2012年05月23日

長野・須坂市「手打ちそば処 小杉 須坂店」


蕎麦が好きな人の間では有名な店なのに、
意外と近所の人が名店と知らない蕎麦屋は多い。

住宅街の自宅改造店や都会の裏通りに隠れている店が気づかれないのは、
もともと目立たぬ立地であるからまだ理解もできる。

しかし、この店は、大きーい・・!!


RIMG1468.jpg

須坂インターを降りて数百メートル。
トラックがガンガン通る58号線沿いの、ファミレス並みに大きな店である。
だからこそ、名店と気づかれにくいのは理解できる。
私だってもし何も知らずに通りかかったら
「うーん、手打ちって書いてあるけど、どうかな・・?」
と訝しむかもしれない。




RIMG1365.jpg

54席のひろびろとした店内。
ここにお客さんが満員となったらさぞ壮観だろうが
その時店主は厨房で「千手観音」みたいになっているのではないか。

なにしろこの店主は、あとで紹介するような非常に繊細で美味しい蕎麦を
一日に何百食も一人で打ち続けてきたという
驚異の蕎麦打ち職人なのだ。
しかも蕎麦打ちはすべて独学。
というよりこの店主はなんでもかんでも「独学」で
常人の域を遥か超えた世界を作り出してしまう、
とても一回のブログでは書き尽くせぬ「超人」なのだが・・・

とりあえずお腹すいたので蕎麦、食べたいですよね(^o^)
食べよう食べよう!


ここのお蕎麦は3種類。
「霧そば」(十割・長野産の蕎麦粉100%)1200円
「雪そば」(御膳更科十割)800円
「並ざる」(十割そば)700円

3種類もあると嬉しい半面、「そばがき」も食べたい私は
「片腹痛い」じゃなくて「二腹あっても足りない」。
そんな時の強い味方が「あわせもり」!

今日は「霧そば」を堪能したいので「霧そば」を一枚。
それに「雪そば」と「並ざる」を合わせた「雪あわせ」を頼むことに。


「雪あわせ」(「雪そば」+「並ざる」)
RIMG1374.jpg

うわー「雪そば」、ほんとに雪のよう。


「並ざる」
RIMG1380.jpg

やや平打ちの、端整な姿。
穀物らしい王道の蕎麦のかぐわしさが
口に含んで「味わい」として舌に広がる。
最初空気のように香りのように感じられていた甘さや香ばしさが、
繊細なやさしいコシを楽しむうちに、
ジワーッとした「味」になって口に広がっていくのだ


「雪そば」
RIMG1385.jpg

目にまぶしいほどの白さ、肌の繊細さ。
更科というのはツマラナイものは大変ツマラナイのだが
これは全然ツマラナクナイことが見てわかる。
あなた、おいしいでしょう・・!!



空をとびましたぁー



極上の、おいしい更科は「天女の羽衣」のような香りがする、
と私は出会う度に思う。

「蕎麦の香りの、強さやたくましさや香ばしさや野性味をすべて取り除き、
 清澄な雪解け水で洗ってその上澄みだけをそっと空気にして空に放ちました」
みたいな。
(どんだけ頭が蕎麦に犯されているのか)

まあ私の頭のおかしいのは置いておいて、
おいしい更科はとにかく美しい香りがする。
つるんつるんの喉越しだけを楽しむそうめんみたいな更科とは別物である。

「小杉」の更科の天女の香り、
その「つるんつるん」ではなく「すべすべしとっ」した舌触り・・・
はああ おいしい・・・



そして待ってました!
楽しみにしていた、

「霧そば」
RIMG1392.jpg

遠目にわかる、美しい青緑。

RIMG1398_.jpg

その青々しい姿にも感激したが
それよりもさらに、驚くべきかぐわしさ!

