとはしゃぎながら自分の分を取皿に。
これあたひの分♪(≧∇≦)♪
右からご紹介〜
「名残り鮎煮浸し 新鮭子」
名残り鮎は子持ち。
こんがりと遠火で焼いて、黄金色になったところを番茶で下茹ですると渋みが抜けるそう。
山椒の香りが素敵〜
新鮭子は蕪とともに。
「穴子煮凝り 名月玉子」
「うちは穴子の煮凝りは一本でやるんだけど、今は若い人の練習でバラのがあるから、それで」
という穴子の煮凝り。
穴子の煮凝り大好きの私には、
とろーんと「本物の」煮凝り感が大変にうれしい。
刻んで入っている牛蒡の香りが大変に良い組み合わせ。
名月玉子はものすごい出汁のような旨みだったが
聞けば「5分30秒から6分茹でて手のひらの上で切ってお正油を” ひとったらし ”」
それだけ!
魔法である。
「松茸昆布 鱧の卵、煮凝り」
たまり醤油と砂糖で煮た松茸と昆布の美味しさに
日本酒好きチームはびっくり大感激!
鱧の煮凝りは汁を多めにしないとゴムみたいになってしまうほどの凄いゼラチンだそう。
卵も煮凝りも美味しい〜
椀盛り
「雲丹満月 すすき牛蒡 海老麺」
すすきに見立てた牛蒡が楽しい秋景色。
これまたどうにもこうにもノックアウトの逸品である。
私は常々「椀物の汁を一口飲んだ瞬間が日本料理の一番の醍醐味」と思っているのだが
まずその感動が素晴らしかった。二の腕がしびれるような出汁の美味しさ。
その上この椀物の手の掛かっていること、その手間が辿りついた深い美味しさときたら!
アワビのスープで作り塩うにで味つけしたという、めちゃらくちゃらにおいひい玉子豆腐。
その中には生うにが入っちゃっている。
その贅沢なカタマリが全体に蒸されてほにょほにょとあたたかく極上の汁の中に浮かんでいる。
汁と、アワビスープな玉子豆腐とたっぷりのウニが、とろもにょぉ〜といっぺんに口に入ってくる。
もうどれだけ美味しくしたら気が済むのかという美味しすぎ祭。
そこに添えられた海老麺が、これまた手のかかりまくった一品。
卵の白身を加えて作ったという、人生始めての食感。
はああー 毎日これ食べてダメ人間になりたい・・・
向付け
「名残り鱧 あつ湯引き 梅正油 山葵」
桔梗の見事な椀の中。
あつあつ、ふかふかの「名残り鱧 あつ湯引き」。
出来立てを、ということで3名分ずつ運ばれてくれるのがまたうれしい。
わからず屋の私は、今ひとつ鱧の湯引きというものに理解が持てないことが多いのだが
(まず梅肉つけるのがよく分からない、お醤油つけても今ひとつなことが多く、
そのままだとやはり物足りない)
これは大変に美味しい!
ふっくらほこほこ、味が濃いのでそのままがものすごく美味しい。
あまりに美味しくてパクパク食べちゃったところで皆さんから
「梅肉と正油、両方つけると別世界に!」
という聞き捨てならない情報が。
えーやってみたかった! もう全部食べちゃったよー(>_<)
焼物
「紙やき かます 松茸 銀杏 すだち」
テーブルに、秋のお山がそのままやってきたぁ〜♪
テーブルの周りのみならず、店中が豊かな秋の香りにつつまれる。
みんなして猿山の猿のようにドタドタ大喜びしてしまう。
葉っぱの影に、トトロのお土産みたいな紙包み・・・(^o^)
紙包みをウキウキ紐解くと、わーっっ!
こんなに大きな、肉厚のかます!松茸!銀杏!
(お皿に盛りつけてみました)
このかますがまた美味しすぎる。
通常かますは1匹150~160gほどらしいのだがこれは300という極上もの。
だけあって、肉厚で味が濃くその味がやたらにおいしい。
焼き目部分も、中のふっくらした肉質も人生最高と言っていいかます体験。
松茸は「酒で洗って塩振って焼く」。日本料理の人の言葉はかっこいいなあ。
さて、メインともいうべき、本日の鍋!
