2012年05月31日
白金高輪「夢呆」
駅前過ぎて迷子になった。
いや、正しくは「駅上」過ぎて迷子になった。
店は地下鉄「白金高輪」駅ホームのちょうど真上に位置しているらしい。
私の調べ方が悪いのかもしれないが、事前に調べた地図では、
どんなに拡大しても駅のホームの真上にあるということしかわからなかった。
大きな交差点の真ん中に駅のホームの形が長く書いてあり
そのまた中央に店があるように示してある。
交差点のど真ん中に店があるはずはないし、
「白金高輪駅から6m、徒歩2分」と
面白いことが書いてあるグルメサイトもあった。
2分かけて6mってどうやって進むんじゃい。
不安なまま駅に着くと
地上に出たところは中庭のある大きな駅ビルのようになっているし、
案の定さっぱりわからない。
そこにたまたま、警備の人らしきおじいさんが立っていた。
聞くと親切に教えてくれ、桜田通りの反対側に「夢呆」の暖簾が見えた。
お礼を言い、少し離れたところにあった歩道橋を渡っていると
どこからか何か聞こえる。
おじいさんが追いかけてきて下から叫んでいるのだ。
「歩道橋を降りたら右ですよー!」
店はもうそこに見えているのだ。
一生懸命お辞儀をして頭の上に大きなマルををつくって応える。
親切さが心に沁みる。
沁み入ったところに、「夢呆」。
エントランスの吹き抜け部分が2階までガラス張りになった
白いスタイリッシュなビル。
学芸大学にあった頃の、和風喫茶のような印象だった以前の店からすると
かなり意外な店構えである。
紺地に白抜きの暖簾と、入口脇の「手打そば」という素朴な木板が
僅かに以前の面影を映している気がしないでもない。
スタイリッシュな外観からは
白い小さなテーブルがいくつもあるような空間を想像したが
店内は「家庭の食卓のような大きなテーブルが3つ」という
これまた意外なレイアウト。
カフェのように人々が憩い、スマホを操っている。
平成の蕎麦屋の眺めである。
吹き抜け部分があるために、面積よりもずっと広々と感じる。
2階も客席になっているらしい。
「そばがき」
「せいろ」が840円のところ、「そばがき」は1575円であるから、
結構贅沢なメニューである。
さすがに薬味もいっぱいついてくる。
岩のりはうれしいなあ〜
ほっわぁ〜〜ん・・・
ふわドロとろ〜んと芳しい香気の中に溶ける夢。
こりゃたまらん。
ふわドロとろ〜んではありますが
取皿に取ると結構しっかりぽってり形を保ってすくえます。
なんとなく北海道かな?と思わせるフレッシュな香りが
私の中にじんわり溶けていく。
はああ お蕎麦とお日様の香りがたまらなくおいしい・・
今日もしあわせだ・・
「せいろ」
横長黒塗りのせいろに、ビシッと端整な姿。
ひんやりと清澄な冷気。
そこにひそむ香りは・・今日はかなり淡い。
ごく淡く爽やかにだが、
しかし確かにそこにある美しい蕎麦の香りを見つめるひととき。
つるりするりと流麗に口中をめぐる肌は、
噛みしめるとパキッとしっかりした歯ごたえを持っている。
以前の店には「田舎そば」という、
昼前に行かなければ売り切れになる人気メニューがあった。
私は大好きだったので何度も売り切れに泣き
行く時は昼前狙いで行ったものだが、
新しい店になって残念ながらそのメニューはなくなってしまったらしい。
そのかわり、前にはなかった
「太打そば」というメニューがあったのでそれも頼む。
「太打そば」
以前の「田舎そば」のようなざっくりした肌の蕎麦を想像したが
きめ細かな肌をみずみずしく輝かせた太打ち蕎麦が現れた。
褐色、密な肌。
手繰り上げると香ばしい田舎らしい香りが
淡くふわりと漂う。
見ての通りのきめ細かな肌は噛みしめてもみっちりとして
太さがあるだけにかなりしっかりモグモグと咀嚼することになる。
モグモグの中から、すっきりした甘みと味わいがこぼれ続ける。
思えば拙著「蕎麦こい日記」の第一回打ち合わせは
学芸大学にあった頃の「夢呆」であった。
落ち着いた店内と、中休みがないこと、駅から近いことで選んだ気がする。
ここ白金高輪の新店は駅からさらに近く、嬉しいことにまた中休みがない。
雰囲気はちょっと変わったが、それはそれでまた違う楽しみ方があるというものだ。
2階の席も是非座ってみたいなー
2012年7月のライブのお知らせ
2012年05月30日
写真「風流東京堂vol.2」
2012年05月29日
浅草「蕎麦 阿娑嚩(あさば)」
浅草裏通り「ふれあい通り」の、威風堂々あたらしき顔。
新しいと言っても観音裏にあった「妙喜庵」の店主の新店であるから
すでに小慣れた貫禄をたたえている。
店内はこぢんまりとしているが
カウンターは広々、居心地がよい。
照明の落とされたシックな空間は
いかにも落ち着いた大人のための店、といった雰囲気だ。
ここに来たら天ぷらを食べなくっちゃ、と思いつつ
やはり好きな人と二人きりになることばかり考えてしまう私。
うはは
「せいろ」
みっちり密な肌に、まばらに飾るように散りばめられた
黒いキリリとしたホシ。
甘くたくましい蕎麦の香りは熟成ではないが、
それに近いくらいの力強さをもって
ムンと押し出してくるように香っている。
しなやかで密な舌触り、弾むようなコシ。
浅草中心部の喧騒を離れ、
静かに蕎麦とふたりきり。
ほんの数十分前とは、切り離された時間である。
蕎麦と二人きりと申しましたが、
実は今日はもう一人おりまして、大変珍しいことに姉@と一緒です。
そしてこの方はさすが我が姉と言うべきか
私が蕎麦が好きというのと同じくらいのアホレベルで生卵が大好きです。
生卵食べ過ぎて重度のアレルギーになり(深刻)、
10年近くかかってそれを克服したら
また元通り食べまくり始めたという見上げた根性の持ち主。
私が蕎麦を家に持ち込まないとか、食べすぎないように気を付けているのも
この姉@を見てきたからのことなのだが・・
その姉@が迷わず選んだ、
「花そば」
これ、ありそうでないアイディアメニュー。
蕎麦の上に生卵と鰹節とおろしが乗っているだけなのだが
こりゃーおいしいに決まってます!
生卵かけごはんが永久不滅に美味しいように、
生卵そばは永久不滅に美味しいのだ。
(アンシュは、聞いただけで背中向けて逃げちゃいそうだが(^_^;))
そのわりに、生卵のシンプル蕎麦って
お店であまり見かけないんですよね。
生卵+美味しい海苔いっぱい、みたいなぶっかけも
簡単で最高だと思うんだけどな!
どうも、「尾張屋」育ちなもので。
隣のお客さんが「天せいろ」を注文したために
店主が天ぷらを挙げ始めた。
手際よく揚げられていく美しい天ぷらを見ていたら
あららこれは、今度はもっとゆっくり来なくっちゃね!
今度は妙喜庵時代からの「グラタン」や、
「地鶏モモ焼き」「天ぷら盛り合わせ」などなどと、
私も「花そば」食べたいなぁー
<おまけ>
私に百個くらい輪をかけて「目が二つついたもの(ぬいぐるみ等)」に弱い姉@が
「蕎麦 阿娑嚩」への道すがら中央通りの佃煮屋さんで早速恋に落ちた。
お蕎麦を食べている間じゅう
「帰りもあの店の前通ろうね!」
「あの子たちは毎日あそこにいるのかな?」
「あの段ボールに毎日乗ったりするのかな?」
とこの2匹の話しかしない。
佃煮屋の店先に「招き猫」ならわかるが、
何故にぬいぐるみ・・?
しかも左の子が何故か大事そうに(?)
段ボールに乗せられている・・・
冷え性なのかもしれない。
2012年05月27日
銀座「松玄 凛」
今年のBirthday Soba Party・・
大好きなみんなとのんびりゆっくり、おめでとうってお祝いしてもらって
モウモウモウ、身に余るしあわせすぎで
ほんとにどうしましょうでございました!!