箸先にたぐりあげて香りをこちらに寄せずとも、
ふわあぁ〜〜〜と何とも爽やかな野生の香りが
周り中の空気を染めているが伝わってくる。
青い夏の草のような、たくましさとさわやかさを併せ持った香りが、
私を山の野原へ連れていってしまう。

コシは並そばよりもしっかりとして
噛みしめるうちに味わいと甘さがぎゅうう〜と濃くなっていく。
なんというか、味の中の、下を支えるたくましい部分が
どんどん濃縮されてくる感じだ。
あああ これは確かに、どこにもない蕎麦だ・・・



ちょっと順序が後先になってしまったが


「そばがき」
RIMG1401.jpg

ムハーッ (≧∇≦)☆
あたたかな香気・・・なんというかぐわしさ!
どちらかと言えば「並そば」に近い、
野性味というよりは王道のかぐわしさだ。
ぽてふわモチッとした食感もたまらないー




RIMG1454.jpg


時分時は繁忙を極める店だというのに
昼下がりともなれば
こんな独り占めもできてしまう。
この不思議、この贅沢。


さっきまでカウンターで酔っ払っていた男性は
相当この店を溺愛している常連さんのようで
近所の人かと思ったら東京の人だった。
面白いなあ。


食後は、才気あふれる店主の作品の数々を眺め
今食べた蕎麦の余韻に浸る・・・

と書きたいところだが、この店主の作品の数々は
今食べたあれだけ素晴らしい蕎麦たちを一瞬忘れそうになるほどの
ものすごい力を持っている。

店主が自分で作ってしまった店内の設いもすごいが、
なにより、自然を題材とした写真作品の数々。
店内にも幾つか掲げてあるが、
感動をわかりやすくパッと鮮やかに捕えた、
今すぐ写真集にしてもらって買って帰りたいような写真ばかりなのだ。
(特に鳥の作品が凄い!)

蕎麦打ちでも写真でも何でも独学で、
とんでもない高いところまで登りつめて
独自の世界を作り上げてしまう店主。


こんな名店が、58線沿いにファミレスのような顔をして
ドーンと建っている。

その意味で私はこの店を「目立たない店」だと思うのだ。





「手打ちそば処 小杉」長野店





.
posted by aya at 20:43 | Comment(2) | TrackBack(0) | 甲信越の蕎麦>長野 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
小杉さんですか・・
もうこちらのお店を出して7〜8年になると思いますが、以前長野市(とは言っても市内からはかなりはずれておりますが)でやっていた手挽きの極粗蕎麦は凄かった。小さなカウンターだけでキャパシティとしては8人くらいだったかな、カウンターの中はいたる所に白い粉、悪く言えば蕎麦粉だらけのだらしない感じ、良く言えば注文を受けてその場で打ってくれる、それも手挽きの極粗を、故に蕎麦粉だらけ・・
須坂でもやったら?っと、言ってみたら「この広さ、とてもそんな事はやっていられない」 「あの手挽きの石臼は無いの?」「長野店に置いたまま・・」
何とかもう一度あの蕎麦を食べてみたいな・・
余談ですが、店裏手に鎮座しているエアコン完備のプレハブを見ると判ると思いますが、保管のみならず製粉の時まで低温でといった努力・・いたし返しではあるが、今のお店はキャパシティが大き過ぎる、願わくばご子息と入れ替わって長野市内店にお父さん、須坂店にご子息さん などとあらぬことを思ってしまう。
Posted by 而酔而老 at 2012年05月24日 06:36
而酔而老さま
ちいさなお店で小杉さんのお蕎麦をもっと独り占め?したい気持ちはたしかに募りますが、これだけ大きな場所であれだけの美味しい蕎麦を打ちまくっているということは、結果的に唯一無二のすごい個性にもなっていますよね。この場所はいわくつきの場所だったそうなので、今の成功は小杉さんならではの奇跡なのでしょう♪でもでも確かに募ります、募ります、最初に書いた通り・・
Posted by aya at 2012年05月29日 06:32
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック