
相変わらず通りからは全く目立たない店である。
奥戸街沿い、ドラッグストアの派手な看板の横。
自家製粉、手打そばの文字はあるが
素っ気ない1階の入り口からは店の様子は想像できない。
2階の店内に初めて行った人は
その重厚な空間に驚くだろう。
私が行くのは大抵遅い時間なので
ただでさえ贅沢な空間をほぼ独り占め。
育った家と木の色のトーンが似ているせいか、
私には、森の奥にでもいるかのように自然で落ち着く空間だ。


まずは十割。
そう、ここはドカンと「小山盛り」である。
箸先の香りはそう強くないが、
しっかりと密度濃く、程よい弾力が心地いい。
噛みしめるうちに根底を支えるような香ばしい香りも感じられ、
十割のお手本のような、優等生十割である。


そして2枚目は粗挽き。
これこれ、これですよ。
1本1本に野生の力が漲っているような、
近く見入れば目を細めずにはいられないような
「玄庵の粗挽き」の眺めである。
箸先で香りを寄せると
野趣あふれる穀物の香りがふわぁとこちらに迫ってくる。
うわあこれは美味しい!!まだ食べてないが。
今日は見た目からして熟成感を感じたのだが
実際の香りにはほぼ熟成感はない。
いよいよ口に含むと
口内に触れるざらついた粗挽きの肌が心地よく、
噛み締めるとまた、その瞬間のジャリッとした刺激がたまらない。
舌に痛いのかと一瞬勘違いしそうな程(無論全く痛くはない)
愉快な刺激である。
この歯ざわり。
その中の刺激。
味わい。
舌全体に広がる甘み。
それらを探り、確かめ、
そしてまたうっとりと追いかけ・・
ふと気づいたらアラ不思議、
あんなにどっさりとあった小山盛りが手品のように消えてしまった。
店内は他に誰もいないから、おそらく私が食べたのであろう。
この店は蕎麦打ち教室を兼ねていて、
ここから巣立ち名店に成長していった店も多い。
今日私が食べた蕎麦を打った人にも
いつかまたどこかで出会えるのかもしれない。
そんな風に思うと、
こんな小さな夜もまた大切な夜なのだ。
それにしても、最近立石づいているなあ〜♪
「荒川を渡る夜空に蕎麦の夢」
リニュアールしました。今秋までには器も
伊万里作家物に変更し、そばも10割、粗挽きに一段と精度を上げます。
こちら方面にお越しの節は是非お立ち寄りください。ご一報いただけたら「そばがき」の美味しいのをご馳走します。
ご無沙汰しております。「やたらにしあわせ蕎麦(リンカランweb)」「蕎麦こい日記(飛鳥新社刊」では大変お世話になりました。このたびはコメントありがとうございます!
蕎麦猪口、器のリニューアル、更に美味しい十割、粗挽きと聞いてウズウズしております。近々是非伺いますね!