東十条の駅を降りると正面に階段がある。
その階段を降りてすぐ。
数軒の飲食店の灯りの中に現れる、一際の趣。
「石臼挽き自家製粉手打ち蕎麦 一東菴」。
昨年12月にオープンした新店、そしてすでに名店だ。
店内の美しさにも驚かされる。
それは「景色」と言っていい。
唐箕の置かれた日本家屋の庭先のような眺めだが、
これ、店内なんですよ。
ほらね。
この唐箕、素晴らしいインテリアだなと思っていたら
なんと店主の両親が実際に使用していたものだという。
古道具屋で見つけてきたというのとは訳が違う。
側面には筆字で書かれた店主の苗字が読み取れ
この唐箕が使われていた日を遠く思い浮かべる。
しかもその古い農具が、真新しく美しい店内に
すんなり溶け込んでいるところがまた凄い。
その唐箕から振り返れば
客席側の壁はコンクリート打ち放しだったりする。
伝統と洗練の、やわらかなバランス。
「四季桜 特別純米」
大好きな四季桜。
すっきりとした入り口、まろやかな深み。
いくらでも飲めそう!と思うのだが
今日は本当に「一口で」真っ赤になってしまった。
「一東菴」が嬉しくて浮かれていたからかな?
「手作り豆富」
十字型の皿に盛られた楽しい眺め。
濃厚クリーミー、なめらかな舌触りはまるでデザートのようだが
味わいには潔いほど甘みがなく
すっきりとした豆の味わいだけが舌にひろがる。
「豚肉と大根のプラム煮」
甘い味付けが苦手な私なのでちょっと冒険かな?と思いつつ
オーダーしたのだが大当たり。
プラムと大根という取り合わせもいいし、
何と言っても豚が美味しい。
豚の大きさ(切り方?)がまたちょうどいいのかも。
「わさび味噌」
「焼き玉子」
卵焼きではなく「焼き玉子」。
これがまた大変に私のツボに入ってしまいました。
お皿の上でふるんふるんと揺れるほどやわらかいのだが
意外と味わいはしっかり。でも甘ったるくない。
これは一体なんなんでしょう。何だかやたらとおいしすぎます!!
普段玉子焼きをオーダーすることは少ない私だが
「一東菴」では毎回頼みたくなっちゃうなあ。
さていよいよ待ちに待った時間である。
「一東菴」には「もりそば」の他に
10食限定の「十割もりそば」というのがあるですよ。
それがラッキーなことに今日はまだあるというではないですかー!
しかも1枚ずつ頼まなくても「二種味くらべ」というのもある。
これはもうたまらなく嬉しい。
嬉しくて普通の顔をしているのが困難な程嬉しい。
「もりそば」
美しく端正な、王道の蕎麦に見えて
さらに見入ればその肌にゆらめく無数の陰影にはっとさせられる。
たぐり上げただけでふんだんに漂う、フレッシュな香り!
この澄んだかぐわしさ・・私にとってはまさに麻薬である。
もうこのまま食べなくても、香りだけで充分満足だ、
と思った時にはもう口に入っていた。
見た目以上にずっしりとした質感。
しかし噛みしめると硬さはなく、むしろ瑞々しいやわらかさがあり、
かといって噛み切らせはしない強靭なつながりがある。
その絶妙の食感が全部フレッシュなかぐわしさの中にあるのですよ。
こんなの美味しすぎます!!
多分相当おかしな顔になりながら(目が開かない)
夢中であっという間に食べてしまった。
「十割もりそば」
美しき笊の上の、美しき穀物。
こちらも先程の「もりそば」と同じく
たぐり上げただけでときめくようなかぐわしさ。
こちらには「もりそば」のフレッシュさに加え
渋い香ばしさも感じられるのが楽しい。
ずっしりした質感も似ているが
こちらの方がやはり十割らしい密な強靭さがある。
噛み締めてひろがる味わい、
脳を染め続けるかぐわしさ・・
もう何が何だか・・・おいしすぎますよ・・
「そば大納言」
甘いもの苦手な私が言うのもなんですが
これ、おいしいです!!
蕎麦とあずきで出来ているらしい?のだが
葛が入っているような食感といい
蕎麦後にぴったりなデザートだ。
私が闘牛のように蕎麦に夢中になっているうちに
店内は満席となったのだが、入り口にはまた新規のお客さんが来てしまった。
あ、と思ったら、何と正面に見えていた建物のようなしつらい部分は
個室席だった。
へええ どんな個室なんだろう
見たいな〜・・
と、あとで覗いてしまった。
うわー、これはほっこり落ち着けます。
楽しそう!ここで新年会やりたい!
今日は四季桜一口で、蕎麦に酔い、店に酔い
もう大変にいい気持ち。
つい浮かれて唐箕のことなどを尋ねてしまったのだが
入り口にある石臼も、店主のご両親が使用していたと聞き驚いた。
こちらがお父さん方ので
こちらがお母さん方の石臼。
唐箕といい、石臼といい・・
もうもう、彩ばあさんはジーンときてしまいましたね。
「立派な店に置いてくれてありがとうね〜 ばあちゃんはうれしいよ〜〜」
と誰かが乗りうつったように泣きたい気持ちでした。(怖い)
<おまけ>
かけそばもおいしいよ!
2012年01月12日
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板橋に昨年10月オープンしたリンク先のお店も良かったですよ。
なんで判るんだろう?
『焼きたまご』、面白いですね。
『焼きそば」みたいです。
昨年末、とあるお店で『カレーそば」を頼んだら
「ウチのは辛いから驚きますよ」とお店の人に言われ、
おっかなびっくり待っていたところ、楕円のお皿に
あつもりの麺が入っていて、そこへ半分だけ普通のカレールーが
かけられ、本来なら福神漬がある皿のへりに刻みネギが盛られた、
まさに『カレーライス』の『ライス』を『そば』に変えただけの、
ある意味純粋な『カレーそば』を出されてしまい
「辛さよりも形態に驚いたわ!」と突っ込みたくなったのを
思い出しました。
味は確かに激辛!! ごはんももらいました。
辛いものも甘いものも甘辛いものも好きですからいいですけど。
このブログにも酒の登場が増え、ついに甘味。
変わってきてますね。
これまでに高遠さんが行かれたお店にも、
実は蕎麦を使った甘味があったりするので、
それとなくお店の人にきいてみると……
「お品書きには無くても、蕎麦を使った甘味があったりしますか?」
「はい。甘い物、お好きなんですか!」
「いえいえ、苦手ですけど」
……これ、おかしな具合になりますなぁ。
でも、きいてみるといいですよ。美味しい甘味もあります。
今年は少し東京北方面にも足をのばしてみようかと思います。
こちらは突然行ったら入れそうなお店ですか?
是非おすすめですよ♪
素敵な情報もありがとうございます(^o^)
TCさま
相変わらずおもひろいTCさま〜
左右配置のカレーそば、拝んでみたいです。拝むだけでいいです(^^;;)
甘いものはね、お砂糖の許容量がアリくらいしかないみたいで・・味が美味しくても一口でたいてい体がギブしてしまうのです(例外があるのが我ながら不思議ですが)。
25¢ さま
もちろん普通に、突然?入れますよ!月曜日、第三日曜日お休み(祝祭日営業)です。