2010年03月10日
上野広小路「池の端藪蕎麦」 (藪点前)
いつ見ても良いのだ。
池の端藪のこの眺め。
猪口が真ん中、左右に薬味と汁が対象に据えられた、
完全調和の盆の中。
茶道のお点前(てまえ)の「置き合わせ」をすら思わせる隙のない配置。
私は密かに藪点前と呼んでいる。
蕎麦は、まさに藪らしいとしか言いようのない、機械打ちのふんわり。
香しい香りを楽しむとか、噛みしめては味わうとかいうものではない。
「軽さ」を感じる蕎麦を数本するっと箸先にたぐりあげ、
口に運ぶ刹那藪らしい粉の香りをかすめとり
ゆっくり味わうでもなく瞬く間に1枚が消えてなくなる。
私はここの笊もご贔屓。
手工芸品、消耗品でありながら、
いびつさ素朴さを微塵も感じさせない密で細かな目。
取りこぼしなき精緻な仕事で江戸の老舗の味を守り続ける、
都会の一流の職人としての心意気を表しているようだ。
池の端藪には雨が似合う。
雪は尚更良いものだ。
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池の端 藪蕎麦@上野御徒町・湯島
Excerpt: 「池の端 藪蕎麦」のレポートです。 藪そばの発祥地は”団子坂蔦屋(つたや)”。 その店の周辺に竹藪が多かったので、お客さんが「やぶ」と付けたのが由来。 藪(やぶ)蕎麦の御三家は、本家「神田藪..
Weblog: 中野自由区
Tracked: 2012-01-09 04:16
身体は暖めたいが呑んでいる時間は無いし……
ということで、
『紅しょうが天蕎麦 半熟卵入り』で
雪見蕎麦でした。
闇夜の中、
街灯の下でだけ際立つ雪の白。
器の中、
ときほぐして一面に広がった赤と
中央に卵の黄色。
美しい夜蕎麦でした。
TCさまならではの体験、そして印象深い描写、素敵です。中央に卵、では雪中月見蕎麦でもありましたね!
私は時々、黒々とした汁に浮かぶ電灯でお月見します。
それ、私は電球月見酒、やりますよ。
恵比寿にあったお店でもやっていましたし、
神田のお店でも。
もっとも、神田のお店は月イチで足を運んでも
閉まっていたり満席で入れなかったりで、
すっかり久しくなっていますが。
それにしても、このタイミングで
『池之端薮』とは。
先週、しきりに思い出されて、よっぽど近いうちに
行こうかと考えていたお店でしたけど、
写真と文章で気が済んじゃいました。
池の端藪は私のせいで今週お客さん一人分損しちゃいましたね(^_^;)。
あの日は背後の席の酔っぱらいの会話が可笑しかったです。「しょっぺえな」って20回くらい言ってました。