鍋 「軍鶏 木の子」
この鍋に投入された木の子たちの贅沢さがまたスゴイ。
花びら茸、ショウゲンジ茸、ハナイグチ茸、花弁茸、平茸、アワビ茸、舞茸!!
店主が全国から集めてきた秋のお宝だ。
山椒の効いた汁の、バチーーッと強烈な旨み。
軍鶏まるごととこれだけの木の子から出た出汁であるからその旨みは凄いほど。
軍鶏は全部の部位が入っているのでかけらごとに形も味もぜんぜん違う。
焼き目がまた美味しい!
そして木の子は食べるのも採るのも大好きな私は「鍋の中のキノコ狩り」に夢中!
全部は解明できなかったが
左上のひらひらしたのが花びら茸。
中央上の形も食感もあわびに似たのがアワビ茸。
その右のサンリオのシュガーバニーちゃんみたいなお耳のがハナイグチ。
(乗鞍でたくさん採ったイグチとは味も姿もぜんぜん違う)
左下のまっ黄色のが花弁茸。
ひとつひとつ香りも食感も全然違って、シャクシャクしたりつるつる密だったり
木の子は本当に素晴らしい、妖精のような山の恵みだ。
こちらはおまけで突然握ってくれた、
鰹 握り鮨
脂は乗っていないけど色が大変に鮮やかで美しい鰹。
店主が脂の乗っていない鰹を選んだのもその理由からと聞いて納得だ。
もう、もう、これだけの贅沢、これだけの御馳走を食べたらですよ。
お蕎麦への思いがちょっとくらいオロソカになったっていいものだと思うのだが。
全っ然ならない!
これっぽっちもならない!!
一番好きな人に会えると思うと、私の心は
もうここにはあまり具体的に書きたくないほどドラマチックにときめいてしまう。
あああ 来たぁー・・
しかも今日はまた一段とうつくしい・・ なんておいしそうなのだろう
止「そば」
北海道・雨竜町のキタワセ。
これがまたブッチギリに美味しい・・・!!
今まで食べたもの全部美味しいがやっぱりこれが一番美味しい!!
・・・もう、私は壊れました。
この素敵な香り。
とてつもなく美しい畳。かぐわしき墨。
きっちりと密で自在なコシが、ひんやり奥へと導いていくストイックな味わい。
もう何言ってんだかさっぱり分からないと思いますが
壊れた世界の中では完全な表現となっております。
大変に美味しいということさえお伝えできたらそれでマルでございます。
(もんのすごいお腹いっぱいなのに、食べきれない方からまたまた奪ってしまった私。
それを怖そうに?眺める同席の皆様。どうして蕎麦なら入っちゃうんでしょうね〜(^^;;))
食後のデザートは、一同が最初からどんなものかと
楽しみにしていた注目のケーキ。
甘味
「山葵のレアチーズ」
甘いもの通の方もこの美味しさにはびっくり。
意外な組み合わせのようだが
山葵の爽やかな香りがチーズと大変よく合っている。
辛味はかすかで、ワインにもお酒にもぴったりだろう。
同じケーキを作っている京都有名料理屋のものより「潮」の方が美味しいと言った人がいる、
と聞いたがそれはそうだろう。これはバランスが大変難しそうなケーキである。
もうひとつ、おまけの甘味
「和栗のモンブラン」
「潮」の「和栗のモンブラン」は熱心なファンの多い大人気ケーキ。
栗の味の濃い、濃厚なマロンクリーム。
「こんなに栗の味が濃いのは他にはない!」と皆で唸りながら食べる。
中のメレンゲのような白い生地も無論店主の手づくり。
これはふたりでひとつのおまけのデザートであったから
みんなで仲良く奪いあってニッコニコ。
今夜もまた、店主作や店主コレクションの美しい器にいろいろ見惚れたが
この湯呑には、まいっちゃったなあー
素晴らしい・・
2012年5月の「潮」
2012年2月の「潮」
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