
ドーーーン!
何とも度肝を抜く店構えである。
自由が丘の閑静な住宅街。
駅から(迷わなければ)徒歩10分とは言え
住人以外はほとんど通りかからないエリアだ。
こんな場所にこれほどの偉容を誇る、純日本家屋の店舗。
蕎麦屋としては驚くべき存在である。
店名の「衾(ふすま)」はこのあたりの旧地名だそうで
そういうものを大切にする気持ちはありがたい。
なくなっていくものは、まもらなければ、なくなってしまう。
(武蔵村山市のディープ居酒屋「くぼがた」も旧地名(^^))
中に入ってみれば、なるほど。
ここは全くの民家を改造した店であるのがわかる。

和室の縁側部分の席に通されると
初めて来た場所なのに不思議と懐かしい気持ちにさせられる。
母のアルバムの中にある家に似ているのかもしれない。

お通しとして運ばれてきた「蕎麦味噌」。

「あい焼き」。

さっぱりと焼き上げられているからこそ脂がおいしい。
「ほたるいか酢味噌」

ほたるいかは大好物!
(このほたるいかさんは後に大活躍〜)
そして「自家製」という、蕎麦。


手打ちの風情がないのは残念とはいえ、
むわぁ〜と濃厚な、蕎麦の香りが漂っている。
乾麺ぽいといえばそんな風味なのだが、
たまに出会う「無味無香の手打ち蕎麦」より私には楽しい。
私がおおいに気に入ってしまったのは、ここの「とろろ山掛け」。

(器もすき。蔓植物描絵に弱いのだ)
この「とろろ山掛け」、おつまみのメニューから選んだのだが
感じの良いスタッフの女性が「お蕎麦の時に持ってきましょうか?」
と気を利かせてくれた。
蕎麦時、汁またはプラスαが必要になるかもしれぬ・・・
と予感していた私には渡りに船。
是非そのタイミングでと頼んだのが大正解。
千葉産というこのとろろ、
ものすごい粘りとふっくらした味わいで素晴らしく美味しい!
これにね、汁入れてグルグル混ぜて
そこにお蕎麦をたっぷり入れてズルズルっと食べれば、
そりゃーもう、おいしいーーー♪
(しかも告白すれば,私はそこにほたるいかも投入したのだった。
そんなもん美味しいに決まっているではないか!)

窓から見える庭はさりげなくライトアップされ、
見事な松が見栄を切っている。
松好きにはたまらぬ贅沢。
何事もノリのいい私は、すっかり金沢にでも旅行に来たような気分だ。
「暗闇坂宮下」の系列というこの蕎麦屋。
これだけの店舗で、もしこれが料亭であれば
なかなか敷居が高いものになってしまうだろう。
しかしここなら、せいろ800円という親しみやすさ。
これで蕎麦が手打ちであってくれたならという思いは拭えないが、
自由が丘に遊びに来た人が喧騒を離れ
ここで庭を眺めつつランチでもしたら
さぞや贅沢な気分になれるだろう。
そういう意味で、価値の高い蕎麦屋なのだ。
*高遠彩子3月〜5月のライブ出演予定*