2011年02月27日

両国「江戸蕎麦 ほそ川」


春の宵、路地裏に浮かんだぼんぼりのような。

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灯りの中に流れる、磨かれた時間。


毎度のことだが、私はここの器が大好きだ。

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ゆったりと大ぶりの湯呑み茶碗。
その隙無き完全さと、無邪気な大胆さの同居が心憎い。
そして、この空間にこれを選んだセンスは、憎すぎる。




あさつきと烏賊の酢味噌和え。

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酢味噌は甘くて苦手なものもあるが
勿論ここではそんな不安は無用。
素直な春の香り、日本の味である。


そしてお楽しみは・・・
イエまだ蕎麦じゃあありません。
「ほそ川」の「穴子の天ぷら」!
キャッホー!!

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ええ、ええ、たしかに私は穴子の天ぷらが好きですよ。
でもやはりこれは特別な存在なのだ。
バリッと香ばしい衣の旨さ。(美味しさ、って感じじゃないんだなー)
滋味深き、たまらぬ穴子の味わい。
これよりもっと「巨大!」とか「ふっくらフカフカ!」
という美味しい穴子の天ぷらはあるが
何だかなあー「ほそ川」のこの小慣れた、粋な、
ウー もうどーでもいいや
とにかく大好きなのだ!!

蕎麦前の最後、
「穴子ときゅうりの酢の物」。

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どんだけ穴子好きなのかって、どうぞ高遠穴子と呼んでください。



そして非常に静かにあっけなくやって来てきてしまう、感激の瞬間。
本日の1枚目、「茨城」。

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大きめの丸い笊にひろびろと平らに盛られた、「ほそ川」のせいろ。
誤解を恐れずに言えば、今日の蕎麦はいまひとつフォトジェニックでない。
しかしそれは決して美味しくなさそうなのではなく
極上のだだちゃ豆のような凝縮感と、老成したような迫力を感じる姿である。

フォトジェニックでないとは言ったが、
美しさをさがして目を凝らしくまなく見つめれば
ああやはりこんなにも、美しい。

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姿で感じた迫力は、やはり。
箸先からただよう王道のかぐわしさ。
コシだの味わいだの、私ごときに余計なことは感じさせない、
言うなれば、「隙のない王道の味」。
はぁー・・・素晴らしいー・・・



2枚目は、「北海道」。
なんと、運ばれてきただけで香りがぱぁーっと空気を染めた。

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たくましく、それでいて乱暴さは微塵もない、静かな大地の香り。
蕭蕭と広がる、朝霧に包まれた北の大地が目に見えるようだ。
しっかりと受け止めてくれる腰を噛みしめれば
味わいと甘みが口中いっぱいにひろがる。

そしてこれも毎度のことだが、
ここは汁が素晴らしすぎる。
私の好みで言えば、完璧だ。
どうにもこうにも・・ああ来てよかった。しあわせだ。



駆け抜けた夢のあと。
食後に出されるお茶にも、毎回ノックアウトされる私。
大好きなこの湯呑茶碗。

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ここは、国立博物館か平成館か。
安らかさに満ちた、完全なバランス。
手にとってハッとさせられる絵付けの高台にはシビレるばかり。


この味、この蕎麦にしてこのセンス。


家に帰ってもまだそのよろこびが続くような、
「心を豊かにしてくれる時間」は、ここにある。


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2010年6月の「江戸蕎麦 ほそ川」


posted by aya at 23:48 | Comment(4) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>墨田区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たいしたもんだ。

ぜいたくな時空。

私もいつか味わいたいものです。
Posted by カスガアキラ at 2011年02月28日 16:14
お、昨日は両国でしたか。私の方は去年同様、『東京蕎麦マラソン』でしたので、途中、お顔を拝見しようと寄ったのですが、お忙しそうでしたので、お元気そうな御様子を一方的に確認して、レースに戻りました。
ただ、レース中に他の用事が3件もあったため、決定的に時間が足りなくて、完走ならず。

新宿『箱根そば 本陣』の『かき揚げ天そば』
有楽町『慶屋』の『カレーそば』『ポテトサラダ』『酒』
銀座『箱根 暁庵 銀座店』の『桜切りそば』
浅草『名代 富士そば 浅草雷門店』の『玉子そば』

以上で終了でした。ま、十二分に食べ過ぎです。
やはりロスタイムは後半にひびきますね。

ただ、今回初めて使った『暁庵』からのコースを真下に見る眺めは、大都会で行なわれる唯一の『蕎麦マラソン』として必要な視点を再確認させてくれるものでした。
よくマラソンは人生に例えられますが、11階という高さから豆粒ほどに見えるランナーの姿を見おろした時、その目に映るのは、『競技者』ではなく『生きる人の姿勢』なのですな。どうしてもそこが見えてしまう。神の視点ではなく、先に召された者としての視点。築地方面に走るランナーの背中は「いつかの自分の背中」です。「もう自分はあんな風に走れないのだ」と思いながらの眺めです。その召された者としての気分で、命をつなぐ食事をする。罪は罪として。明日は明日として。
今大会の白眉と言えます。
でも桜の香りが穏やかでねぇ(文句言うな)。

次回への課題としては、
1)『並木やぶそば』の行列はどうにかならんのか?
2)日比谷通りや築地や有明方面に良い競技ポイント(蕎麦屋)は無いか?
3)『ちょっと呑んで良い』という大会規約の『ちょっと』に拡大解釈があるのではないか?
4)参加者1人なのにメダルを作ろうとするのは、よした方がよくないか?
5)もうじき50歳だが、こんなコトしてて平気か?
などです。

ではでは。次回大会の際、時間がおありな御様子だったら声かけます。



Posted by TC at 2011年02月28日 21:57
カスガアキラさま
カスガさんは「美」に敏感ですからここはいいですよ〜
いつかと言わず、近々!
大江戸線両国駅おりてすぐですから〜 (^○^)
Posted by aya at 2011年03月02日 18:51
TC さま
ウワー!ギャー!
全くTCさまときたら・・面白すぎて彩子ヘナヘナでやんすよ・・・読みながらニヤニヤしまくって首を左右に振り過ぎて目が回りそうでした。もう、どんだけ面白いんですかー! (≧∇≦)
次回への課題がまたヤバすぎます。可笑しくてどうにかなりそう。
でもね、ちょっとぷんぷんですよ。一方的に確認なんて!時間なんて作るもんですから、どうぞ割って入ってきてくださいませ♪!!

Posted by aya at 2011年03月02日 19:01
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