「松玄 凛」は個室があるところがなんと言ってもありがたいお店。
夕暮れ時の銀座通りと「白穂乃香」。
このビール、無濾過だからなのか誕生日で嬉しいからなのか
何だか異様においしいです。
とか言ってこのビールほんとは私のじゃなく・・
今日は嬉しすぎてもともと子供並みに興奮してるので
一口もらっただけで真っ赤っかのグワングワンになりまして。
でもほんとに美味しかったのでもっと飲みたかった〜
大人の皆様は
「赤霧島」→「伊佐美」→「赤霧島」と焼酎三昧の方あり、
シングルモルトの竹鶴(12年)一本の方あり・・
深雪ちゃんは「赤霧島」が特においしいと大喜び!
「平目骨せんべえ」
これはお酒のお供に最高らしく大人気。
「粒蕎麦入り 自家製豆腐」
粒蕎麦入りってどんなだろう〜♪とワクワク一番に食べさせてもらったけど
どこに入ってるのか全然分からない。
お店の人に聞いたけど「中です」と何ともおおらかな回答。
「全体に蕎麦粉が混ぜてあるのかな?」とか
「薬味に入っているのかも」とかいうギロンの末、
最後底の方をすくったら
おー、こんなところに!
やっと煮た(炊いた?)蕎麦の実にお目にかかれました。
煮た蕎麦の実というのは私の中では最も蕎麦度が低く感じられる食べ方なので
蕎麦的感激は薄めだったけれど、豆腐に蕎麦の実入れちゃうなんて珍しいし、
お豆腐はなめらかで味わいも濃くとってもおいしかった♪
「そば屋の定番盛り合わせ」
大きなお皿にドーン!とやってくるので
私達の間では別名「舟盛り」。
だし巻き玉子が甘くなくてふっくら軽く、でも卵の味が濃く、
やたらに美味しいと思ったら奥久慈産の卵だそう。
わぁー これはいいなあ
「大和肉鶏 モツ ハツ 砂肝」
「穴子天ぷら」
きゃー、お誕生日に大好物が食べられてうれしいな!
ここの穴子はものすごい脂の乗り方で
衣も軽いけど大きめでボリュームたっぷり。
「旬野菜天ぷら」
「栃木産 国産牛 とろもつ味噌煮込み」
これもみんなに大人気!リピートしてまた注文。
味噌煮込みなのでちょっと甘め、濃いめの味付けで
焼酎などに滅法合うらしい。
「蕎麦がき」
これもおいしいと大評判でリピ注文。
ほわ〜んと香る、正統派の香り。
表面トロッ、中がトロフワモチッというより
全体がトロふわもにょーん、と口の中でとけていく感じ。
「おおきい一個のかたまり」ではなく「4つ小さいのがコロコロ」だからだろう。
あー おいしい・・・・
「蕎麦ガレットチーズ焼き」
これもみんなに大人気!
やっぱりパーティーにはこういう華やかなメニューいいなあ。
私にはもうちょっと蕎麦粉度と生地の硬さが欲しかったが
そんな変な好みの人は私だけなのでいいのです。
だいたい私はお肉なども一般的に食べにくいものであればあるほど好きという変人なので。
ハンバーグより断然マトンって。
さあいよいよ、〆のお蕎麦タイム。
こんなにごちそう、いーっぱい食べてそれはそれはお腹いっぱいなのに
「もり蕎麦」「田舎蕎麦」両方食べると言っているアホが一人います。私ですが。
「もり蕎麦」
おー、かなり量たっぷり!
実は
「もり蕎麦 700円」「田舎蕎麦 800円」
「おかわり もり蕎麦 400円」「田舎蕎麦 500円」
という価格設定から、おかわりは量も少なめだろうなと踏んだのだが・・
手前が「おかわり」、奥が普通の「もり蕎麦」。
たしかに「おかわり」の方が少なめだけど
もともと一枚の量が多いので「おかわり」でも多い!
そっか〜、いつもはひとりで来て「もり蕎麦」「田舎蕎麦」だけ
食べて帰ったりだものね。
量の感じ方がぜんぜん違うなあ。
ふわり、正統派のかぐわしさ。
蕎麦という穀物の甘く香ばしい香りが、落ち着いた印象で漂っている。
やややわらかめの食感だがしなやかなコシをもち
お腹いっぱいでもするんするんと食べられる。
北海道富良野産の自家製粉蕎麦だ。
「田舎蕎麦」
おー、今日も黒いね 凛の田舎さん!
あれ・・
この見た目は、と思ったらやはりやはり、
熟成特有のムッワー!と濃厚な香り。
穀物の力強い香りが限界までたくましく強調され、甘みも非常に強い。
これは甘みの少ないすっきりした汁で食べたらおいしいだろうな〜
なーんて珍しく思ったのだが汁はやや甘め。
前からこんなに甘かったかな?
「黒胡麻だれ蕎麦」
こちらは、ななちゃんご注文。
わたくし昨日から黒胡麻づいておりまして
またまた一口味見させていただきました。
おー、この胡麻っぷりは!!
どろ〜と、ものすごい濃厚さだ。
ななちゃん曰く「もうちょっとお蕎麦の味も感じたい・・」そうで
わかります、その気持ち。
この胡麻汁はサラダにかけたりしたらとってもおいしそうだなあ
もう楽しくて楽しくてみんなニヤニヤへらへら、
私なんてもう地に足がついていない状態で
二次会へ突入!!
おかしくて楽しくてどれくらい笑ったか分からない二次会の最後には
なんと私が大好きなケーキ、
「エコール・クリオロ」の「ガイア」が。
これは甘いもの苦手な私が雑誌で見て
「これは好きに違いない!」とピーンと運命?を感じ
実際食べに行って美味しさにびっくりしたという特別なケーキなのです。
キャラメルのほろ苦さと、層ごとの味わいの違いがすんばらしいの。
ううう・・・(;_;)
みんなホントにありがとう!
プレゼントや花束の写真をちゃんと撮らなかったのが
かえすがえすも後悔だけど、
それを忘れるほど楽しかったってことですね♪
2010年9月の「松玄 凛」
2012年7月のライブのお知らせ
2012年05月26日
2012年05月25日
日本橋小舟町「仁行」
今日は、中学一年の時からの親友ゆみちゃんと久しぶりに会って
めちゃめちゃ楽しかったぁー
久々だしゆっくりしたいから
ちょっといい〜お蕎麦屋さんに♪
外観からは極めて想像しづらい、大人の蕎麦オアシス。
前回来たときはそれはそれは素晴らしい「蕎麦懐石」を堪能したが
今日は「昼の蕎麦膳」にしてみる。
「おまかせの汁そば」+「選べる蕎麦(メイン)」+「デザート」
というセットだ。
最初に出てくる小鉢は、
うんと小さいけれど、うーんと楽しい、美味しい!
野菜や厚揚げの煮物に玉子焼き。
体がよろこぶ、舌がよろこぶ。
出汁が美味しいと何でも美味しいなあ〜
本日の「おまかせ汁そば」は「花巻そば」。
これもうーんと小さいのだがうーんと嬉しい。
素晴らしい磯の香り!
すっきりした出汁をあたたかい肌にまとい
穀物の甘みをぎゅうーと凝縮した温蕎麦。
そしてメインの「選べる蕎麦」。
「もり」「おろし」「黒胡麻汁」「とき玉」「おしぼり」「蕎麦サラダ」「どんこ」
「納豆蕎麦」「梅そば」「鴨葱そば」「カレー南蛮」「天もり」「手打ち仁行細うどん」
と数あるまばゆいメニューの中から、
・・・どうしてこうこの人は融通というものが利かないんでしょうか。
「もり」
ずっしりぎゅー。
仁行の細切り十割。
思い余って近づきすぎて
写真ではあまり伝わらないかもしれないが、
さすが、容赦ないほどの細切りである。
極めて密で、繊細な肌。
「仁行」らしい、しなやかにのびるような自在なコシ。
細やかな束が口中をめぐるのが実に涼やかで心地よい。
そして今日はかなり「束感」が太くぎゅーと、まとまって感じられ
ぎっちり密な小山は食べ応え十分。
香りはめずらしく淡め・・かと最初思ったが
それがだんだんじわーんと深まって、ついに明確な芳しさが見えてくる。
フレッシュでまろやかな穀物の美しい香り・・ああ・・・・
と思ったときには食べ終わってしまった。
いつもいつも思うのですが
どうして私が好きな人といられる時間は
こんなにも短いのでしょうか。
お隣のゆみちゃんのお蕎麦はまだいっぱいああります。
(人のお蕎麦見過ぎ禁止)
こちらはゆみちゃんの「黒胡麻汁」。
直前に、私が毎朝飲んでいる「美容健康ドリンク(?)」のレシピと
黒胡麻への愛を熱く語っていたため、
その熱に押されてさっそく選んだゆみちゃん。
ひとくちちょうだい〜、
おー、濃厚&甘さすっきり胡麻汁だねっ
デザートは「イチゴのムース」。
とろとろ〜のムースにイチゴのツブツブがいっぱい。
果物の食感と酸味がしっかり感じられ
甘いもの苦手の私にもおいしい。
お店は、静謐な大人のオアシス。
・・なのだが、
私たちはしゃべる笑うしゃべる笑うしゃべる!
