2010年12月08日
京成立石「蕎麦処 むらこし」
京成線「京成立石」駅から奥戸街道を歩き
本奥戸橋を渡ったところに「蕎麦処 むらこし」はある。
たまたまお客さんのいない時間に行ったため
店内はシンと静か。
テーブルにはスポーツ新聞が置かれている。
白いエプロンが甲斐甲斐しい、感じの良い女性に
「せいろ」と「田舎」をお願いすると
年配の店主が出てきて
「田舎は時間がかかりますがよろしいでしょうか・・・」
と申し訳なさそうに言ってくれる。
ん?まさか、今から打ってくれるのだろうか?
たしかにメニューをよく見ると
「ご注文を承って打ち上げる本格そば
お時間少々ご了承ください」
とある。
待っていますからいいですよと答えると
店主は早速打ち場に入り、
落ち着いた動作で蕎麦を打ち始める。
迅速だが、急ぐ風でもなく、
彼が毎日そうしているように、確実な動作で打っている。
気がつくと私は、うっとりとその職人に見惚れていた。
その人のさっぱりと整った風貌が、
いかにも江戸下町の職人らしく感じられたせいもある。
断りも無く写真を掲載するのはいけないことだが
私がシビレていたイメージを、ほんの小さく。
静かな店内にコトコトと聞こえてくる仕事の音。
貴い時間だった。
「おまたせいたしましたー」
長く待たせて申し訳ないという心のこもった声で
女性が持ってきてくれた「せいろ」。
いやいや、今ないものを注文したのはこちらですから・・
とこちらが恐縮したくなってくるほどだ。
というより、「注文を受けてから打つ」ということを当たり前のようにしている
この店が凄すぎる。
「田舎終わりました」「粗挽き売り切れです」という
痛恨ズタズタのショックを週に一度は受けている私には
おとぎの国のような店である。
甘い粉の香りをふわりとまとい、
ふっくらとしたコシを持つ「せいろ」。
筑波山の麓で栽培された常陸秋そば。
噛みしめるとほくほくとした蕎麦の味わいがやさしく広がる。
そして、たった今打ち上がった「田舎そば」。
もう何だかありがたくってどうしましょう。
黒めの肌に小さなホシをまばらに浮かべた
見るからにやさしい風情の田舎。
口に含むとふわんとしたコシが受け止めてくれ
ほのかに野趣の感じられる薫りが広がる。
この、まごころのこもった「せいろ」と「田舎そば」がですよ。
500円。と600円。
もう、本奥戸橋のたもとまでダッシュして泣いてもいいですか。
「蕎麦処 むらこし」。
本奥戸橋東詰からすぐである。
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>ほのかに野趣の感じられる薫りが広がる
まさにそうです、「ほのか」そこには正直言えば チョット淋しい気もするお蕎麦かもしれない、でも、でも、
>「田舎終わりました」「粗挽き売り切れです」という
痛恨ズタズタのショックを週に一度は受けている私には
おとぎの国のような店である。
これが私には、飛びっきり!!なんです。
その気持ちが、心意気が、私は好きなんです。
初めて一見さんでお邪魔した折りも同じような感じでした。
マッチ箱の絵柄に店主の全てがあるような気がする、大した事は無いが「大好きな、頑張って欲しいお店」の一つです。
良い原材料に巡り合えれば、手に入れられれば・・・ きっと・・・ もっと、もっと・・・
人柄の素朴な温かさや人情に滅法弱い 而酔而老さまらしい素敵なコメントありがとうございます。本当に、泣ける心意気ですよね。田舎を注文するのは申し訳なくなるくらいですが、あの蕎麦を打ってもらっている間の時間は忘れられません。
マッチ、もうなかったんですー!!
(;o;)(;o;)(;o;) 残念・・・