2010年08月01日

立石「土日庵」


立石で「立石らしく飲む!」のが大好きな友人が多い私にとって、
立石のお蕎麦屋さんに誰かを誘うのは至難の業である。

確かに、
「江戸っ子」のもつ煮込みは美味しいし、
「栄寿司」の雰囲気は立石ならではだし、
「ミツワ」の刺し盛りはびっくりだし、
「串揚げ100円ショップ」は笑っちゃうし、
「宇ち多”」に至っては自分が外国人になったかのような
カルチャーショックを覚えるが・・・



でもでもでも、私はやっぱり、
お蕎麦が好きなのだー!




というわけで「土日庵」。

土日でなくても「気まぐれに」やっている、
そんなゆるくて楽しい店。

扉を開けるとそこは立石。
今すぐ私が肩を揉まなくていけないのかと言うくらい
開けたその場所にお客さんの背中がある。
カウンターに7人座ればいっぱいの、小さな小さな店内。

扉を開けた私に

「一人?」
「奥入る?」
「こんなおやじの隣で大丈夫?」

店主よりも先にお客さんが口々に
私をどこに座らせるか世話を焼いてくれる。
しびれるねえ、立石人情。

店主はてんてこ舞いながらも
「どうぞ、よかったら奥へ」と
穏やかな口調で声をかけてくれる。
店内は今店主が焼いている「鴨つくね」のいいにおいでいっぱいだ。


まるで、昔からの知り合いのようにぽんぽんと、
でも本当は一人で酔客の中に入り込んだ私が居づらくないように、
気遣いながら話しかけてくれるお客さん達。

このお客さん達がまた、
みなさん実に「いい顔」をしていらっしゃるのには驚いた。
どの方も、
「どういう人なんだろう?」と興味を持ってしまうような、
目の奥に印象的な輝きがあったり、
実際(年季の入った)美形だったり、
ヒゲもじゃながら私が映画監督ならスカウトしたいような渋い味わいがあったり。

いい店にはいいお客さんが集うんだなあーとしみじみ。

店主は始終忙しそうだが常に自然な気遣いが感じられ
はきはきした奥さんの明るい対応も気持ちが良い。

この小さな宝箱のような雰囲気を壊したくなくて
写真がほとんど取れなかったのが申し訳ないが
かろうじてお蕎麦の写真だけは。


RIMG2311.jpg

RIMG2313.jpg

思わず「わあっ」と声を上げたくなるような、
目にまぶしい一面のホシである。

塵入りの土佐和紙のような素朴な風情。
自然そのままのような姿でありながら、
はっきりと、この国にしかない魅力を感じるのが不思議なほどだ。


香りは淡いが、繊細な歯ざわりと
じんわりと舌の上に広がる穀物の甘みを追いかけながら
もう一口、もう一口と
汁もつけずに夢中で食べる私に

「へえーっっ お蕎麦好きなんだねえ!!」
「アラッほんと〜」
「ここよく来るの?」
「最近は若い人でもお蕎麦食べるようになったんだねえ」
「たいしたもんだ」

と次々に声が。

や、ヤバイ見つかってしまった。
汁を付けなくては!!

と思った矢先、
「汁も美味しいんですよ〜・・」
とこれまた穏やかな店主の声。

あ〜〜ごめんなさいごめんなさい!

お蕎麦屋さんでつゆを付けないのは、
トンカツ屋さんでソースを付けないのとは訳が違い
お寿司屋さんでネタを剥がしてネタだけ食べているような
失礼なことだと思っている私。
(思っている癖に毎回やるのもどうかと思うが・・・)

いま、汁、つけます!
いただきます!

ズルズルッ



アレ

ほんとに美味しい。

ここの汁は東京においては実に個性的。
鰹と、昆布もかな?出汁の香りがふんわりと、
今関西の気鋭の店で楽しめるような汁だ。

あらー
しかもこの蕎麦には実に実によく合っているではないですか。

立石の飲み屋街の蕎麦ってったら
小麦粉味の大盛り蕎麦に
あまから〜〜い、濃い汁を思い浮かべるが
この蕎麦にしてこの汁。
こんな意外さもまた鮮烈でいい。


蕎麦1枚なので他の皆さんよりもさっさと食べ終わってしまった私。
「ああ〜そこ出るから」
と何故か遠くのお客さんが声をかけてくれ
「アラッ通れるかしら」
「オイオイ大丈夫かね」
「いけそう?」
「若い人はねえ〜」

すみませんすみません、よいしょっと、
他の方の背中をかき分け、引っこ抜かれるように店を出た私。

「ありがとうございましたぁ〜」と
実に自然な店主と奥さんの笑顔。





午後7時半。
日曜日の飲み屋街は、がらんと静かである。


posted by aya at 08:34 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>葛飾区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
立石・・
 恐るべし
  青木ケ原の樹海か、ホテルカリフォルニアか、さてまた鬼怒川の巨大迷路パラディアムか・・・
足踏み入れし者 出口は1? 出口はどこだっ!?
 目前には巨大迷路の壁もしくは樹海の木々の如きに「江戸っ子」が「栄・」が「ミツ・・」が「串・・」が「宇・・」が「鳥・・」が「二・・」が・・・

っと、まあ魔境話はさておいて・・・それにつけても蕎麦屋に中々たどり着けないな・・立石
玄庵、土日庵、やなぎや、下駄やあたりはかなり名が通っておりますが、是非ともここのマッチ箱だけは見て欲しい 「むらこし」 葛飾区奥戸2-6-8 (駅を出て奥戸街道にでたら左方向にテクテクと歩き橋を渡って少しいった所。お蕎麦は手打ちでまあ・・でも一人で行っても追打ちをしてくれるような、そんなお店です) 可愛いですよ、マッチ箱のデザイン(今もある事を期待してます) じつは私のMacのデスクトップを飾ってる奴です。機会があったら魔境に足を取られないよう気をつけながら・・
Posted by 而酔而老 at 2010年08月01日 12:55
あのマッチ箱のデザインはむらこしだったんでしたっけ〜!行きたいと思いつつまだ行っていないので今度は是非マッチ箱まで魔境、魔窟を越へて・・(^_-)
Posted by aya at 2010年08月02日 18:05
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