2010年10月16日
群馬・前橋「手打そば 浅川」
言葉にできない蕎麦。
「浅川」の蕎麦を、敢えてそう表現しよう。
野性的な蕎麦。
やさしく品の良い蕎麦。
むわぁ〜とかぐわしい香り。
舌にひろがる甘み。
弾むようなコシ。
すべらかな舌触り。
蕎麦に出会えば出会った数だけ、
私はその蕎麦の世界に見入り、染まり、
その蕎麦への賛美の言葉が溢れて止まらなくなる。
あなたはこんなふうにあんなふうに美しい、
あなたはこんなにもこんなにもステキだ、と
愛しいものへの形容詞など考えずとも浮かぶものだ。
しかし「浅川」の蕎麦には
何かズバリと言い切れない魅力がある。
店主の打ち出す数種の蕎麦のそれぞれの個性は
微妙な中間色で彩られ、
これだ、とつかまえようとしても
何色なのか中々教えてくれない。
前回「浅川」を訪れたときには
私はもうこのブログをはじめていたから
そしてその時間は本当に素晴らしかったから
当然私はブログに書こうと思った。
しかし書けなかった。
覚えているのは
”前橋に凄い店がある。
蕎麦が人の手を借りずに自力でその味を出しているかのような味がする。
私には彼が、蕎麦打ち職人ではなく、
蕎麦という穀物が持つ力を研究している人のように思える”
と書こうと思ったことである。
しかしそれだけでは漠然としすぎて訳がわからないし、
「浅川」の蕎麦にそれ以上の具体的な形容詞を冠することが出来なかったので
私は「浅川」について書くことを断念した。
・・・という、前回のことがあるので
今回この店を訪れるにあたっては私はできるだけ頭をクリアにして(当社比)
余りワクワクしすぎないようできるだけ落ち着いて(当社比)
そうしてあの広々と明るい店内に入ったのだ。
休日の昼時と言うこともあり
店はほぼ満員の人気ぶり。
一つテーブルが開いても次から次に、お客さんが入ってくる。
そしてどのテーブルのお客さんも
実に和やかで楽しそうなのが印象的だ。
まずは、
「星の飛ぶ満天の空のような深い味わいをお楽しみください」
とメニューに添え書きのある「満天せいろ」。
実は、打ちたてのものに加えて、2日熟成のものもあったとのことで
右と左で盛り合わせにしてくれた。
遠目に見ても色がはっきりと違うのが分かるだろうか。
この蕎麦だけ見たら、
この透明感や光り方などいかにも熟成のようにも見えるのだが、
こちらは打ちたて、本日の「満天せいろ」。
その名に違わずふんだんに散りばめられたホシが
未晒の土佐和紙のような風情を醸し出している。
手繰り上げるとなんとも形容しがたい、
もう「浅川らしい」ということで勘弁してくださいと言うしかない
中間色のかぐわしさ。
しっとり、ふわりと、つかみどころのないやさしい感触は
どこか慈久庵の蕎麦を思い出させるような。
こちらは2日熟成の満天せいろ。
なるほど、熟成となるとこんなふうに透明感を増しながら色が濃くなるのだ。
ドキドキと手繰り上げると、ふわっと香る、
先程の、打ちたての「満天せいろ」の香りが更に深まったような香り。
噛みしめても熟成らしき香りは感じられず、深い香りのなかに
後から甘みがじわっと追いかけ、口中に広がっていくのが嬉しい。
打ちたてと、2日熟成の色の違いも、アップにするとこの通り。
そしてこちらは「金砂郷せいろ」。
こちらも偶然あったということで、
本日打ちたてのものと1日熟成の合盛りに。
こちらは本日打ちたての「金砂郷せいろ」。
「満天せいろ」よりしっかりとした歯ざわりである。
なんて、前の蕎麦との違いを書いてはみるが、
この蕎麦においても、私は「浅川」の中間色の夢のなかである。
原始の夢、原野の夢、土の色の微妙な重なりが見えるような・・・
1日熟成の「金砂郷せいろ」。
熟成により、打ちたてよりもなめらかな舌触りになっているのが印象的である。
熟成らしい香りはほとんど感じられず、
甘みと味わいだけが深まっているのが見事だ。
しっかりクリアな頭で来たはずなのに
「浅川」の中間色の微妙なグラデーションに染まってしまい
今回もまたつかまえられないまま。
私にはやはり、「浅川」の店主は蕎麦打ち職人というよりも、
蕎麦という穀物が持つ力を研究している人のように思える。
(アンシュ〜、行ってまいりましたよー!
いつかは、ご一緒しましょう(^o^)♪)
この記事へのトラックバック
正面から見ると三角の屋根のしたのやれた白壁の真ん中に「丼」の文字。
期待もせずに(本当は多少の期待と、神頼みの気持ちで)ガラリと木枠の引き戸を開けると、すぐ右手の厨房の中で真剣に釜に向かう浅川君が・・
壁に貼られたチョットやれた紙には金砂郷そばの事、そして今は亡き海老根さんの事。かなり高まった期待感、いざっ!! 「すいません、ビールと何かつまみになるものはありません?」・・・ガクッ・・・ お新香と天せいろを金砂郷でお願いし、当然最初は天麩羅のみで、追加でお酒を、これまた種類が何も無い、なんのお酒だったかは失念。町場のお蕎麦屋さんだもん、と自分に言い聞かせユルユルと憩った後に金砂郷そばを・・・ これは目から鱗どころじゃなく、目ん玉が飛び出した!? 甘さ、香り、容姿・・久しぶりに汁要らずの蕎麦に出会えた。
今となっては昔の話だが、現「あさ川」には危ない誘惑が多すぎる、そう、肴があまりに多い、たどり着けなかったら・・・きっと浅川君に 塩撒かれるだろうな・・
「危ない誘惑の多すぎる店」。最高の褒め言葉じゃないですか〜(^o^)
以前もコメント入れさせてもらったんですが、
先日、といっても一か月位前かな?
浅川さん行って来ました。
金砂郷そばは、「これがわたしの打つ蕎麦です」と主張しているお蕎麦でした。そば粉の香りも良く美味しかったです。
(量が多いともっといいんですが、、)
ayaさん「そばきり」も行かれたんですね、
うちあそこのすぐ近くなんですよ。
高崎はパスタの町でもあるので今度パスタも是非。と言っても足がお蕎麦屋さんに向かっちゃいますかネ。
浅川さんの金砂郷そばは本当に美味しいですよね!いいなあ〜私もまた行きたくなっちゃいました。パスタも大好きですが・・・そうですね、どうしてもお蕎麦屋さんになってしまいます(^^;;)