千葉県は九十九里浜にももう少しの小さな駅、
東金線「東金(とうがね)」駅。
単線ののどかな線路の周りでは
色の抜けたススキの群れがひなたぼっこをしている。
駅から伸びる小さな商店街はすっかりシャッター通りになっていて、
駅前広場には花屋くらいしかなくひっそりと静か。
しかしなんだかこの駅、やたらにお蕎麦屋さんが多いぞ。
東京から電車で行くと乗り継ぎ乗り継ぎ、
しかもそれぞれ本数が少ないので
路線図から想像するより時間もかかってしまうのだが、
バスという魔法の手段を使うと
信じられないくらい簡単だ。
東京駅八重洲口からシーサイドライナーというバスに揺られること1時間15分。
バス停を降りると、

・・・えええ、あれはもしや?
なんと、本日1軒目に行かんとしていた「蕎麦口福 東京庵」の
すぐ向かいに落っことしてもらえるのだ。
シーサイドライナー万歳。
「蕎麦口福 東京庵」のお蕎麦は、機械打ちのものと、
荻窪本むら庵で修行を積んだ6代目の現店主が朝夕打つ、
粗挽き手打ち蕎麦の二種類。
それぞれのネーミングがまたよいのだ。
「老舗」と「手打ち」!
老中と手討ちではない。
うまいネーミングに、つい両方食べたくなってしまうではないか。

手打ちは、大きな黒いホシがひらひら飛んだ白めの粗挽き。
年季の入った舟形のせいろの貫禄も手伝って、なかなか風情ある眺めだ。


本むら庵らしい粗挽きの雰囲気は大変嬉しいのだが、
香りがもうちょっとたってくれるとなおいい。
少し置いてみたら粉の甘みが深まってより美味しくなった。
そしてこちらが「老舗」。

見るからにつるんつるんのふわふわ。
箸先にたぐりあげれば思った通り、小麦の香り豊かな、
歯触りふにゃふにゃフワンフワンのザ・老舗蕎麦。
これは、お年寄りにもさぞいいだろうなあと思っていたら、
それを証明するかのように、
絶え間なく来店するお年寄りの皆様

サラリーマン風のグループや若い女性客もいたが、
ダントツで多いのがおばあちゃんたち!
杖をついたりカートを押したり次々と、
やってくるわやってくるわで広い店内は11:30には満員。
そりゃそうです、手打ちそば、老舗そばだけではございません。
この店は、天丼カツ丼うどんはもちろん、
女性が喜びそうな少量多種のランチコースから釜飯、「らあめん」まであるんですから
病院帰りのおばあちゃんだって毎日来たくなっちゃいます。
しかもこのお店、中休みがありません。
朝11時から夜11時までずっとやっていてくれるんです。凄い!
木曜日がおやすみだよってことだけ覚えとけば、
あとは中休みだの閉店時間だの気にしなくたって
午前中の診察が終わった後も夕方カラオケ教室が終わった前にも、
いつ来たって暖簾を下げて待っていてくれて
和風パフェだってコーヒーだってあるんです。
こうやって、みんなに愛され忙しく頑張っている店を見るのは実に気持ちよく、
わたしもつられてファンになってしまう。
このあとは、もちろんはしごしたのだが・・・
長くなっちゃったので、また明日〜


東京庵のコーヒー
