おいしいものでいっぱいの楽しい街、福岡。
出会う人々も明るく親切で美味しいもの好き。
そしてここはなんと言っても名高き小麦粉圏である。
土地の人代表、ベーシストSeigo氏によると、
全国的に「博多ラーメンの街」と思われている自覚はあるし
博多人たるもの、誰もがとんこつラーメンにゃ一家言あるのだが
実際は「一番好きなのはラーメンではなく、やっぱりうどん」
という人が圧倒的に多いのだそうだ。
私はついぞ食べなかったが福岡のうどんてとてもやわらかいんですって?
(蕎麦で忙しくいつもその土地の名物を食べ損ねて帰る私)
魚が美味しくて、モツ鍋も大人気で、
しかもあの天下の博多ラーメンを超えるほど
うどんが愛されている街ですから、
もはや蕎麦が入り込む隙なんてほとんどないのではないか?
今回も私と一緒に何軒ものお蕎麦屋さんに行ってくださった
福岡県人の皆さんが口を揃えて
「福岡にも美味しいお蕎麦屋さんがあるって初めて知りました!!」
と言ってくれたほど、お蕎麦屋さんの存在は地味らしい。
しかしそんな中でもかなり知名度が高いのがこの
「信州そば むらた」である。
え、福岡で信州そば?なんて思うなかれ。
東京には博多ラーメン屋もモツ鍋屋も無数にあるし
日本中にニューヨーク・カフェがあるではないか。
冷泉町の裏通りで一際の存在感を放つ、
どっしりと趣のある構え。

大人数ゆえここは楽しく「厚焼玉子」を分け合う。


甘さも程よく、美味しい美味しいと皆に大人気。
奥の座敷席でのゆったりしたひとときを
こうして写真でちょっとだけ紹介すると、
なにやらやたらしっとり落ち着いた店のように見えるかもしれない。
たしかに店構えはあの趣だし、
最近リニューアルしたらしいメニュー表なども洗練の雰囲気なのだが
壁に張られたメニューを見ると途端に何だかなごんでくる。

「君の名は・・・ビーフコロッケ 博多で一番美味しい 1ヶ300円」
「博多で一番おいしい親子丼」
「博多で一番おいしいぜんざい」
「大将出身北九州名物 肉うどんそば 一番人気」
やる気満々なコピーが可笑しくて一同注目。
そしてグルメで陽気な博多人、
「えー、博多一なんて言われたら、他にもおいしい店知っているから、食べとかんと!!」
としっかり乗る。親子丼を頼む人、ぜんざいを頼む人(^o^)。
やっぱり福岡、楽しいなあ〜
ここは天ぷらも人気のようだし
丼物も種類が豊富なのに
蕎麦のメニューも「もり」「田舎」「十割」とあり
それぞれに「小もり」「もり」「大もり」と
サイズが選べるようになっているきめ細かさ。
それはなんとありがたい、と
「小もり」「田舎小もり」「十割小もり」
を頼むことにした私。
「小もり」


「田舎小もり」

一枚ずつやってきたのだが
食べているうちに全部が揃ってしまい
絶景かな三色の眺め。

「十割小もり」

それぞれに色や肌の質感の差こそあれ、
どの蕎麦も細切りの繊細な食感。
涼やかに流れるようにつるつるしている。
しっかりしめられているせいもあり香りはごく淡いのだが
「田舎」は食べているうちに甘さと香りが深まってきた。
あまり信州そばっぽくないという気がしないでもないが
特にそれを求めているわけでもないので逆に非常に興味深く、面白い。
グルメな博多っ子に長年愛されてきた蕎麦は
こんなふうにひんやりつるりと、粋な喉越しなのだった。
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