2010年05月29日
大阪・和泉府中「そば草香」
大阪はうどん圏であるから
お蕎麦はあまり日常的なものではないのでは、
と侮るなかれ。
近年大阪における蕎麦人気の沸騰ぶりには
眼を見張るものがある。
休日ともなればやや不便な場所にある店でも
お昼時には行列ができる程。
無論、偶然ということもあるだろうし
時間帯にも依るであろうが
わざわざ出かけたのに入店を断念した経験も数回ある。
「そば草香」。
大阪南部、JR阪和線「和泉府中」駅から徒歩10分。
駅から歩くとあまり散歩には向かぬ国道沿いを歩かねばならないが
第二阪和国道に面した角にあるため、
車を運転する人にはかなり便利かつ目立つ立地のようだ。
私が入店したのは開店直後、11:31。
が、何ということであろう。
店内の広々とした板の間の座敷席は
家族連れやグループのお客さんで既に大賑わい。
週末だからとは言え、ものすごい人気ぶりではないか。
オーダーも次々と入り、厨房は早くもてんてこ舞いである。
辛うじてカウンター席に座ることができた私は
「そば切り」を注文。
忙しさを極める中、ほどなくして
平たく揚げられたそばせんべいを運んできてくれる。
店の雰囲気はかなり違えど、
和歌山「愚庵」で修行したことが伺えるもてなしだ。
厨房大忙しにつき、
しばし目の前に置かれたメニューに目を通してみると・・・
なるほど、これは人気の訳である。
蕎麦は愚庵仕込みなのであろうが
メニューを見れば愚庵の母体である和歌山の名店「銀平」さながらの
本格的な海鮮のメニュー揃い。
刺身、焼き物、煮物、鍋物。
昼夜ともにコース料理も充実していて
そのどれもが実に美味しそうなのだ。
「捕れたて海鮮丼と蕎麦のセット」なんて写真も出ていたが、
もう既に「そば切り」を注文してしまった私には
頭を連獅子のように振り回したいほど美味しそうであった。
やや平打ちの蕎麦は
大阪らしい小山盛りでやってきた。
白っぽい肌に粗挽きの陽炎のようなゆらめきが浮かんでいるのが
大変美しい。
箸先にたぐると意外にも太さにばらつきがあるのだが
惚れっぽい私はそんなことは全く、気になるどころか
むしろその素朴な景色にうっとり。
ちゅるっとした食べ口の蕎麦はやや不揃いな感じが
歯ざわりとしてはかえって美味しく
かすかに泡立ちほどける感じと
ややしゃくしゃくとした食感が楽しい。
箸先で寄せた香りは淡いが
噛みしめると「ほわほわ〜ん」と
実に良い香りが口中にまあるく広がる。
味わいも香りも淡いのだが、
それぞれの質が実にフレッシュで美しく、美味しいのだ。
淡いだけに時々見失いそうになるのだが、
追いかけるように見つめるとまた
「ほわほわ〜ん」。
何ともしあわせな夢である。
こんな蕎麦が楽しめる店ながら、
海鮮割烹顔負けの本格的なメニューの充実ぶり。
人気は当然で、ひっきりなしに新しいお客さんが訪れる。
私が店を出る頃には、この通り。
もちろん平日はここまで混まないであろう(ことを願いたい)から、
次回は曜日や時間を外してコースやセット物を
是非楽しみたいものである。
「捕れたて海鮮丼と蕎麦のセット」・・・
うーん、夢に見そう。
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