2010年06月03日

大阪・布施「手打そば 庵」


面白い店があったものである。

いろんなお蕎麦屋さんに行くうちに
印象が似た店も出てくれば
行く前から「こんな店かな〜」とイメージが湧くこともある。

そんなこちらの勝手な予想を尽く痛快に裏切り
蕎麦は美味しく、
居心地はすこぶるいい。

そんな店は楽しいに決まっているではないか。


大阪は東大阪市、近鉄線「布施」駅から徒歩7分。
駅からは真北にまっすぐ、
ちょっと目立つ交差点に近いようなので
すぐにわかると思いきや・・・


うーん、ない。



ない。



え?



あれ??




RIMG2203.jpg




ドカーン。


すいません、「宿場町」で生まれ育った私、
「本陣跡」か何かだと思ってしまいました・・・

この、黒々と大きく立派な建物。
それでいて看板はいまひとつ目立たない、商売気のなさ。

かっこいいです。
只者じゃない雰囲気プンプンです。




さて近寄ってみれば、


RIMG2277.jpg



かっ 開庵中でございましたか。

まあ店名が「庵」であるから
至極妥当な表現ではあるのだが
「開いててよかった!」って言うよりは
「ぶたないでね!」とでも言いたくなるような
坐禅道場めいた迫力も。

作務衣着た坊主頭の人に竹刀で打たれるイメージが
早くも目に浮かんでしまうのに
可笑しくなりながら引き戸を開けると、




RIMG2268.jpg




しょえー。


これは大変。
引き戸を開けてなお、玄関前にこんな空間が。

あの〜、お蕎麦屋さん・・ですよね?
お昼いちまんえんとか、そういうのではないですよね?


恐る恐る歩み入り、二つめの扉であるこの格子戸を開け
さていよいよ店内に入った。
…つもりであったが、まだ、そこはまだ店内ではなく何やら薄暗い空間。
右奥に打ち場、左奥に「ちょっと違和感を感じるドア」のある
不思議な玄関スペースである。


今まで緊張気味だった私の頭は、
ここで一度「うにゃ?」と一度微妙にひん曲がった。
しかし本番は、その左奥のドアを開け、ついに店内に入ってからである。


開けますよ・・・

さあ皆さんでひっくり返りましょう!

じゃーん!




RIMG2245_2.jpg




予測不可能、いきなり家庭的洋風空間である。


しかもそのへんの適当な家庭的ぶりではなく
「クラシック音楽の先生の御自宅風」というか、
タッセル付きのカバーの掛かったピアノや譜面台、
シャンデリア風の照明、
光沢のある織り模様で窓辺を飾るカーテン・・
そういう雰囲気なのである。

確か本陣跡のような、
黒々とした屋敷の扉をあけて入ってきたのだが・・

私は夢を見ているのか?



店内はスペースとしては半分で区切られていて、
手前がこの洋風の応接間のような空間、
奥が座卓のある座敷席となっている。


RIMG2257.jpg



予想外の楽しい展開にワクワクしながら
とりあえず座敷席に座りメニューを見ると
「ざる」は700円。
よかった、いちまんえんじゃなかった。

単位が「一枚」でなく「一斥」であるところが気になったが
(一斤、でもない・・・)
一枚半だと1000円、二枚だと1300円という表示も
親切で嬉しいではないか。


さて「ざる」、どんなお蕎麦かな〜と待っていると・・


RIMG2227.jpg



なんと、ざるの左上に太陽のごとく輝く、
生卵付きでやってきた。

実は私、生卵で食べる蕎麦が大好きなくせに
普段はどうしても、蕎麦は蕎麦だけで食べたいので
こうやって不意に出てくると本当は大変嬉しいのだ。
(蕎麦だけで味わいたい気持ちと苦闘せねばならなくなるが)

吟味して取り寄せた玄蕎麦を自家製粉、手打ちした上で
「まずは蕎麦だけでどうぞ」とか
「塩でどうぞ」とかではなく
「美味しいから卵もつけて食べてみて!」という
おおらかなもてなし。

難しいこだわりを感じさせない素朴さが
非常に好ましく、居心地がいい。


しかしこの店は、どこまでもこちらの予想を
裏切ってくれる店なのである。
蕎麦が、予想を遥か超えてものすごく美味しいのだ。




RIMG2233.jpg




ずっしり、密な重量感。

ピーンと弾くような強靭なコシと
ガシガシの歯ごたえを持つ黒っぽい蕎麦。

箸先に手繰り上げると、ムワァー。
えー!どうしよう、こんなに美味しくては到底卵がつけられない。

口に含むとこれまた香ばしく
噛みしめるごとに穀物の甘みがジワァー。

あらー困った。
あらーこれでは卵がつけられない。
美味しすぎる・・・


しかしこれでは卵をつけないうちに蕎麦がなくなってしまうので
とりあえず汁をひとなめ。
こっ、これまた・・
この店でもう慣れてきてしまった「予想外」である。
こっくりとやたらに濃く、甘く、
汁というよりはタレと呼びたいような味。
そこに卵を投入しかき混ぜて、さあ蕎麦をつけて一口。

エッ


エエッ??


