2010年09月27日

神田「眠庵」(八種もりの会)



急に寒くなった。

その上一日中暗い雨とあれば
あれだけ暑くてうんざりしていた夏が
懐かしいような気にもなるところ、であるが・・

私の心は朝から蕎麦色〜♪

年に数回催される、「八種もりの会」。


もう嬉しくって嬉しくって
まさにレース前、遮眼帯着用の競走馬状態、と言っては馬に失礼なほど興奮!!


さあ1枚目、
北海道は蘭越の「キタワセ」の新蕎麦。


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おおー
見た目からして何やら迫力が。
黒みがかり、ビシッと緊張感のみなぎる輪郭線を描く蕎麦は
いわゆる眠庵らしい優しい風情よりも
やや枯れた凄みを感じさせる。
これが新蕎麦と言われてもあまり実感がわかない。
たぐりあげればムワァー!!
もう嗅ぐ方だってこれ以上無理というほど濃厚なかぐわしさである。
新蕎麦のフレッシュな香りというのとはイメージの違う、力強いたくましい香りだ。
味わいも強烈なまでに濃く、1枚目で完全にノックアウトされてしまった私。
ちょっとちょっと、1枚目でこんなすごいの出しちゃって、
あとはどうするんですか!




2枚目は茨城。
08年、2年熟成の「常陸秋そば」である。

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1枚目の北海道蘭越の後だと
ぐっとふっくら、空気感を感じる姿。
そして、その香りのふくよかさと言ったら!
たまらなく豊かな、最高級の白米を思わせるような甘い穀物の香り。
茨城の肥沃な大地が目に見えるようだ。
そして口に含むと、ふわあっと香ばしさが広がり、
しっかりとした味わいと甘さが溢れ出してくる。
まさに常陸秋そばらしい「足りぬもの無きバランスの良さ」を
最大限に楽しめる見事な蕎麦だ。
その上、このコシ加減はなんなのだ。
「歯を受け止めてくれる」感覚。
弾むようなコシではなく、ふっくらやわらかく、受け止めてくれる。
はああ・・・夢か現か。




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3枚目は長野。品種は信濃1号。
密度の濃そうな、しっかりとした印象の肌である。
たぐり寄せて、ぐにゃり。
蕎麦が、ではない。私がである。
この香りの濃厚さ、かぐわしさ!
1枚目で「嗅ぐ方だってこれ以上無理」と書いたが
本日の眠庵はこの爆発的濃厚レベルがスタンダードらしい。
何がどうなったらこんなことが出来るのか。
脳に蕎麦粉を点滴されたかのように、私は早くもトランス状態に陥り
細部まで味わう余裕がなくなってきた。
これは・・弾力が非常にしっかりと、コシが・・
嗚呼もうどうでもいい。
おいしい〜〜
濃い〜〜〜
香ばしい〜〜〜





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4枚目は徳島の在来種。
3枚目との間にお隣の方とお話したりしまして、
すっかり正気の世界に帰ってまいりました。
気持ちも新たにお迎えした徳島、大好きな産地であります。
姿は、眠庵らしいやさしい風情でありながら、
またしても私をぐにゃぐにゃの骨抜きにしてしまう激しい魅力をたたえたお方。
この、200%の濃厚なかぐわしさ。
1枚目から3枚目まで「これ以上ない程濃厚でかぐわしい」と吠え続けてきたが
驚くなかれ、これ、今までで一番、全てが濃いです・・
「あ〜〜」と極上の温泉に浸かったじいさんのような声が聞こえた。
と思ったら私であった。
しかし周りのお客さんも、皆この徳島の美味しさに夢中!
眠庵万歳 。しあわせだあー





