2010年10月28日
代官山「手打そば 山崎」
代官山は、私が知る限りでも随分変わった。
古くは、先年亡くなった私の大叔母が住んでいたりもして
大叔母は大叔父とともに俳優だったので「芸能人だけに洒落た所に」と思っていたのだが
考えてみれば大叔母夫妻が住んでいた時代代官山の辺りは何もなかったはずだ。
ここ10年程で大きな商業施設がいくつか出来たとは言え
ぱっと見た街の印象はそう変わらないところも多いのだが
まず歩いている人の数が違う。
今日はなにかお祭りですかというくらい、
これが代官山かと目を疑うような大勢の人が歩いている。
一見普通の住宅街のような路地が多いのは変わらないが
どの路地にも何やらお洒落そうな小さな店の看板がちょこんと出ていて
これまた洒落のめした若者がそこから何人も出てきたりする。
そんな中、道端に翻る「手打ちそば」の幟。
いいですねえ〜、唐突なこの風情。たまりません。
店はマンションの二階にある。
入り口には飛び石や玉砂利、竹垣で小さな景色が造られ
下から見上げるとそこだけぽっかりと浮かんでいるようである。
店内には4人がけ、2人がけのテーブル席が全部で4つ。
各テーブルの間隔がかなり広く、
代官山という土地ながらゆったりとした空間だ。
と思いきや、なんとこの店は奥が非常に広くなっていて、
奥にもさらにテーブル席がある。
常連さんなどは奥の部屋で落ち着くのがお気に入りのようだ。
店は、素朴な接客ぶりから誠実さの伝わる、
じつに感じのいい店主が一人で切り盛りしている。
ランチ時はセットメニューもやっているが
私は例によって「せいろ」。
明るい肌の、優等生な印象の蕎麦。
箸先にたぐり食べる前から小さく喜ぶ。
「これは美味しい!」
ふわっと、かぐわしい香りがひんやりと伝わってきたのだ。
見た目はふんわりとした印象だったが
口に含むと意外にもしっかりとした歯ざわり。
たまたま私のところには数本固いのもあったのだが
前にも書いた通り「ばらつき大好き」の私なので
それはもぐもぐ喜んで食べた。
大きめの笊にふんわり盛られた蕎麦は意外と量もしっかりしており
この土地柄にしてこの空間にしてこの蕎麦にして
630円てぇのは良心的すぎやしませんか。
良い店は放っておかれるわけはなく
目立たぬ立地ながら客足は次々と途絶えぬ。
しかもさすがは代官山、客層はほとんどが若者で、
皆様ハイファッションっちゅうかトップモードっちゅうか
スーツ姿の男性にしたって神田辺りとは訳が違います。
光沢生地の細身シルエット、そこに紫ピンクのネクタイ&セルフレームの眼鏡ときている。
特筆すべきは、近所の会社の人らしい常連さん若者グループ。
店に入ってきた時から、全員が全員ニッコニコ、満面の笑みで
「こんにちはぁ〜」と店主に挨拶している。
愛されているんだなあ、と見ている方まで嬉しくなる光景だった。
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