2011年09月29日

兵庫・丹波市市島町「そばんち」


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丹波市ののどかな田舎道ぞいに現わる、ちょっと不思議な建物。



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映画のセットのようなレトロな看板に混じり、
「そばんち」と屋号があるが・・
うん?入り口は何処だろう。



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どうやら店は右手にあるこの建物のようである。

入る前から何だか面白い店だぞ・・



店内に入ると「はーい」とどこからか声がするが姿は見えない。
まもなく店主が出てきて、広間に案内される。

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窓いっぱいの、田園風景。
遠く重なる山の峰、平和にひろがる田んぼ。
なんと贅沢な眺めだろう。


「目の前は道路ですけど、ほとんど車通らないから気にならないんですよ〜」
と、嬉しげに語る店主。
定年後開業し、ここでの生活を楽しんでいるのが伝わってくる。


楽しんでいるどころではない。
このイタズラ心たっぷりの、楽しいメニューときたら!

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お任せ「そば膳」「そば三昧」グルメ鉄道の旅!

店主は鉄道ファンなのか、コースメニューが
「鉄道すごろく」のようになっているのだ。

大真面目な顔で
丁寧にウキウキと説明してくれる店主が楽しくて、
何も食べないうちからこちらも大ニコニコ。

楽しみだなあ〜
どんな蕎麦鉄道の旅なんだろう!


まずスタートは

「揚げそば」
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「平飼い鶏の有精卵 黄身の色が違います」
とすごろく、じゃなかったメニューにある
「出汁巻き」
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この「出汁巻き」がですね・・
結論から申し上げますと、今までの人生で一番くらい、美味しかった!!

とにかく卵がものすごい。
卵の味がぎゅうううー!と濃くて、しかもしつこくない。
食べていて「美しい」と感じた卵なんて初めてだ。
焼かれた層の中にトローリと、濃厚なソースのような卵のうまみ。
ちょっとちょっと、出汁巻きの段階でここまで感激させられてしまうとは!

なぜか私の前に正座している店主さん・・
もしや只者ではないですね・・・?


お次は「ミステリー駅」停車。
「何が出るかお楽しみ?」とあるが、今日は

「梅そば」
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すっきり、ひんやりとした出汁の中に
太い平打ち蕎麦。
梅としその風味がさわやかで、しそ好きの私には嬉しい美味しさ!
とは言え梅や柚子に敏感すぎる私。
すごく美味しい・・けど早くお蕎麦の味を感じたい・・
焦るな、自分!



お次の駅は店主の遊び心の最高峰。

「辛味大根ぶっかけ」
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真ん中に黄緑色の大根と
ムラサキ色の大根がふたつ。

店主ががっしりした指で小皿を手にとり、
ムラサキ色の大根の一つにスダチをかける。

「いいですか見ててくださいよ〜写真撮らなくていいですか〜っ?♪」
あまりにウキウキ張り切っているのでこちらもつい
食いつかんばかりに見守る。
すると、

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わぁー ムラサキが鮮やかなピンク色に!
楽しいー!
しかし「へへへー楽しいでしょっ」という笑顔で
こちらを向いて正座している店主はもっと楽しい。
私はたまらない。

「辛味大根ぶっかけ」はさほど辛くはなく
スダチの香りがふわぁ〜っと美味しい。
ここの汁はやや甘めなので辛味大根との相性がいいのかもしれない。



「そば掻き」
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ここまでの粗さは珍しいほど、
限界まで粗く碾かれたザックザクの粒たち。
口に含むとフレッシュな緑の蕎麦風(!)が
ぱぁーっと体中を吹き抜けるようなかぐわしさ。
ザラザラのつぶつぶが、モチモチでつながっている感じの肌は
どこか白米のような甘さも感じ、
うーんこれは実にユニークな、素晴らしいそば掻きだ。


「水そば」
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悪い癖だが、だいたい私は
「水そば」というものをバカにしがちである。
汁の味なしで食べさせるというのが新鮮な演出なのかも知れないが
もともと汁をつけない私には水の存在がただただ邪魔なだけである。
蕎麦肌が水でコーティングされて、
蕎麦の味が全く薄まって感じられてしまうのだ。

しかし「そばんち」の「水そば」で目が覚めた!
このたまらなくフレッシュな香り。
水の中に泳ぐ粗碾きの白い肌の美しさ。
何から何まで驚きの水そばである。
噛んでふくらむ、白いイメージの品のいい蕎麦の味わい、
しろくまあるいかぐわしさ・・・
ああ恍惚・・・


しかしコースはまだまだ続きます。
いったいどんだけ蕎麦を食べるんだ、と思われそうですが
一品一品の量は多くないのでお腹はまだまだ余裕でっす!
(これが肉料理ならとっくにドロップアウトしている私だが)


「粗碾盛りそば」
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ああ あなたは。
夢のように、美しい。

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カァー 


「そば掻き」と同じ蕎麦を碾いただけあって
これまた吹き抜けるフレッシュな緑の蕎麦風!!

不思議なことに、同じ蕎麦でも
そば切りとなると何だか味わいにひねの要素が出ている。
はなやかでフレッシュなかぐわしさと、老成した雰囲気の渋い味わい。
ああもう 美味しいものにふりまわされて
何がなんだか・・・



終着駅は

「そば雑炊」
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蕎麦の実というのは煮たり炊いたりした時が
一番蕎麦感が薄いと思う。
よって蕎麦雑炊を食べる時は普通の米雑炊を食べるときのように
心平らかに落ち着いて楽しむことができる。
鴨とネギの浮かんだ蕎麦の雑炊。
鴨の出汁がおいしいなあ。


食後の店主との話で偶然、コーヒーの話になったのだが
なんとここのコーヒーは「石臼コーヒーミル」なるもので
店主が手碾きしているとか。

そら飲まなあかん!

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これがまた。
びっくりするほどおいしいのだから参ってしまう。
深くて、やわらかくて、コクがあって、甘い。


え〜〜
出汁巻きがあんっなに美味しくて
蕎麦もあんっなに美味しいのに
コーヒーまで美味しいんですかあ〜〜


自分のやっていることを自慢気にでもなく
ごく普通の態度で丁寧に説明してくれる店主は
なぜか自然に、ずっと私の前に正座している。
今は黙って、遠くの山を見ている。


なんて面白い、素敵な午後だろう。


そばんち、ばんざい!


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10月の出演のお知らせ


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posted by aya at 07:46 | Comment(1) | TrackBack(0) | 関西の蕎麦>兵庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今日食べログを見て行って来ました。ランチを食べましたが、大変美味しいかったです。今度は予約をして行きたいです。

Posted by 藤井五男 at 2013年10月23日 16:34
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