2012年05月31日

白金高輪「夢呆」



駅前過ぎて迷子になった。

いや、正しくは「駅上」過ぎて迷子になった。

店は地下鉄「白金高輪」駅ホームのちょうど真上に位置しているらしい。
私の調べ方が悪いのかもしれないが、事前に調べた地図では、
どんなに拡大しても駅のホームの真上にあるということしかわからなかった。
大きな交差点の真ん中に駅のホームの形が長く書いてあり
そのまた中央に店があるように示してある。
交差点のど真ん中に店があるはずはないし、
「白金高輪駅から6m、徒歩2分」と
面白いことが書いてあるグルメサイトもあった。
2分かけて6mってどうやって進むんじゃい。

不安なまま駅に着くと
地上に出たところは中庭のある大きな駅ビルのようになっているし、
案の定さっぱりわからない。

そこにたまたま、警備の人らしきおじいさんが立っていた。
聞くと親切に教えてくれ、桜田通りの反対側に「夢呆」の暖簾が見えた。
お礼を言い、少し離れたところにあった歩道橋を渡っていると
どこからか何か聞こえる。
おじいさんが追いかけてきて下から叫んでいるのだ。
「歩道橋を降りたら右ですよー!」

店はもうそこに見えているのだ。
一生懸命お辞儀をして頭の上に大きなマルををつくって応える。
親切さが心に沁みる。


沁み入ったところに、「夢呆」。

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エントランスの吹き抜け部分が2階までガラス張りになった
白いスタイリッシュなビル。
学芸大学にあった頃の、和風喫茶のような印象だった以前の店からすると
かなり意外な店構えである。

紺地に白抜きの暖簾と、入口脇の「手打そば」という素朴な木板が
僅かに以前の面影を映している気がしないでもない。


スタイリッシュな外観からは
白い小さなテーブルがいくつもあるような空間を想像したが
店内は「家庭の食卓のような大きなテーブルが3つ」という
これまた意外なレイアウト。
カフェのように人々が憩い、スマホを操っている。
平成の蕎麦屋の眺めである。

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吹き抜け部分があるために、面積よりもずっと広々と感じる。
2階も客席になっているらしい。

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「そばがき」
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「せいろ」が840円のところ、「そばがき」は1575円であるから、
結構贅沢なメニューである。

さすがに薬味もいっぱいついてくる。
岩のりはうれしいなあ〜

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ほっわぁ〜〜ん・・・

ふわドロとろ〜んと芳しい香気の中に溶ける夢。
こりゃたまらん。

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ふわドロとろ〜んではありますが
取皿に取ると結構しっかりぽってり形を保ってすくえます。
なんとなく北海道かな?と思わせるフレッシュな香りが
私の中にじんわり溶けていく。
はああ お蕎麦とお日様の香りがたまらなくおいしい・・
今日もしあわせだ・・




「せいろ」
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横長黒塗りのせいろに、ビシッと端整な姿。

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ひんやりと清澄な冷気。
そこにひそむ香りは・・今日はかなり淡い。
ごく淡く爽やかにだが、
しかし確かにそこにある美しい蕎麦の香りを見つめるひととき。
つるりするりと流麗に口中をめぐる肌は、
噛みしめるとパキッとしっかりした歯ごたえを持っている。


以前の店には「田舎そば」という、
昼前に行かなければ売り切れになる人気メニューがあった。
私は大好きだったので何度も売り切れに泣き
行く時は昼前狙いで行ったものだが、
新しい店になって残念ながらそのメニューはなくなってしまったらしい。
そのかわり、前にはなかった
「太打そば」というメニューがあったのでそれも頼む。



「太打そば」
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以前の「田舎そば」のようなざっくりした肌の蕎麦を想像したが
きめ細かな肌をみずみずしく輝かせた太打ち蕎麦が現れた。

RIMG1157.jpg

褐色、密な肌。
手繰り上げると香ばしい田舎らしい香りが
淡くふわりと漂う。
見ての通りのきめ細かな肌は噛みしめてもみっちりとして
太さがあるだけにかなりしっかりモグモグと咀嚼することになる。
モグモグの中から、すっきりした甘みと味わいがこぼれ続ける。


思えば拙著「蕎麦こい日記」の第一回打ち合わせは
学芸大学にあった頃の「夢呆」であった。
落ち着いた店内と、中休みがないこと、駅から近いことで選んだ気がする。

ここ白金高輪の新店は駅からさらに近く、嬉しいことにまた中休みがない。
雰囲気はちょっと変わったが、それはそれでまた違う楽しみ方があるというものだ。

2階の席も是非座ってみたいなー








2012年7月のライブのお知らせ
posted by aya at 23:28 | Comment(3) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>港区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あ〜〜〜〜〜!!!!

絶対に迷って補導されるな、当方は...

まあ、迷ったら分かりやすいキッコウさんへ向かえばいいかもしれない、とか立ち直るんだとと思う。(汗;;

学芸大学の頃に1回行ったことがあるきりで、随分混んでる店だなーって思い出が。
でも、何だか色々楽しかったので。(笑

定休日とか踏んづけたら、次の手を繰り出す手段にも利用できましょう!・・・と。

蕎麦掻きは微粉派、了解しました!!(?)
Posted by よしの at 2012年06月01日 22:33
うっおっ、噂には聞いてましたが「夢呆」復活したんですね!
旧店舗の座敷は落ち着いたな・・・良く行ってたので懐かしい。

「夢呆」といえば、ある日、旨い蕎麦屋の話になり、その人をさんざん誘惑し、その気にさせて・・・
数年ぶりに行ったら、なんと休業日!

別の人とも同じ話になり行ったら・・・今度は閉店した後でお店が無い!!

あの時は本当にビックリしたな〜〜
いまでも、あの時は・・・って言われます(笑
その話になったら行ってみようかな・・。

Posted by やまもと at 2012年06月03日 01:21
よしのさま
補導って(^^;;)
どう迷っても、「駅前」であることは確かです。頑張って駅付近を一周すれば見つかります・・ていうか迷うのは私だけなのかもしれません〜


やまもとさま
わかります〜
話すのは簡単ですけどその時のショックはめちゃくちゃ大きいですよね!!
わたしにとってはかつての神田「いし井」がまさにそうでした。

Posted by aya at 2012年06月09日 10:47
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