毎回会う前からのど飴持参しようかと思うほどでして・・
長居してすみませんでしたぁ〜
そして次なる長居は
Ladurée
マカロンってカワイイね〜
てか、マカロンを大喜びで食べる女の子ってカワイイね〜
としみじみコーヒーを飲むおっさんな私。
(ケーキ屋さんに濃厚蕎麦湯があったらいいのに)
相変わらずゆみちゃんのキャラが素晴らしすぎて
元気をいっぱいもらいました
ゆみちゃん、一日早い「おめでとー」をありがとぉ〜〜!
2010年12月の「仁行」
2012年7月のライブのお知らせ
2012年05月24日
東十条「蕎麦茶屋 和久」
東十条駅から程近い、マンションの1階。
赤を基調としているせいか、なんだかパッと見は
ラーメン屋みたいである。
もやしソバ、とかが美味しそうである。
店内の雰囲気もごくごく気楽である。
テレビの音、非常にオープンな印象の冷蔵庫やポット類、
「ありがとう〜ございまぁ〜〜す」
というおじちゃんの声。
やっぱりもやしソバを注文したくなってくる。
しかし壁のメニューを見れば
お、と姿勢が伸びる。
「江戸流手打ちそば 十割そば」
「御膳そば」
「変わりそば切り」
「田舎せいろ 荒挽き太打ちです」
などのメニューの横に、堂々と、誇らしく
「福井 大野産 平成23年福井在来種」
とある。
ハハーーーッ
m(_ _)m
もやしソバとか言ってふざけて申し訳ありませんでしたっ。
では、姿勢正して心澄ませて注文を。
「田舎せいろ 荒挽き太打ち」と、
「江戸流手打ちそば 十割そば」と、
あと
「せいろそば(二八)」を辛味大根おろしつきの
「辛味そば」でください!
「田舎せいろ 荒挽き太打ち」
おおー
太打ちと名乗ったからには、お主本気で太いな!
こっこれが・・・
おいしい!! めちゃらくちゃらにおいしい!!
甘皮のたくましい濃厚な香りが、まったくいやらしくなく
それどころか非常に美しい白い香りのベールを纏って
最高の形でこちらにやって来る。
うーん、このたくましさにしてこの美しさは凄い。
食感はこの太さだけにモグモグ系だが固さはなく
モチッとしたコシを楽しめる。
とにかく味も香りもすんばらしい。おいしいー!
「江戸流手打ちそば 十割そば」
宙を舞う剣先が描く残像が如き、流麗ライン。
お主・・さすがは江戸流・・・(意味なく侍)
これが・・・またまた素晴らしい!!(>_<)
蕎麦という穀物の香りの素晴らしさを濃縮したようなものが
ムン、と強く押し出してくるかのようにこちらにやってくる。
すべらかで密な肌は見ての通り直線的なラインで口中をめぐり、
噛みしめるとしっかりしたコシで応えてくる。
そこからひろがる甘みと味わい・・
うわぁー これもおいしい!!
「辛味そば(二八)」
二八のお蕎麦は二段重ねのせいろで。
そしてなんと、辛味大根おろしだけかと思ったら
その上に天ぷらもついていてびっくり。
二八の「せいろ」はぐっとやわらか、ふにゃんとした食感。
香りも味も淡めだが、この蕎麦にはおろしや天ぷらなどが実によく絡む。
剣先ラインな江戸流十割そばではこうはいかないだろう。
店内には近所の人が入れ替わり立ち代り訪れ、
テレビはスポーツニュースの時間である。
今日は侍並みにカッコイイ人と食べたから、
余計美味しかったなぁ〜
ウキャ (≧∇≦)
2012年05月23日
長野・須坂市「手打ちそば処 小杉 須坂店」
蕎麦が好きな人の間では有名な店なのに、
意外と近所の人が名店と知らない蕎麦屋は多い。
住宅街の自宅改造店や都会の裏通りに隠れている店が気づかれないのは、
もともと目立たぬ立地であるからまだ理解もできる。
しかし、この店は、大きーい・・!!
須坂インターを降りて数百メートル。
トラックがガンガン通る58号線沿いの、ファミレス並みに大きな店である。
だからこそ、名店と気づかれにくいのは理解できる。
私だってもし何も知らずに通りかかったら
「うーん、手打ちって書いてあるけど、どうかな・・?」
と訝しむかもしれない。
54席のひろびろとした店内。
ここにお客さんが満員となったらさぞ壮観だろうが
その時店主は厨房で「千手観音」みたいになっているのではないか。
なにしろこの店主は、あとで紹介するような非常に繊細で美味しい蕎麦を
一日に何百食も一人で打ち続けてきたという
驚異の蕎麦打ち職人なのだ。
しかも蕎麦打ちはすべて独学。
というよりこの店主はなんでもかんでも「独学」で
常人の域を遥か超えた世界を作り出してしまう、
とても一回のブログでは書き尽くせぬ「超人」なのだが・・・
とりあえずお腹すいたので蕎麦、食べたいですよね(^o^)
食べよう食べよう!
ここのお蕎麦は3種類。
「霧そば」(十割・長野産の蕎麦粉100%)1200円
「雪そば」(御膳更科十割)800円
「並ざる」(十割そば)700円
3種類もあると嬉しい半面、「そばがき」も食べたい私は
「片腹痛い」じゃなくて「二腹あっても足りない」。
そんな時の強い味方が「あわせもり」!
今日は「霧そば」を堪能したいので「霧そば」を一枚。
それに「雪そば」と「並ざる」を合わせた「雪あわせ」を頼むことに。
「雪あわせ」(「雪そば」+「並ざる」)
うわー「雪そば」、ほんとに雪のよう。
「並ざる」
やや平打ちの、端整な姿。
穀物らしい王道の蕎麦のかぐわしさが
口に含んで「味わい」として舌に広がる。
最初空気のように香りのように感じられていた甘さや香ばしさが、
繊細なやさしいコシを楽しむうちに、
ジワーッとした「味」になって口に広がっていくのだ
「雪そば」
目にまぶしいほどの白さ、肌の繊細さ。
更科というのはツマラナイものは大変ツマラナイのだが
これは全然ツマラナクナイことが見てわかる。
あなた、おいしいでしょう・・!!
空をとびましたぁー
極上の、おいしい更科は「天女の羽衣」のような香りがする、
と私は出会う度に思う。
「蕎麦の香りの、強さやたくましさや香ばしさや野性味をすべて取り除き、
清澄な雪解け水で洗ってその上澄みだけをそっと空気にして空に放ちました」
みたいな。
(どんだけ頭が蕎麦に犯されているのか)
まあ私の頭のおかしいのは置いておいて、
おいしい更科はとにかく美しい香りがする。
つるんつるんの喉越しだけを楽しむそうめんみたいな更科とは別物である。
「小杉」の更科の天女の香り、
その「つるんつるん」ではなく「すべすべしとっ」した舌触り・・・
はああ おいしい・・・
そして待ってました!
楽しみにしていた、
「霧そば」
遠目にわかる、美しい青緑。
その青々しい姿にも感激したが
それよりもさらに、驚くべきかぐわしさ!
箸先にたぐりあげて香りをこちらに寄せずとも、
ふわあぁ〜〜〜と何とも爽やかな野生の香りが
周り中の空気を染めているが伝わってくる。
青い夏の草のような、たくましさとさわやかさを併せ持った香りが、
私を山の野原へ連れていってしまう。
コシは並そばよりもしっかりとして
噛みしめるうちに味わいと甘さがぎゅうう〜と濃くなっていく。
なんというか、味の中の、下を支えるたくましい部分が
どんどん濃縮されてくる感じだ。
あああ これは確かに、どこにもない蕎麦だ・・・
ちょっと順序が後先になってしまったが
「そばがき」
ムハーッ (≧∇≦)☆
あたたかな香気・・・なんというかぐわしさ!
