今はもう無い店について書くことをお許し願いたい。
いや正確に言うと去年書いた文章なのだが
なぜかアップせずに寝かせてしまっていたのである。
「そば切り てる坊」は現在長野県駒ヶ根市に移転し
きれいな空気の中、元気に営業中である。
しかし私にとっては、移転前の店への思いも強い。
「動いていく蕎麦シーンは止められないけれど、それを何とか形に残したくて」。
2010年5月の、「北浜 蕎麦切り てる坊」。
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北浜駅29出口を降りてすぐ2軒目の、小さな看板。


店に入り「うわあっ」と息を飲んだ。
入り口側はコンクリートで埋め尽くされたオフィス街なのに
店内正面は、大きな窓いっぱいの水辺の風景!

霧雨に煙る土佐堀川、バラ園橋、中の島公園のバラ園。
窓は大きいが店自体は小さいので
まるで水の上で食べているような感覚。
窓の外のデッキテラスがまたいい。

水辺の霧の中で、出会った蕎麦。
「玄びき」


ザラザラつぶつぶ、黒い肌に無数のホシ。
粗挽き蕎麦は数あれど、ここの「玄びき」には
眺めても眺めても飽きない美しさがある。
窓からの眺め、光の美しさのせいもあるだろう。
香りや味わいは意外に淡いのだが、
「それがどうした」とこの私が言ってしまいそうなくらい美味しい!
瑞々しいザラつぶ肌がまるで口内をマッサージするかのようにめぐり、
噛みしめると、噛み切れる直前で止まる絶妙の食感。
質感だけでここまで楽しませてくれるとは・・
「十割」


こ これは・・・・・
絶句の、美しさである。
「玄びき」と打って変わった、淡い黄緑色の超荒、超絶肌。
やわらかなそうな肌に小さな赤や茶のホシ、
そして大きな白い影がどうにもたまらない。目も心も奪われる。
美しいにも程がある。
どうしよう
あなたおいしいでしょ
たぐってみよう
エイ
・・やはりここの店主は「質感の天才」かもしれない。
こんなにもやさしく軽く、それでいて無数のザラつぶにくるまれるような。
ザラザラつぶつぶの雲の中で眠るような。
噛みしめるとまた淡く美しいさらしなのような香り。
「玄びき」もすばらしかったが、この「十割」は・・
素晴らしすぎる。最高すぎる。
わーん おいしいよう〜〜
次回は是非ウッドテラスで!
晴れた日に、「てる坊」に行こう。
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移転後の「駒ヶ根 そば切り てる坊」は
明日アップしまーす。
どんなお店になったか、お楽しみに!
嬉しいコメント、ありがとうございます〜
アップしました!