2012年06月15日
秋川「蕎麦 よしの」
滝川街道沿い、ちょうど西多摩霊園の入り口の向かい側。
突如現れるモダンな形の建物は
入口正面から見ると窓も扉もない。
あるものといえばごく控えめな
「蕎麦 よしの」「営業中」という板看板のみ。
その文字すら消えかかっている。
店のすぐ前は街道だというのに
中に人の気配が感じられない佇まいは
ルネ・マグリットの絵をすら思わせる、不思議な静けさに満ちている。
窓も扉もないと書いたが、近づけば無論入口はある。
この扉は「いらっしゃいませ、どうぞお入りください」とは言っていない。
かと言って「入ってくるな」とも言っていない。
ひどく自然にそこに「ある」扉だ。
私も自然にそれを開ける。
吹き抜けになった店内にもまた、余計なものは何も無い。
意図的な洗練も、息の詰まるような統一感もない。
不思議な、何も無さ。
これは居心地がいい。
「そばがき」
きっ
来たぁー・・・
来てしまいました・・・
「よしの」の「そばがき」!!
もう遠目に見ただけでダメ。
香りがブンブンこっちまで飛んできそうだ。
どんな香りかももうわかる気がするほど
私の五感はあのそばがきに集中している。(動物)
ちょっとみなさん見てください。
この美味しそうさ・・・・
カァー
思わず目も口も開いたままカラスになってしまいそうなほど
すんんんばらしい姿である。
香りがまた、デジャヴュだか何だかわからないが、
こんな香りが来るだろうなと思っていたとおり。
正統派の、端整な、
もうこの際「世界一!」とでも叫んでしまいたいような完璧な香りが、
「キチッ」「ビシッ」と、決然とこちらに届く。
私は固く目を閉じる。
染み渡る。
染み渡りすぎて、
もうどうしていいかわからないー・・(早く食べましょう)
意を決して口に含んでまた天上の人となる。
なんですかこの極上フワサクエアリーさんは!!!
「フワ」で「サク」で「エアリーにとろ〜」なのだ。
ポテッとした肌に均一に織り込まれた空気は
まるでよく泡立てたメレンゲの泡のよう。
歯に当たると微かに「サク」として
ハッと思うとそのまま液体と消えていく。
えっ あなた 夢!?!!
今そこにいたのに、
こんなにもかぐわしい空気の中で姿を消すとは。
ああ 今日はもう本当に
私はどうしていいかわからない。
「せいろ」
じわーーーー・・・
私とつながるように香る、滋味深き香り。
どちらかと言えば地味に、おとなしく現れたその香りは
やがて舌に広がり味わいとなり、だんだん甚大になっていく。
もはや口いっぱいが「地味な滋味」で染め尽くされている。
なんという美味しさ。なんというニクさ!
密度濃く水気も多い、ややずっしりとした食感だが
平打ちのため歯ざわりはぬたーとしなやか。
はああー 素敵すぎる。
素晴らしすぎる。
なんておいしい蕎麦なんだろう!!
ポタージュ蕎麦湯が、またおいしい。
駆け抜けていったかぐわしい夢をたどりながら、
私は、何もない空間に浮かんだような気持ちになる。
ぽっかり、 よしのに、 うかぶ。
外観も店内も、総てそのためにある空間と思えてくる。
秋川の不思議な一軒家。
ぽっかり 浮かびに来ませんか?
2012年7月のライブのお知らせ
この記事へのトラックバック
昔のお店があった時に、既にああいうシチュエーション(っていうんですかね〜?)だったのかな・・・
昔のお店は、「浅草近くのリニューアル店」の以前の姿に近く、なんかウ〇ン●い感じで、
入ってビックリー!!・・・と聞いていました。
はぁ、当方も今時世代(ジャジャ〜ン!!)なもんで...(最早ダラダラガマ脂
>「よしの」の「そばがき」!!
ですよね〜ん…(当然、否否!!、→)=『陶然』
あの大きさ、柔らかさ、存在感、諸々…
当方が蕎麦掻きに拘るのは、こちらのお店とは関係はないのですが、まあ、所謂一つの
『北極星』
的な存在ではあります。(は〜、ツオキ!!かな?
こちらのお店で舞茸天婦羅とか頼んじゃうと、お蕎麦にたどり着けない!お〇寄りもあるので(当方のように)、ご注意ください、ってか〜
釈迦セツ。
これ見たらたまりません。
本当に唯一無二の、「よしのの宇宙」と言ってしまいたい雰囲気ですよね。舞茸天ぷらですか〜、それは危険(^^;;)
25¢ さま
嬉しいコメントありがとうございます!浮かんできてくださいね☆
昔は椅子席と座敷に分かれていて、厨房とお店は配膳台くぐって行き来していて、とても狭かった。
よしの ではなく よし乃 ですよ
昔と今では随分環境が違うのですね!
名前は途中で変わったのでしょうか?今は平仮名のようです〜