どちらかと言えば「並そば」に近い、
野性味というよりは王道のかぐわしさだ。
ぽてふわモチッとした食感もたまらないー
時分時は繁忙を極める店だというのに
昼下がりともなれば
こんな独り占めもできてしまう。
この不思議、この贅沢。
さっきまでカウンターで酔っ払っていた男性は
相当この店を溺愛している常連さんのようで
近所の人かと思ったら東京の人だった。
面白いなあ。
食後は、才気あふれる店主の作品の数々を眺め
今食べた蕎麦の余韻に浸る・・・
と書きたいところだが、この店主の作品の数々は
今食べたあれだけ素晴らしい蕎麦たちを一瞬忘れそうになるほどの
ものすごい力を持っている。
店主が自分で作ってしまった店内の設いもすごいが、
なにより、自然を題材とした写真作品の数々。
店内にも幾つか掲げてあるが、
感動をわかりやすくパッと鮮やかに捕えた、
今すぐ写真集にしてもらって買って帰りたいような写真ばかりなのだ。
(特に鳥の作品が凄い!)
蕎麦打ちでも写真でも何でも独学で、
とんでもない高いところまで登りつめて
独自の世界を作り上げてしまう店主。
こんな名店が、58線沿いにファミレスのような顔をして
ドーンと建っている。
その意味で私はこの店を「目立たない店」だと思うのだ。
「手打ちそば処 小杉」長野店
.
2012年05月19日
わんわんあんみつデート
本日は雨の中、
大尊敬するミュージシャンである「大先輩ミュージ犬」さまと
わんわんデートに出かけましたとさ!
メインのお楽しみは・・
わぁーーーん!「ぼぐ」ーーー!!
また来ちゃったよ、はるばる、君に会いに!!
前回の私のブログを見て会いたがってくれていたミュージ犬さまも
「ぼぐ」の素朴ででっかい可愛さにメロメロ!!
そうそう、この子の名前は「ぼぐ」ちゃんというのです。
長毛虎種の秋田犬、名前もいいぜ!
びっくりさせちゃ可哀相だから
奇声を上げないように頑張るんだけれども
ダメなのだよ君を見ていると・・・どうにも私は・・
愛が止まらない。好きすぎる!!!
そして私の激愛爆発ぶりに
前回呆れびっくりした飼い主様が、
ご親切にも近隣の秋田犬情報を教えてくださいました。
というわけで今日はそちらも梯子してしまう予定でありまして
雨の中隣の駅まで、二人して犬より鼻息粗く歩きます。
「蕎麦屋のハシゴはいつものこんだが
秋田犬のハシゴてえのは初めてだなオイ!」
2軒目、いや「2犬目」?
じゃーーん
おお〜〜〜
おおおおお〜!
さすがは、大きな大会で受賞経験もあるだけに
たいっへんな美秋田さんです。
きれいな毛並み〜 かわいいお顔〜
しかもおまけにこちらの飼い主様が、
「今かわいいのいるけど見る?」
大袈裟でなく「うしろによろめいてしゃがみこみました」。
三度の蕎麦より大好きな、柴犬の赤ちゃん!!
しかも君もまた大変にお顔がカワイイ!!(私、犬には面食いなのです)
ぎゃああぁ ヤメテ〜〜〜息ができない〜〜〜〜
しあわせすぎる日本犬まみれで体力気力を使い果たし
ヘナヘナになったあとは
あんみつデート♪
たのしすぎたぁー
2012年05月18日
新宿三丁目「彩蕎庵 吉遊」
これだけ便利な場所にあるのに
説明すると必ず「え、そんな所にあったっけ?」と
言われる店である。
説明は簡単だ。
「新宿通りに面して、旧三越とマルイの間にある小さな階段を降りた地下食堂街」
である。
「彩蕎庵 吉遊」は階段を降りてすぐ左手だ。
この場所は昔はあんな店で、
そのあとあんな店になったりこんな店になったりしたのだが
常に蕎麦屋であり続けてきてくれた場所。
店内の印象は昔から殆ど変わらないので
同じ席に座りながら、あの店だった頃の思い出、
この店になってからの思い出といろいろよみがえる。
懐かしい友達と来た思い出、
涙が出るほど美味しい蕎麦をひとりで感激しながら食べた思い出。
買い物ついでに便利なので
なんだかんだで結構来ているのだが
今日は久しぶりだ。
本日の蕎麦は「山形県舟形町 最上早生」だって!
久々に来てみると、おー
なんだかやたらとメニューに気合が入っている。
何枚ものラミネート加工したシートに大きな派手な宣伝文句と写真入りのメニュー。
その勢いに押されて
「渾身のそばがき」
「お得!ランチ 季節の野菜天そば」
というのをとってみる。
「渾身のそばがき」
うわー これはいい
あなた香るでしょう!おいしいでしょう!
きたー・・
フレッシュな、なんともすんばらしい芳しさ!
青々としたフレッシュさ、甘さ、香ばしさ、たくましさ、まろやかさ。
どれもが突出せずに、蕎麦という穀物の香りの素晴らしさが
バランスよく濃縮された感じにうっとり。
口に含むとモチッとして、フワ〜とエアリーに溶けていくのがたまらない。
時間立つとフワがなくなりモチッと短くなるんだなあ。
「季節の野菜天そば」
あんまり見かけない、かなり無理矢理なレイアウトであります。
もうちょっとお盆が大きい方がいいかも・・?(^^;;)
箸先ですっきりと香るかぐわしさ。
さきほどのそばがきと同じ蕎麦粉なのだと思うが、
こちらの方がややストイックなイメージのかぐわしさに感じるから面白い。
口に含んで・・・アレ?何かが・・
と思い眺めてみると、なるほど〜
もしやこれは機械切りかな?
しばらく来ないうちに手ごね機械切りになったのかもしれない。
食感の味気なさは否めないが、初めからこういうものだと思って食べれば
香りよく味わい深く、大変美味しい蕎麦である。
またひとつ、「この場所の時代」が移ったような気がした。
2012年05月16日
西国分寺「潮」
本格的な美味しい日本料理と蕎麦が楽しめる、
西国分寺の名店「潮」。
その突出した実力と個性には驚かされっぱなしだ。
前回「くちこ汁」に「滋賀の鴨鍋」、「ぐじの造り」など
超絶美味づくしコースを堪能したのが2月。
今回はどんな展開になるのやら
楽しみすぎて朝から頭の中の8割は「潮」!
もちろんお昼ごはんもごく控えめで
ドタバタ動いて限界までお腹すかせて、
さあぁ 一発目!!
ウハッ これはヤバイ(^^;;)
すんっごく飲みたいけど、このスーパー飢餓状態で一口でも飲んだら
ワタクシ赤色軟体動物になってしまいます。
まずはビール我慢で最初の一皿をウキウキお待ちましょう!
「先付」千枚蛸、アスパラ、トマト、小夏、オリーブ油
お皿が置かれた瞬間の
テーブルいっぱいの柑橘の爽やかな香り。
もっと近づくとオリーブオイルの芳醇な香りも加わり
「先付」の前の「香りの先付」が素晴らしい。
蛸の吸盤のちゅるぷるコリ感、アスパラも最高に美味しい。
浦霞 本醸造
本日は常温で。
余分なものを限界までそぎ落としたような、
この究極シンプルで静かな旨味はすごい。このお酒好き!
食べ物とぶつからない、まざらない。別世界にいるのに引き立てる。
以上、お酒1年生の感想。
ここで運ばれてきた
「ながーいステージに並んだスター達」
に一同から歓声が!
「前菜」
あんっっまりにも美味しそうで
自分の取り皿に盛り合わせる気分は
宝の山からお宝もらうような,
お花畑からお花を摘むようなワクワク感!
こんなお花束になったぁー
上から時計回りに
「蕨 胡桃和え」
「黒つめ蟹 雲丹やき」
「蛤ゼリー」
「ふぐ 煮凝り」
「蕗 近江牛焼き」
ではいよいよ、いっただきまーす!
「蕨 胡桃和え」
蕨の野生の香り、味わいが素晴らしい。
粉状にした胡桃の濃厚さ、ローストしてそのままの胡桃の食感。
「黒つめ蟹 雲丹やき」
黒つめ蟹とは青森の「毛が少ない毛蟹」だそう。
ざっくりみっちりした食感。
蟹と雲丹なんて贅沢だなぁー
「蛤ゼリー」
貝殻いっぱいにふっくら盛り上がった蛤の姿に
テーブル一同悶絶!!