ヒャ〜〜!

ヒャ〜〜〜〜!


すみません、落ち着きたいのですが、
あまりにも、予想外においしくて・・・


もともと浅草は尾張屋育ちの私、
卵入りの汁にはもともと弱いが、
これは汁も相当個性的だし話はかなり違う。
しかしながら、なにしろ予想外の気に入りようである。


そしてこの店に入って以来の最後のびっくりは
蕎麦を食べ終わり、汁だけで一口なめた時。

「ちょ、チョコレートの味がする・・・」。


卵のコクが加わったせいなのか、
何度飲んでもミルクチョコ、
もしくはコーヒーチョコ。
こっくり甘く、たまり醤油のような濃さも感じるが
どうにもこうにもやっぱりチョコ。

私、甘い汁もチョコレートも苦手なのに・・・
何故こんなに美味しいのだ・・・・



ちょうど昼時ということもあり、
店内は家族連れやグループ客でいっぱい。
私にとっては注文の多い料理店並に不思議な店だったが
常連さんにはまったく自然らしく
元々この居心地の良さであるから
皆話に花を咲かせつつ楽しげに蕎麦をたぐっている。

厨房も客席も大忙しだったが
店員さん達は実にテキパキと素早く立ち働き
「いらっしゃいませぇー!」
「ありがとうございましたぁー!」
の元気な声も大変気持ちが良い。


一人客の私、蕎麦一枚なのにあまりの居心地の良さに
いつになく長居をしてしまった。

そしてお昼時のお客さんがひと通り帰った頃、
誰もいない客席で
私はつぶやいたのだ。



「このおみせ だいすき」。















.
posted by aya at 08:05 | Comment(4) | TrackBack(0) | 関西の蕎麦>大阪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
・・・

  ここ
   知らない

    ・・・・
美味しいお蕎麦

 店主の思うがままに味わうのが一番かも

北海道 山形 茨城 長野・・・その他色々
 
蕎麦の名産地で食べる
 ジモッピーの蕎麦
  目茶苦茶 ウマイ!!

椎茸出汁、アゴ出汁、鰹出汁・・・
 鴨、天麩羅、牡蛎、卵・・・

シャッチョコばって喰う蕎麦より
 美味しいを楽しむのが一番ですよね
  きっと・・・
そんな風に味わっている最近の蕎麦
 出前もやる町場の蕎麦屋 大塚の
  でも、心に美味しかった!!

久し振りに喰いたいな
 某蕎麦屋の「冷やしたぬき温玉乗せ」

気〜〜軽に 行こお〜〜〜よっ 俺〜〜〜達は
 あ〜〜せえってみたあ〜〜〜って 同じこと

それにつけても
 食べてみたいな
  この蕎麦
Posted by ムニャ ムニャ 喰い師 at 2010年06月03日 19:29
ムニャムニャ喰い師さまは、きっと「庵」大好きですよ(^o^)

>久し振りに喰いたいな
 某蕎麦屋の「冷やしたぬき温玉乗せ」

わっかりますー!
冷やしたぬきって世界に誇るべき名メニューだと思います!!
私も先日某蕎麦屋で目撃した、たぬきときつね両方入った「ひやしおばけ」というのが忘れられません・・・(>_<)こんなに切ないなら早く会いに行ったほうが体にいいかしら。


Posted by aya at 2010年06月05日 00:58

わたしが初めて体験した、冷やしたぬきとキツネは、冷やしむじな…と呼ばれていましたわ〜手(チョキ)
Posted by ターシャ at 2010年06月05日 08:23
ターシャさま!

むっ むじな?!
確かに・・貉の化けることは狐狸に劣らずとは言え、何か具体的に想像してしまうと、かなり強烈ですね(^^;;)
先日は「豆茶事」で、とても素敵でした。ターシャさまのことを考えていました。


Posted by aya at 2010年06月05日 08:41
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