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5枚目は福島、品種は「会津のかおり」。今年の夏蕎麦。
福島は「お酒が濃厚で蕎麦があっさり」という
比較的私には向いていない地方である。
(もちろん例外はあり、驚かされたこともあるが。)
なめらかでクリーミーな印象の明るい肌と
直線的なラインに凛とした品の良さを感じる蕎麦である。
手繰り上げると、やはり。本日の蕎麦の中では一番香りは淡く感じる。
甘みもあっさりめ。
しかし噛みしめるとじわじわと、
味わいが追いかけてくるのが東北らしい蕎麦だ。
時折、感じたことのない、
不思議な薬草のような香りも微かに混じってくるのも面白い。
4枚目まで濃厚スペシャル続きで全力疾走し続けた彩子オー、
ここで一旦福島の空の下、のんびり日向ぼっこの心持ちであります。




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「えーっもう6枚目?!」とがっかり声をあげ苦笑されました。
周りの方々はお酒やおつまみをたしなみつつお蕎麦を楽しむ大人の方ばかりなので
6枚目ともなるとお腹も満ちてきているご様子。
朝からこの八種の蕎麦のみに焦点を合わせて生きてきた私は
枚数を重ねるごとに蕎麦食いハイになり
早くもこの夢の終りを心配するほど楽しくてたまらないのだが・・

6枚目は富山、八尾在来。去年の蕎麦。
香りからして甘い!
この上なく豊かな、ふくよかな香りに
食べずとも何分でも恍惚としていられそうだ。
口に含めば舌の上に溢れ出す穀物の味わい、甘み。
コシ加減も素晴らしい。
2枚目の茨城・常陸秋そばでも感じた「ふっくらと、歯を受け止めてくれる」感覚。
あの茨城よりも微かにしっかりとした弾力を持ちつつも
同じ感覚がこの富山にもある。
絶妙としかいいようがない。




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こう立て続けでは読んでくださる方も
そろそろお疲れではないかと心配でありますが
食べた時はそれこそ駆け抜けるばかり、
あっという間の8枚の夢でございました。

7枚目北海道、去年の倶知安の蕎麦。
来た来た来た、
やってきてしまいましたよ、例の大胆不敵なヤツが!

これはこの店において今まで何度もひっくり返らされている、
唯一無二の暴走族蕎麦。
赤黒く密度濃く、見るからにどっかりとたくましげな姿。
箸先に手繰り上げただけで、大袈裟でなく「ギャー」と叫びたい気分。
蕎麦じゃないってば、これ!
何故こんな素朴な穀物が、こんなにもこってりとした
ビーフジャーキーのような熟成感のある香りをふんだんにまとい得るのだ。
噛みしめてまたびっくり、歯にニチャとまとわりつくような密度の濃さである。
その上強烈なまでに濃厚な香りと味わいが
最初から最後まで途切れることなく最大値のまま続くのだから
これにノックアウトされずにおらりょうか。
あなた・・ほんとにお蕎麦?





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いよいよ最後の一枚。
8枚目はいつもフィナーレを飾る福井。大野在来。
福井らしい美しい緑色も、暴走族倶知安のあとでは
より一層フレッシュに、目にまぶしく映るというもの。
淡くほんのりと浮かぶ、橙色の影のようなホシも
またたまらなくよい景色である。

手繰り上げると、んん〜
ふんわりと、香りが豊か。甘い。
ふっくらとした女性を思わせるような、美しい香りである。
噛みしめるとジワッと広がる甘みと味わいが何とも嬉しい。
はああ〜やっぱり福井はいいなあ、美味しいなあ。

しかしいつもは一際輝いて魅力的なはずの福井なのに
今日は全てがあまりにも物凄いレベルの高さだったために
福井がさほどは目立たなかったのには驚きであった。
そう告げると店主は「今日の福井はいつもほどいいのではないので・・」
と説明してくれたが、いやいやいや・・・・
全部が、美味しすぎましたよー!


今日のお蕎麦。
あまりにもどれも素晴らしくて、なかなかどれが一番とは言えないが
強いて言えば、徳島。
いや茨城も。
うーんやっぱり福井は良かった、となかなか決められない。


次回が今から楽しみ!

ごちそうさまでしたー!






posted by aya at 15:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>千代田区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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