ほぼ全員が最後まで取っておきました。わたしもっ
「ふぐ 煮凝り」
この煮凝り、最高すぎです!!
煮凝りの「ほんもの」の素晴らしさのなかでも
これは感動レベルが高すぎます。
濃霧のようにひろがり、夢のようにすぅーっと溶けて消えてゆきました・・
ふぐの出汁がまた、嗚呼・・・・
「蕗 近江牛焼き」
蕗の野趣と近江牛の贅沢さが
補い合い、引き立てあって素晴らしい調和。
お肉だけより何倍も美味しい。
しかもまだもうひとつ前菜が御座います。
「じゅん才 吸酢」
ちゅるんとしたじゅん才に、酢と胡瓜の爽やかな風味。
硝子の器が涼しげで夏の到来を幸せに感じる。
「蒸し物」さざえつぼ蒸し 雲丹 竹の子
これまた一同から歓声。
そしていざ食べ始めたら
皆さんお酒が進んじゃって進んじゃって大変なことに(^o^)
つぼのなかには刻んだ肝、身の部分、竹の子が。
ほろにがいスープが宝物のように美味しく、
「お尻を叩くと全部出ます」との店主の言葉に
民族楽器楽団の如く皆揃ってお尻をたたきまくる。
手が痛いけど食べ尽くしたい気持ちが勝ります。イタタッ
「造り」初鰹たたき、からし
初鰹のお造りの上に
大根おろし、からし、紫蘇、新たまねぎ、にんにくチップが。
もともと江戸っ子は初鰹を酢とからしで食べたんだそうで、
こちらにも酢があしらわれています。
「焼物」賀茂茄子、海老、胡麻みそ
豆板醤の効いたピリ辛濃厚の賀茂茄子の焼き物。
1キロの味噌に卵の黄身を10個も入れてつくるという
濃厚胡麻みそ。
万願寺の風味と海老のぷりっと感がいい。
さあぁー やっとやっと
メインと言うべきあの方の登場です。
私、その方にお会いするの初めてなんです・・・
「花山椒さん」!!
まずは比内鶏の鶏ガラからとったスープに
極上比内鶏の手羽、もも、内蔵や卵などに加えて
五三竹も飛び込みます。
「鍋物」比内鶏、五三竹、笹がき蕗、花山椒
次に、茹でて皮を向いて笹がきにした蕗が。
すきとおる緑が綺麗!
鶏の脂で鍋が黄色く染まってますね〜♪
そしてこちらが本日のメインともいうべき
「花山椒」
この器も潮さん作。縁飾りが素敵だ。
入ります!
わぁー 出来たぁー!
お、おいしい・・・・・・・・・・・。
くだらぬことを言うようですが、花山椒って花なんですね!
山椒というものは、まさに「スパイス」。
ツーンというかピーンというか
とにかく香りが尖って立って強力ですよね。
花山椒というものはそっくり同じ香りながら
それが「はなやかに」「ほわぁ〜んと」
なんともうっとりと香るのだ。
そして比内鶏の美味しさは言わずもがな。
肉がちょっとあぶってあるのがニクイ。
そしてかぶりつくとぷりっ、ふっくらとやわらかく、
なにより脂のすごいほどの甘み・・
五三竹の食感も素晴らしい。
噛むとパリッと、新鮮に割れるように砕ける。
そこから春の香りがふわぁ〜
濃厚な鶏の旨みが花山椒と五三竹という野の香りでくるまれて
なんとも趣深い鍋だ。
一同の熱いリクエストにより
この鍋にはご飯を入れて雑炊を作ってもらうことに(^o^)♪
そのお楽しみを待つ間・・
湯葉、蕗、竹の子、グリーンピース
この器も潮さん作。
最近は「桶型」に凝っているそうなのだが
器として実に楽しい。
やや甘めの味付け、すべてがピタリちょうどいい食感。
このグリーンピース、大粒で美味しいなあ
雑炊できたぁー!
比内鶏の出汁にふんわり卵〜
うー お腹いっぱいだけどおいしい・・
そしてこちらが大人気でした、
水茄子のぬか漬け
茄子の色彩と、うつくしいムラが表現された器の彩色がぴったり。
こちらは手で割いていただきます。
昔あった糠漬けの味。
澄み渡る発酵の味が体を清めてくれる気がする。
おいしいおいしいと皆に売れる売れる!
日本人は本能的にこの味を求めているのかもしれない。
そしてここでいきなり、
スタート前の競馬馬のように目がランランとしてきちゃった人が・・
お蕎麦!!
こんなにお腹いっぱいでも、君はどうしてこうも魅力的なのだ!
今夜は絢爛美食づくしでしばらく離れていた気がするだけに
その名を聞いただけで嬉しさが下から下から浮かび上がってくるようだ。
ああー わくわくする・・・
きたっ
「止そば」
あああ 素敵ですねえ
お蕎麦の眺めは美しいですねえ
私は「笊の上の蕎麦」という眺めを世界遺産に登録申請したい。
端整な肌、かろやかな重なり。
たぐりあげ、淡く漂うような甘い香ばしさにしばしうっとりとする。
あー うー 私ほんとうにお蕎麦さんが大好きです・・・
口に含むとかろやかな姿の通り、
くにゃんくにゃんとごくやわらかい蕎麦だが
単なる茹で過ぎ蕎麦とは全く違い、そこには絶妙の食感がある。
噛みしめるごとにフワンと受け止めてくれるやさしいコシ。
また舌に広がる味わいがいい。
常陸秋そばらしい正統派の蕎麦の旨みが
舌の上にギュッと小さくひろがる感じ。
群馬・赤城町の常陸秋そば。
蕎麦が出てきて食べる速度と勢いがいきなり倍増した私に
ギョッとする同席の方あり・・・そりゃそーですよね(^^;;)
「止そば」のあとはいよいよフィナーレ。
「甘味」よっぱらい大納言
見事な、江戸切子。
透けた小豆がいかにも涼しげだ。
ひんやり小豆に白玉。
なにがよっぱらいなのかな?と皆で推測していたのだが
答えは香り付けに使われたブランデーだった。
使い方の妙なのか、誰もブランデーとは分からず
「このお酒のよい香りは何だろう??」
と侃侃諤諤、最後は店主に教えてもらったのでした(^o^)
「胡桃のタルト」
店主初挑戦という胡桃のタルト。
初挑戦にしてこれですか!
なんでケーキまで作れちゃうんですか!
ローストした胡桃をあたり鉢で丁寧にあたったという
ゆたかな森のごちそうデザート。
おいしいものにウキウキニコニコ、喜びっぱなしの私達を
店内の高いところに無数に点在するお地蔵様達が
静かに見下ろしている。
すべて店主の手による仏像たちをまだ見てない方は
是非是非前回の写真をご覧下さいね。
「潮美術館」なんです!
