2010年04月15日

八丁堀「蕎麦 如月」→新橋(まいっちゃうよなぁー)


そう頻繁に行くわけではないが
何年かに1度急に思い出しては会いにゆく。
そんなお蕎麦屋さんが知らぬ間に店を閉めてしまうのは
たまらなく寂しいものだ。


代わりに入った店の新しいのれんを呆然と眺め
路傍に立ちつくす私。


いつまでも立っていても仕方ないので
気を取り直し、久々に行ってみるか、
と八丁堀方面に歩き出す。


うーん相変わらず惚れ惚れするような店構えであることよ。




RIMG2117.jpg



八丁堀の路地、というシチュエーションがまた
小村雪岱な雰囲気でたまらない「蕎麦 如月」。


蕎麦は粗挽き、切り口がシャープなので印象は端正だが
よく見れば意外にもごつごつした野性味ある肌を持っている。


RIMG2105.jpg


RIMG2108.jpg



箸先にたぐりあげた香りは、淡いがまるみのある品の良い香り。
そして何と言っても特筆すべきはその歯触りで
ムチッ、プリッ、ピーンと内側からの力を感じるような強靱さだ。

相当強く締めてあったので
しばらく待ったらもう少し香りが出るかとゆっくり食べてみたが
残念ながらその変化はなく。
しかし少しはんなりやさしい歯触りとなった頃もまた楽しめた。


カウンターでは天ぷら専門の職人さんが次々入るオーダーに
手際よく対応、揚げたてを提供し
テーブル席では女性グループがスペイン旅行の話で盛り上がって楽しそう。

店の雰囲気とBGMのジャズがあまり合っていないような、
気がしなくもないが、とにかく活気があって良い店だ。





だが・・
やはり夜道に立ちつくしたあの寂しさから
なんとなく抜け出せない自分がいて。


ヨシ、こういうときはハシゴに限る。





ってなわけで八丁堀から何となく新橋方面に歩き出す。




2軒目もまた、楽しげなグループで忙しそうだ。

本日は福井県大野産、大野在来種。
私にとって印象のよい産地だけに期待も膨らんだが・・・



RIMG2138.jpg


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うーーーーん。
残念ながら無味無臭・・・


なぜだ。くやしい。
微粉、しっとり、誠実さの伝わるようなとてもいいお蕎麦なのに。


珍しく後半は汁を使って、おろしも、ねぎまでも投入。
もともと何となく寂しい気持ちから元気になりたくて
はしごを企て30分近くも歩いてきただけに、
がっかりな気持ちは拭えぬまま完食する。



しかし。


このお店がまた、どうにもこうにも感じがよいのだ。

小さな店にひしめくようなお客さんはみんな居心地良く楽しそうで
壁に貼られた美味しそうなつまみ類を途切れず時々追加オーダー。
店の人は忙しいながらも「営業」を感じさせない、素朴で誠実な接客で、
うーん、これは狙って出来ることではない。
その感じのよさに触れてゆくうちに
なんだか自分がひどく嫌な奴に思えてきた。



フン!香りがなんだい。
ここでは楽しくおつまみつまんで
最後に種物をズルズルッといけばいいんじゃい。




店内奥で会計を済ますと、店の人がわざわざ一緒に外まで出て、
「また、よろしくおねがいします」と
小さな笑顔で小さく頭を下げる。

あー、

まいっちゃうよなあー。





夜も更けて一層寒い路地。

店を後にして歩き出した私は、
思わず声に出してつぶやいたのだ。




「心、温まっちゃうよなあー」






posted by aya at 23:38 | Comment(9) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>中央区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自分がイヤな奴に思えるのは正常な証拠よ。
視点が2つ以上あるからだもん。
どっちも正解でいいんじゃない?

感動できるイイお店には
『感動を与えてくれるお店』と
『感動を引き出してくれるお店』がありますよね。

時々、こっち側にいらっしゃいな。
私は大抵こっち側にいますから。
最近、新橋が多い。
じゃあね。
Posted by TC at 2010年04月16日 01:54
飛びっきりのお客さんとの
 高揚感のある楽しい 「時」
常日頃会っている親しい友との
 心弛めた楽しい 「時」

笑顔があればね・・
 
  「心、温まっちゃうよなあー」
Posted by 而酔而老 at 2010年04月16日 13:40
TCさま
火がつくような感動とゆっくり浮かび上がってくるような感動。どちらも貴いものですね。
新橋はノスタルジック。行く度にいろんな思い出と歩きます。

而酔而老さま
本当はもっとほほえましい出来事がいっぱいあったんですよ。
隣席のおじさま3人の会話→
「俺カミさんと歩く時今でも手ぇつないでる」
「(二人)なんだソレァ?!?」
「だってホレもう年でフラつくし(どう見てもそんな歳ではない)」
「でも俺も階段の時は腕組んでるわ」
「他にいい女いねえのかよー。でもそう言えば俺時々一緒に風呂入ってる…」
「なんだソレァ?!」
キミタチ早くお家に帰りなさーい、って感じでした(^^)。
Posted by aya at 2010年04月16日 20:15
>キミタチ早くお家に帰りなさーい、って感じでした(^^)。


ハッ ハイッ
 早くお家に帰りそびれました

ハッ ハッ
 反省
  の、おじさま
   
Posted by 而酔而老 at 2010年04月18日 22:45
而酔而老さま
そしてね、而酔而老さまは、
「ぐびぐびもいいけどちゃんとぱくぱくしてからぐびぐびしなさーい」ですよ(^o^)♪
Posted by aya at 2010年04月19日 02:03
「而」 しかして

而酔而老

そう、しかして よい しかして おいる
 どこにも「ぱくぱく」がおらんぞ

次回からHNをこう変えない限り
「而喰而酔而老」 (x_x)ゞ
Posted by 而酔而老 at 2010年04月19日 16:06
而酔而老さま
あらっ私のせいでせっかく粋なHNが三枚目な印象に?!(^_^;)而痛足指にならないよう心配しただけだったのですが・・・いたかったらにこにこできないもん(>_<)。でもお元気そうで何よりです♪


Posted by aya at 2010年04月20日 00:55
はじめまして!
如月さんが、3月末で閉店されました。
ここ数年良く伺っていたのですが…
残念ですね。
こちらのブログを見て知ったお店だったので尚更です。
これからもいろいろなお蕎麦屋さん紹介してくださいな。
どうぞよろしくお願いいたします。

Posted by 凛 at 2020年04月08日 07:20


>凛さん
>こちらこそはじめまして!
いつもお読みいただきありがとうございます☆如月さん残念ですね・・・
Posted by aya at 2020年10月17日 16:28
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