住宅街の静かな蕎麦屋。

11時半開店の蕎麦屋が多い中
11時開店というのはありがたい。
「4軒ハシゴの予定がある日」とか
「血中蕎麦粉度が下がりすぎて目覚めた朝」とかには
この30分は大きい。
その30分の間に「低血蕎麦」で倒れたら大変ではないか。
昼食時間としては早めだが
11時からやっていてくれる店には
「11時からやっていてくれてうれしいな」という人が
ちゃんと集まっているものである。
開店直後に行ったらすでに3組のお客さんがいた。
3組いて尚、店はごく静かだ。
日本人はお行儀の良い民族だなあ。
BGMも何もない店の
心地よい静寂。

この店はメニューが豊富で
蕎麦メニューいろいろの他にうどんメニューいろいろ、
また「親子丼」「かつ丼」「天丼」などご飯ものも一通り揃っている。
しかしなんといっても、「石挽き手打ち 一葉」には
蕎麦が4種類もあり、そのどれもが大変美味しいのだ。
「せいろ」「いなか」「変わり」「十割」。
何度来たって、
ここのご飯ものには一生たどり着けなさそうな私である。
今日は「十割」を1枚と、
「せいろ」「田舎」を二色盛りで頼むことにした。
「十割蕎麦」


あああああ なんと美しい・・・
繊細に震える輪郭線。
ことさらでなく、しかし存分なホシの散る肌。
これはおいしい。絶対に美味しい・・・!!
と期待最高潮でたぐりあげると
来たー・・
こうばしい、なんともかぐわしい香り。
見た目に反してつるりパキパキとした肌は
その輪郭線を繊細に浮かび上がらせながら口中をめぐる。
噛みしめるとすごい甘み。濃い!
あああ 「一葉」さんはおいしいなあ〜
さてお弁当がやってきました。

というのはうっそーん
これ、「二色盛り」です。
蓋付きの器、珍しいでしょう。
パカっと開けると真ん中に
汁と薬味がぴったりセットされているんですよ〜
「一葉」の「せいろ」と「田舎」だけに
「極楽弁当」とでも名付けたい眺めだ。
「二色盛り(せいろ蕎麦・いなか蕎麦)」

「せいろ蕎麦」

ほわあ〜
なんとも上品な白いイメージの香りが濃厚に立ちのぼる肌。
舌触りはきめ細かく繊細でこれもパキとした印象だが
噛みしめるとしなやかなコシがある。
味わいも白く美しく、しかもそれがどんどん濃くなっていくのがたまらない。
「田舎」

もうどうしましょう、このたまらぬ風情・・・
土佐和紙のような趣に満ちた佇まい。
自然そのままの蕎麦がそこに重なっているような姿ながら
「ザクザク」とか「野趣」とかいう言葉は似合わない。
繊細、上品、趣、自然。
ガツンとたくましい香りが飛んでくるような蕎麦ではなく
淡く上品な穀物の香りと味わいがたまらなくおいしい。
これもパキとしているが歯ざわりは不思議に柔らかく
平打ちなのでしなやかに口中をめぐる。
「一葉」の世界に酔わされるひととき。
蕎麦の種類が幾つかある店では
甘い香りとしなやかなコシの「せいろ」、
ゴン太たくましい「田舎」、
キッチリ密な噛みごたえで香り高い「十割」、
というようにそれぞれ個性の違いをはっきり出してくれるところが多い。
私のように必ず数種類食べたい者としては
それはもちろん嬉しいことだ。
しかし「一葉」は、表現したい世界がはっきり「ひとつ」。
その決然たる「一葉色」の中での
それぞれの蕎麦の微妙な色の違いが見事だ。
3種立て続けに食べて尚、
一枚の美しい絵画を眺めているような気分にさせられる。
しずかな、しずかな店内。
感じの良い店員さんの甲斐甲斐しい声が
映画のように響く。
厨房で働く店主の姿は見えないが、
客が帰る度、店の奥から
「ありがとうございまーす!」
という店主の声が聞こえる。
私はこの店が好きだ。


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かならず行きます!!
そうでした、ご近所でしたねー!
私の家からは遠いのでうらやましいです。どうぞご贔屓に(^o^)♪
一葉さんは近いのでよく伺います。あるようでないお店なんですよね。メニューは古典的なのに、お蕎麦はがっちり今風?のおいしい手打ち。なにもかも気取ったところがなく、気合いも感じないのですが、不思議な品と真面目さがある。
23区内においしくて素敵なお蕎麦屋さんは多々あれど、郊外のここはなんだか私の中では別格ですね。ごはんものも美味しいです。
はじめまして。いつも読んでくださってありがとうございます。コメントうれしいです。一葉さんお近いのですね〜。別格なんて、都内も詳しい地元の方にそんなふうに思われるなんて素敵ですね!