2012年2月の「潮」
2012年7月のライブのお知らせ
2012年05月15日
一番会いたかった人
実家に帰る度に気にしていた家がある。
小学校低学年の頃の一番の仲良し、ワタナベくんの家。
色白で整った綺麗な顔立ちをしたワタナベくんは、アニメの一休さんのようなマルコメ頭の、それはそれはかわいい男の子だった。ガラスケースの中の日本人形のような。
対する私は学年の中で飛び抜けて一番背が高い「ワンパク坊主のような女の子」。外でばかり遊ぶので真っ黒に陽に焼けて、膝小僧はいつもみっともないほど絆創膏だらけだった。とてもここには書けないが「山猿」を最悪の形で英訳したような不名誉なあだ名までつけられていた。
ワタナベくんの家は古い立派な日本家屋で、広い庭には竹藪や温室があり正に遊びの宝庫だった。見た目も中身も男の子のようだった私は、ワタナベくんと二人でカマキリやクワガタ捕り、カエルの卵捕りなどに熱中した。他にどんな遊びをしたのか覚えていないが、ワタナベくんと遊ぶのがものすごくわくわくして楽しかったことだけは今でも覚えている。
私の家は帰っても留守がちであったのだが、ワタナベくんの家にはいつもお母さんとおばあちゃんがいた。ほっそり色白で朗らかなお母さんはいつも必ず手づくりのおやつをくれたし、着物姿が絵のように似合う優しいおばあちゃんは私達の遊び相手になってくれた。私のことも孫のように可愛がってくれた。
そのワタナベくんの古い家も10年ほど前に壊された。2階建ての快適そうな綺麗な家に建て替わり、楽しかった広い前庭は大きな駐車場になった。ワタナベくんのお母さんと私の母が同じコーラスグループに所属しているため、お母さんを通じて、何年か前にワタナベくんが結婚してその家に家族みんなで暮らしていること、その後楓(かえで)くんという男の子が生まれたことも聞いていた。結婚式の写真入りの葉書も見せてもらい、これまた大変美しいお嫁さんだったので、楓くんもきっと可愛い子だろうなと思っていた。
前置きが長くなったが、今日の昼間のことだ。
久々に実家に帰った私は、ワタナベくんの家を過ぎたあたりで小学校3年生くらいの男の子に出会った。何か棒を持って、そこら中の壁をなぞったり他所の家の駐車場の車の裏へまわったりしてなかなかこちらへ進んでこない。子供は可笑しいな、とその子の顔を見て私は棒立ちになった。
「ワタナベくん!!!」
マルコメ頭でこそないが、涼し気な目元にきゅっとしまった小さな口元、日本人形のように整った可愛らしい顔立ちはまさにワタナベくん。年の頃も私が仲良しだった頃のワタナベくんそのままだった。「この子は楓くんだ」と確信した私は、遅々として進まない男の子の10m程後ろを怪しく尾行した。傍から見たら不審者そのものだ。するとやっぱり、男の子はワタナベくんの家の大きな駐車場に入っていく。でもそれも彼の遊びの一環かもしれないし、まだ楓くんという証拠はない。
私がいつ声をかけようか迷っているうちに男の子の姿はふっと見えなくなった。慌てて見渡すと、家の玄関脇で立小便をしている。私はますます可笑しくなった。礼儀として近づかないようにしてそれが終わるのを待ち、終わった頃に近づいていった。小さなワタナベくんは車の影で子猫のようにこちらを見ている。
「あなた、楓くん?」
小さなワタナベくんは礼儀正しくハイという。
そう、ワタナベくんも礼儀正しい子だったなあ。
私は不審者と思われないためには何と言ったらいいのか、頭の中で必死で整理しながら言った。
「お姉ちゃんね、お父さんのお友達だったの。今日、お父さんはいないよね。お母さんはいる?」
ここで私はすでに混乱している。ワタナベくんのことを「お父さん」と呼ぶところまでは頑張れたが、私が聞いた「お母さん」とは楓くんにとってはおばあちゃんのことだった。ワタナベくん夫婦は共働きと聞いていたので、楓くんのお母さんは今の時間は居ないに決まっているのだ。
楓くんは礼儀正しく「お母さんは5時まで帰ってきません。おばあちゃんも・・今日はいるかなあ、でも家に誰かはいます」
このあたりから突然、私の心は何とも言えない、泣き叫びたいような灰色になってきていた。
楓くんの両親やおじいちゃんおばあちゃんはお元気なのだろう。
でも、わたしと遊んでくれたあの優しい優しいおばあちゃんは?
急に逃げ出してしまいたいような恐怖にかられた。
とは言えここで帰るのはもっと不審者なので、楓くんの手前、私は家のベルを鳴らした。
するとワタナベくんのお父さん、楓くんにとってはおじいちゃんが「はーい」と出てきてくれた。玄関先は楓くんが収集した水生動物の小さな水槽でいっぱいだ。私がワタナベくんと集めていたものとそっくりだ。
私が入り浸っていた当時はいつも昼間だったのでお父さんに会う機会はほとんどなかったのだが、名乗るとお父さんはすぐにわかってくれて、満面の笑顔でどうぞ中へ中へと招き入れてくれた。
イヤ、でも、こんな突然にお邪魔しては、などと玄関先でモゾモゾ言う私の目の前にゆっくりと現れた・・
おばあちゃん!!!
私は抱きつかんばかりにおばあちゃんの手をとり、一生懸命名乗った。94歳になったおばあちゃんは、本当にうれしいことに私のことをちゃんと覚えていてくれて、頭もしっかりしていた。涙がぼろぼろ出てしまった。
おばあちゃんはもう着物は着ていなかったけれど、品の良い顔立ちも優しい優しい話し方も昔のまま。「私がこんなに何も出来ないのに、みなさんが大事にしてくれるから何とかやっているんですよ・・」と言う。
そうだ、ワタナベくんちはこういうお家だった。おばあちゃんも、お嫁さんであるお母さんも、お互いに尊敬と感謝の気持ちを忘れない、希少な古き良き日本の家庭だった。だからなのか、ワタナベくんも正義感の強い真面目なタイプの男の子だった。みんないつもいつも、ワンパク坊主で山猿な私に優しくしてくれた。
あんな可愛がって遊んでもらいお世話になりっぱなしだった私に、おばあちゃんは「昔は本当によく遊んでくれましたねえ」と言う。「梅の季節はね、ここにこうして座っていると、庭が梅でいっぱいになって、本当に綺麗なんですよ。ちょっと前まではそこに牡丹が。みなさんが忙しく働いていらっしゃるのに、私は何もできないでここでぼんやり花を眺めているだけなんです。本当に申し訳ないばかりなんですよ」と優しい声で言う。
私はあらためておばあちゃんの手を握り、その手を知っている自分に驚いた。小さな手。細い綺麗な指先。私はこの手に握ってもらったことが何度もあると思った。お父さんがお茶とたねやの「近江ひら餅よもぎ餅」でもてなしてくれて楽しくお話しているのに、私は何度でも泣きそうになった。何十年ぶりかで食べる、ワタナベくんちのおやつだった。
棒でそこらじゅうをいじりながら学校から帰った楓くんは、家に帰って一番にバナナをムシャムシャ食べ、テレビゲームをしている。真剣な横顔があまりにもワタナベくんそっくりで可笑しい。リビングルームの真ん中にさかさまに投げ出されたランドセルはもっと可笑しい。30分程すると、いきなり「広場行ってくる!」と玄関に走り出した。
「広場はいいけど、場所変えるときはまた言いにくるんだよー!」
「カエちゃん〜・・気をつけてね〜・・」
リビングから叫ぶ「おじいちゃん」と「ひいばちゃん」のか細い声に、ハイ!ハイ!ときちんと応える楓くん。
私が玄関を覗くと長靴の準備をしていて、どうやらこれからまた池にでも入るらしい。
「明日は雨だから今日また長靴びしょびしょにすると明日履いていけないぞー!」
と「おじいちゃん」。
アハハと笑いながら私も参加して「長靴ん中に水入れちゃだめだよー!」と叫ぶ。
ハーイと返事をしてバターン!と玄関を出て行った楓くん。その勇姿を見せたかったのか、庭先にひょっこり現れた。長靴に、池の中をさらう用の長い棒のついた網、まだ何やら道具を持っている。
リビングから見ている私達3人に、小さなワタナベくんがニコッと笑って動物のようにすぐ消えた。
夢を見ているようだった。
時が経ったのだ。
2012年7月のライブのお知らせ
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2012年05月13日
新潟・上越市中郷「そば処 一郷庵」
洋風の一軒家のガレージ横が
くりぬかれたように別世界になっている。
「そば処 一郷庵(いちごうあん)」。
手書きらしい暖簾は潔くも枯れた庵風で
その趣を、明るい花々が楽しげに彩っている。
店内はダークカラーの木でまとめられた
シンプルなインテリア。
ここは山菜などの天ぷらがおいしいとのことで
「天せいろ(エビ2本と季節野菜の五点盛)」にも惹かれたが
結局私ってこうなっちゃうんですよね・・わはは
「せいろ」
横長のせいろにうず高く、たっぷりと。
生粉打ち、十割の蕎麦だ。
頂からこぼれ落ちる、素朴な肌。
ぱっと見はすんなりしているよう見えたのだが
こうして見入れば「繊細なざっくり感」「細かい粗さ」に心を奪われる。
淡く香る蕎麦を口に含むと、これは意外な食感だ。
見た目は粗いのになんとも独特なつるつる感がある。
へぎ蕎麦に似ていなくもないがそれとも違う。
口の中でパラパラと束がほどけ、
1本1本がするりつるりとすべるように流麗に流れていく。
自家栽培もしているという店主が作り上げた、「一郷庵」の世界。
秋に来たらこの「摘み草天ぷら」というのが是非食べてみたい!!
こんなロマンティックなお蕎麦初めて見た〜!
