2010年12月15日

祐天寺「蕎や 月心」


駅からはすこしばかり歩くが
是非とも歩いていただきたい。

その先に灯る小さなあかり。

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「蕎や 月心(つきごころ)」。
小さな入口の奥に、私の大好きな時間がある。



拙著「蕎麦こい日記」編集打ち上げ蕎麦会の時もこのブログでご紹介したが
あの時は「是非、月心で!」と私が熱烈セレクトしたのだ。

蕎麦ネタ漬けの日々のせいで「蕎麦ボルテージ」が
最高潮に達した編集スタッフの皆様。
責任とって絶対に美味しいお店にお連れしなくては、
ということで選んだのだが、
あの時はたのしかったなー

皆さん口々に「こんなお店があるんですねええ!!」
と感激して下さり、もう私まで嬉しくって大ニヤニヤ。



あの日も大人気だった「辛味鳥」。
大好物なので、やっぱり今日も一番に頼んでしまう。

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地鶏美桜鳥のささみと辛味大根を和えたものなのだが
ささみの生感といい味付けといい、実にすばらしい。
そこにおろしというのがありそうでない組み合わせだ。
さっぱりしているのに、
鮮魚の刺身をつまんでいるような「ご馳走」の存在感。
凝った料理より素材を味わうのが好きな私にとっては
最高に美味しい鶏肉の食べ方と言っても過言ではない。



今日はじめて頼んでみた
「鴨ハツの塩焼」。

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オヤジな食べ物が好きではあるが美的な趣味は女子な私、
まずこの「見せ方」のセンスに嬉しくなる。
洗練の塩味、ガツンとおいしい大人のつまみ。
私が本物のオヤジならここまでで2合はいってしまうだろう。 うーん、月心さん、さすがです〜


そして、「牡蠣のみぞれ煮」。

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外が寒かったせいもある。
お腹がすいていたせいもある。

ただ単に大根おろしと牡蠣が大好物ということもある。

理由はどうあれとにかく私は今回これがべらぼうに気に入った。
「全てのお蕎麦屋さんにこれがほしい!!」
と訴えながら(?)食べた、全身に染み渡る素材の旨み、あたたかさ。

吹雪だろうが氷点下だろうが、かたくなにせいろしか食べない大馬鹿者の私、
こんなに大好きなものづくしで体をあたためてもらえると、
かたじけなくて男泣きしそうである(文章はイメージです)。
こんなふうにすっきりと、季節の喜びを堪能させてくれるごちそうスープはなかなかない。


蕎麦。
「蕎や 月心」の蕎麦はそのネイミングからしてしびれる。
まずは「玄挽田舎」から。


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細切りの黒い蕎麦は
ずっしりとした存在感を誇るかのように小山盛りでやって来た。

はじめの香りは、お、 意外なほど何も感じない。
しかし「いやちょっと待て、これは・・」と
猛犬(私)を制御するかのように努めてゆっくり食べると、
出てきました出てきました、すんばらしい香りが!!

野性味、と言っても荒々しさ生々しさにつながるものではなく
侘寂の野趣。
しっとりとした食感の中に時々ごく小さく、
しかし鋭い「ジャリッ」という粗挽きの粒を感じるのが快い。
「玄挽田舎」という美しい名前、この蕎麦には実に似合う。




そこへ「細挽せいろ」が運ばれてきた。


こんなことはあまりないのだがお店の人がこちらへ歩いてくる時から
私はその手にあるものにただならぬ何かを感じた。
(今思うと私スゴイ)
前に置かれて固まる私。


この神々しさ・・・

これは一体、何だ。



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大袈裟でなく、伊勢神宮の本殿に対峙した時の感動に似ていた。

ある意味初めての感覚だった。

清らかで,おおらかで、超越した存在に見えた。


たぐりあげると、清澄なかぐわしさがひそやかに伝わり
食べてさらに驚く。

ひとくち。一瞬の静寂。
そこに、水面にひろがる水紋のように、パァーーッと
かろやかな味わいが口中にひろがった。
蕎麦の味わいの美しいところだけをふわっとすくいとったかのような。

お、お、おいしい・・・
何なのだ、この蕎麦は・・


おいしすぎて目が全然開かない私にお店の人が
「これ、いいでしょう?茨城なんですよ」
と教えてくれる。

あー、そうだったのか!
今年もあちこちで食べているが、今年も赤城、やっぱりいいなあー
農家の人が頑張ったんだなあー
ありがたいなあー

そしてその蕎麦を選び、そこにただ水を加え、あとは腕だけで
「伊勢神宮の本殿」をつくっちゃった「月心」さんは私には魔法使いだ。

いつも、思うのだ。
名店の打ち場は、鶴の機織部屋。
魔法の生まれる場所である。





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posted by aya at 23:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>目黒区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
黒くまぶしい玄挽田舎。
食欲をそそられます。
Posted by 25¢ at 2010年12月21日 00:51
そう言っていただけるとアップした甲斐があり嬉しいです!私までまた食べたくなっちゃいました〜(^O^)
Posted by aya at 2010年12月23日 12:05
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