2011年12月20日

神楽坂「東白庵 かりべ」



六本木時代のイメージがあるだけに
さぞかしゴージャスで個性的な構えだろうと思っていた。

しかし、意外にも。

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通りから路地の奥を覗いてもすぐにはそれとわからない佇まい。
看板は小さく目立たず、簡素と言ってもいい外観だ。


参考までに、これが六本木時代のエントランス。

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そうか、あの頃はその大胆なイメージに圧倒されていたが
こうして見るとさして「ゴージャス」な演出がされていたわけでもなく
とても無邪気なエントランスだったんだな。
あれは「六本木ヒルズ」という箱がゴージャスだったのだ。

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生まれ変わって、店主の名が店名に冠された「東白庵 かりべ」は
路地突き当たりのマンション一階。
手作り山小屋風のエントランスは、さすがユニークな趣向である。

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外のメニューを見るまでもなく、もう今日の心は決まっている。
「せいろそば」「田舎せいろ」を食べるんだ!

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店内に入ると、六本木時代からおなじみの
ゴブラン織地張の猫脚チェアが迎えてくれる。
家具は同じだが店内のイメージはここもなんとなく山小屋風だ。

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(ちなみにこれが六本木時代の店内。)
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今日はお蕎麦しか頼まなかったのだが
「サービスです」と「ふろふき大根」が最初に出てきた。
庵でもてなされる畑の恵み。
嬉しいなあ。

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「せいろそば」
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きたきた来ました「竹やぶ」の、
この不思議な取っ手付きの木のせいろ。
石臼を模したようなデザインなのだが、初めて見たときは
この取っ手が右からたぐりあげるにいかにも邪魔そうで
「右手デ食ウベカラズ」と言われている気がして驚いた。
しかし右手で食べても食べにくくはないので安心したものだ。


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うっわぁー おいしそううううう(>_<)

たぐりあげるとふわぁ〜と濃厚なかぐわしさ。
熟成ではないが熟成ばりのたくましい厚みのあるかぐわしさだ。
ふっくらぷるりとした肌。
そこから生まれる豊かな弾力、コシがたまらない。



「田舎そば」
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待ってました、この木の横長せいろ、黒々とした肌。

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こんなにも粗く黒いのにこんなにも柔和な姿。
女性的なイメージすら受けるやさしい肌だ。
たぐりあげると、ああ懐かしや、これぞ竹やぶ。
荒野の庵が眼に浮かぶような、渋い香ばしさだ。
口に含んだ瞬間はふわり儚ない印象なのだが
どっこい豊かな腰がある。
そこに身をまかせるしあわせ。


店内中にあふれる「竹やぶ」阿部さんのアートのなかでも
一際目をひく言葉。

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「そばの味をひもとくと
おばあちゃんの味だったりおふくろの味だったりする
商いのそばをどんなにうまく作っても負けてしまう
当たり前のことが 少しづつ 少しづつ
わかってきました。
竹やぶ あべたかお」


阿部さんの思いがけない言葉に
小さい頃、父の書棚の高いところにいつも見ていた一冊の本を思い出す。
「九十にして惑う」という哲学書のタイトルに
私はほえ〜っと感心していたのだが、その気持ちを思い出したのだ。



店を出ると薄曇りの神楽坂。

振り返ればマンション一階に
はめ込まれたような不思議な山小屋が静かに佇んでいる。
まるで中には誰もいないかのように。


今過ごした時間はなんだったのだろう・・?



神楽坂に出現した、山の不思議な庵である。




posted by aya at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>新宿区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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