(メニュー写真より拝借)
2012年7月のライブのお知らせ
2012年05月12日
長野・戸隠「戸隠手打ちそば処 二葉屋」
蕎麦どころとしてあまりにも名高い戸隠。
戸隠高原に近づいていくともうそれこそ「そば」の看板だらけ。
なんと50軒近くもの「お蕎麦屋さん」や「蕎麦を出す宿」があるのだから
その悩ましさもどかしさと言ったらない。
なにしろこちらのお腹はひとつなのだ。
何度か来ているうちにお気に入りの店などもあるが
やはりいろんなお店に行ってみたいということで
今回は中社近くの、初めて行くお店である。
標高1200mの清澄な空気と、
「戸隠手打ちそば処 二葉屋」。
店主は夜はショットバーを経営していると聞いていたので
古典的で立派な外観はやや意外だった。
しかも私はこちら側から行ったのでこの写真になったのだが、
実はこの写真は店の裏側で、正面玄関は反対側になっている。
裏側にもきちんと立派な玄関があるのだ。
5月に入っても戸隠の朝は寒い。
お店の人は、ストーブで部屋を暖めて、
お客さんを迎える準備をしている。
長野のおもてなし、お漬物。
二葉屋さんには嬉しいことにお蕎麦屋が2種類ある。
「ザ・戸隠そば」な「ざるそば」と「十割そば」だ。
「ざるそば」
来ました来ました、しと〜と横たわる「ぼっち盛り」。
ふわぁ〜と淡く漂う香り。
口に含むと蕎麦粉とつなぎの小麦粉の織りなす甘さが
じわぁーとひろがる。
「二葉屋」ではつなぎの小麦も長野産を使用しているのだ。
戸隠そばというのは「水切りをしない」という特徴があるのだが
ここの蕎麦もまるで水と一緒に食べているような水分量である。
そして、よーく見ると写真からでも伝わるかと思いますが、
この蕎麦ものすごい角の立ち方をしています!
みずみずしくやわらかな刀のような。
限定10食(休日は20食)の
「生粉打ちざるそば」
ぼっち盛りの「ざるそば」とは打って変わって、
ひらひらと細かく舞うような盛り。
姿からはふわっと軽い蕎麦を想像したが
口に含むとこれまたくっきりはっきり、
すごい角の立ち方をした蕎麦である。意外!
さわやかに浅くひろがっていくような、淡い香り。
ほんのりとした味わい。
パラパラと口中でほどけていくような食感が心地よい。
隅から隅まで綺麗に調えられた広い店内を眺めつつ、蕎麦湯。
すっきりと甘さを抑えた汁が澄んだ空気に合う。
店も、私のお腹もあたたまってきた。
2012年05月11日
かめたと鏡
熊本にいる、大好きなお友達のナカシマちゃんから
突然送られてきたプレゼント。
ラッピングも可愛くて
「黒豆おこし」のおまけつきってところが
ナカシマちゃんらしくてうれしい♪♪
モダンな梅テキスタイルがお洒落な鏡。
出店していた京都のお店で見つけて、
すぐ私を思い出してくれたんだって!
うっ うっ 嬉しい・・泣ける・・・
ナカシマちゃんありがとう
ライブの時などに早速愛用しているよ〜
(出演:かめた from 沖縄)
2012年7月のライブ出演のお知らせ
2012年05月10日
長野・小布施「手打そば処 鼎(かなえ)」
小布施町の静かな住宅街。
自宅改造のお蕎麦屋さんらしいが
もともとの造りが純和風だったのか
とてもいい構えである。
2階の瓦屋根が描く曲線と
黒い縦格子が効いている。
早い時間なので店は空いていた。
地元の人らしい年配の男性が二人、
ゆっくりとした口調で話している。
「特製そばがき」
メニューの説明に
「十割同様の粗挽き粉を口あたりなめらかに。
蓋を開ければあつあつもっちもち。」
とあるそばがき。
削り節、辛味おろし、山葵などの薬味とともにやってきた。
ほわわわ〜
たちのぼる、かぐわしき湯気。
凝縮された穀物の香りがギッチリ香っている。
洗練とろフワ、というようなイマドキな食感とは正反対。
モチッズシッと食べ応えのある
いかにも「田舎のおやつ」といった風の素朴なそばがきだ。
「もりそば」(二八そば)
白木の横長せいろの上の、小高きたっぷり盛り。
ここで何故か突然
「ああお蕎麦ってなんてシンプルで、美しくて、面白い姿なんだろう」
と初恋のように惚れ直す。
木の箱の上にパスタやラーメンなどの炭水化物がのっていたら
ちょっとびっくりするではないか。
外国人から見たらとてもユニークな眺めに違いない。
ふわり、淡くただよう
炊きたてのお米のような甘い香り。
肌に独特のざらつきがあり、どこかスポンジのような
空気や水分を粗く内側に含んでいるような感じが面白い。
しかし食感はしっかりとしていて、噛みしめるとムチッとした二八のコシ。
味わいもまた淡いのだが、ほんのりとした感じが美味しい。
「十割そば」
わー 楽しい
「十割そば」は三つ山盛りだ!
メニューには
「厳選した玄蕎麦を、甘皮をふんだんに挽き込んだ黒っぽい十割そば。
豊かな香りと甘味あるそばをお楽しみください」
とある。
あああ
なんと奥深くたくましい、野生の香り。
口に含むと二八よりぐっと密な食感で、それを噛みしめると
う〜〜わ〜〜
噛みしめる度に、たまらぬおいしい香りと味わいが
生まれてくる。口の中いっぱいを染めまくる!
ひゃあああ おいしいよう・・・
ふと見ると、十割そばには
長野らしくお漬物がついてきている。
自家製の辛子なすがおいしい。
どっしり濃い、ポタージュ蕎麦湯にもよく合う。
例によって蕎麦汁も蕎麦湯タイムになってはじめて味わった。
しっかり濃いめで甘みを抑えた汁。
ところでこちらのメニューにもある「おしぼりそば」ってネイミング、
私、何度見てもちょっとびっくりしてしまうんですが・・
どうしても、浅草尾張屋の「天ぷらそば」のデカ天ぷらが布おしぼりになったようなのが
脳裏にチラついちゃうんですよね〜(^^;;)
(おしぼりそば=大根おろしのしぼり汁で食べる長野北部の郷土蕎麦)
2012年7月のライブ出演のお知らせ
2012年05月09日
長野・黒姫「手打ちそば工房 若月」
ハイシーズンには車の行列ができるほどの人気店だが
本来はごくのんびりとした、住宅街の奥の蕎麦屋である。
「手打ちそば工房 若月」。
暖簾には店名よりも大きくバシッと「名代 霧下蕎麦」と書いてある。
霧下蕎麦というのは、はっきりと分類できるものでもないのだが、
要は畑に霧が立ち込めるような環境で育った蕎麦、ということである。
蕎麦の栽培には「昼夜の温度差が激しい寒冷地」、
しかも「水はけのよい高地」が一番適しているとされている。
そういった土地には朝のうちに霧が立ち込めるため、
霧の下で育つ蕎麦、霧下蕎麦と呼ばれるようになったのだ。
長野の開田高原、戸隠高原、妙高高原、そしてここ黒姫高原などの蕎麦が
その名で名高い。
よってここの「名代 霧下蕎麦」というのは
何か特別な打ち方をしているとか、
規定にしたがったブランド蕎麦とかいうことではなく
この黒姫あたりのおいしいお蕎麦ですよという、
非常にのどかな話なのだ。
私が到着した時、入れ替わりに近所の人らしいお客さんが店を出た。
割烹着の店のおばちゃんは、尽きぬ話を店の外でも続けては見送っている。
店内には誰もいない。
広々と、静かな午後。
まずは漬物でもてなしてくれるのがやはり長野だ。
壁のお品書きの横には
蕎麦打ち姿のおばちゃんの写真が
額に入れて飾ってある。
おばちゃん、綺麗に写っていて
とてもいい写真だ。
「ざるそば」
ざるいっぱいにひろびろ豊かに盛られた、
心和む田舎風景。
赤みを帯びた、軽そうな肌。
赤い蕎麦というのはどうも警戒しがちだが
箸先にたぐれば杞憂とわかる。
ひんやりさわやか、それでいてたくましいかぐわしさがふわぁー
ビシッとしっかりしめてあるのだが
食感はふるふると軽やか。
これはなかなかありそうでない蕎麦だ。
これが、黒姫の霧下蕎麦なのだ。
この店がここでずっとこうして愛されてきたのだから、
黒姫の霧下蕎麦とはこういうものなのだ、と思う。
やや不揃いな感じもあるが、
それは私にとっては全く欠点ではないので
(いろいろあって楽しいではないか)
ただただ堪能、ああ おいしいなあー
厨房では、先程から揉め事でもあるのか
ちょっとした喧嘩のようなものが聞こえる。
聞くとはなしにしばらく聞いていると
それは体の何処だかが痛いおばちゃんを気遣って、
働くな、体を使うな、とたしなめる人の声だとわかる。
おばちゃんが言う事を聞かずに働くので
つい声を荒らげている。
働き者が癖になっているおばちゃんと
心配する家族。
おばちゃん、お蕎麦美味しかった。
お漬物も美味しかった。
また、来るからねー
2012年7月のライブ出演のお知らせ
2012年05月08日
静岡・藤枝「手打そば ながいけ」
3月に訪れた際、帰り際に聞いた
「もうすぐびっくりするほど美味しい、珍しいお蕎麦を打つんですよ〜」
という店主の言葉が忘れられず。
ウハッ
来ちゃえばぜんぜん遠くない、
大好きな「手打そば ながいけ」。
ハイパワー掃除機のように私を東京から吸引した
「美味しい珍しいお蕎麦」とはこれである。
幻の静岡在来種!
この店からも近い、大井川上流川根本町の在来種で
生産量がごく少ないため、この店でも曜日を限定しての販売だ。
本日、入り口の「本日の粗挽き」の看板のところには・・
下に小さく「静岡在来あります」と貼ってある。
ウキャ ときめくー! (≧∇≦)☆
いつもの、蕎麦味噌から。
ここのモンゴル岩塩は甘く深くおいしい。
この塩はこの店の看板とも言える
「粗挽き三兄弟」のために置かれているものだ。
前回も書いた通り「ながいけ」には二八の「せいろ」以外に
「粗挽き三兄弟」がある。
「粗挽きせいろ」
「粗挽き十割せいろ」
「手挽きせいろ」
の三種だが、本日は幻の在来種があるので
「粗挽き十割せいろ」(幻の在来種)
「粗挽き十割せいろ」(福井・茨城ブレンド)
「手挽きせいろ」
の三種類を食べることにする。
来たぁー
「粗挽き十割せいろ」(静岡・川根在来種)
どきどきする・・
自然光に照らされた、端然たるこの景色・・・
思わず、息を止めてしまうほどの肌。
どんな形容詞も野暮なほど、どうにもこうにもたまらない眺めだが
その香りはもっと凄い。
何デスカこのびっくりフルーティーな香りは!!
マスカット・・、いやメロンソーダ・・?
とにかく蕎麦からは感じたことのない、
さわやかフルーティーな香りをほわりとまとっている。
しっとりぴたっとした肌はごくやわらかく、
噛みしめるとふんわりかろやかなコシ。
味わいは、白いイメージの上品なもので
その夢をほんのり、うっとり、追いかけるひととき。
生まれた地で食べる、ちいさな在来種の味・・
会いに来て、本当によかった。
「粗挽き十割せいろ」(福井・茨城ブレンド)
これまた、時を忘れて見入ってしまいそうな超絶美肌!
うっすらと緑がかった肌の、しっとりとしたざらつき。
蕎麦の粒子達ひと粒ひと粒に目を奪われる。
手繰り上げると干し草のような、
爽やかな野生の香りが淡くふわー
ごくやわらかかかった先刻の川根在来よりは流麗な舌触りで
噛みしめるとこれもふんわりとやわらかいコシ。
はにゃほにゃ・・おいしい・・・・
うっとり・・・
「手挽きせいろ」
おー
これは今日いちばんの
明るく軽やかな姿である。
うっ
またこれもなんと素敵な肌・・・(>_<)
透明感の中にめぐる陰影。
乳白色、薄茶、淡赤の粒子たちに目をこらす。
表面は今までの2枚と比べるとしっかりとして
ざらついた舌触りが心地よい。
そしてこれまた、
ほんのりと甘く上品な香りがすばらしい!おいしい!
実はこれが今日一番好きかも・・・
極上の白米にも通ずるほんのりとした香りなのだが
それがだんだん、
私にとってはたまに出会う香りに変化してくるのがまた面白い。
どんな香りかって・・あのー・・・
某有名アイスクリームの香りなんです。。。
この香りの要素を持った蕎麦、たまに出逢うのだが
なんの共通点があるのかなあー
(忘れっぽいのでいつも判明しないまま)
そうそう、前回は「桜えび天せいろ」がとても美味しかったので
今回はひとつを「鴨せいろ」にしてみたんでした。
おいしいけど、やっぱりあの「桜えび天せいろ」には負けちゃうかなあ
結局蕎麦にはつけられないのに(蕎麦おいしすぎ)
また食べたい「桜えび天せいろ」。
悩ましい奴よのぅ・・・
2012年3月の「手打そば ながいけ」
2012年7月のライブ出演のお知らせ
2012年05月06日
神田「眠庵」八種もりの会
恒例・神田眠庵の蕎麦会。
店のお客さんの中の希望者が集まるこの会は
昼の部12名、夜の部12名が定員なのだが
毎回希望者が多いため
出席希望を前回出席時に出してしまう強者もいるほど。
お店からは定番の自家製豆腐と自家製おから、
そして8箇所の産地のお蕎麦が出されるのだが
さらに出席者持ち寄りのお酒とおつまみがモノスゴイ。
特に今回はとんでもなく豪華で美味しいおつまみとお酒が集まってしまい
蕎麦が出てくるまでのブレーキに苦戦する者多数!
お腹いっぱいになっては8種の蕎麦が入らなくなってしまうので
「どうしよう・・!」と本気で困り果てながらも
美味しくてついパクリ、お酒チビリ。
和気あいあい、楽しい蕎麦前じかん。
実は今回は私も食べ飲みし過ぎたのか、
それとも単なる蕎麦酔いか(トランスとも言う)、
後半のレポートはかなりフニャララなのですがお許しを!
ジャーン
1枚目の登場!
いつものように1枚目のみお店の「プロ盛り」。
2枚目以降は小鉢に盛られてきたものを各自ざるにパカとひっくり返す
「セルフ盛り」につき、盛りの乱れはご了承ください。
もうちょっと気持ちが落ち着いていれば、
上手に散らすことも出来そうなものなのだが
なにせ「蕎麦を前にした私」というのは
一日の中で最も心が荒れ狂っているときだと思うので・・・
その瞬間が8回も来てしまう蕎麦会。
心中はもはや北斎「神奈川沖浪裏」である。
1枚目「北海道・江差」2011年、品種はキタワセ。
いかにも、濃厚な香りをふんだんにまとっていそうな
震える輪郭線、色とりどりの粒子が見え隠れする肌。
珍しく「見た目からして北海道!」とまで思ったのだが
たぐり上げた香りは思ったよりずっと淡かった。
ところが。あとからフワーーーと、以前ここで何度も出会った
あの倶知安ビーフジャーキー野郎を思わせるようなびっくりたくましい香りが、
ごく微かに煙るように追いかけてくる!すてきー!
見た目の通り、軽い、しとぴたっとした肌。
はああ 1枚目からなんという奥深き美味しさ・・・
2枚目「静岡」2010年、在来種。
水水しく、どこか老成した風情。
甘く香ばしい香りを放つ肌は、意外なほど繊細な食感で
水々しい肌が口中で繊細にこぼれていく様にうっとりだ。
味わいは濃厚スモーキーで、墨にも似た香ばしさ。
これもおいしいー!
3枚目「富山」2011年、清水(旧山田村)在来種。
これまたみずみずしく、ややグッタリとやわらかそうな肌。
しかもこれが!!とんでもないほどのかぐわしさ!!
炊きたてのお米のような濃厚な甘さと香ばしさが
ムンッムンッに飛び散るように香っていて
最高においしいー!(まだ食べていない)
そして食感にもびっくり。
見た目の通り実にやわらかいのに、
それを感じさせないコシ?があり
むしろガッツリとした食べ応えすら感じてしまうから不思議だ。
テーブルからは美味しいー美味しいーと唸り声があちこちから上がっている。
この夜、この蕎麦に感謝。
4枚目「茨城・笠間」2011年、常陸秋そば。
え”! さらに濃い香ばしさ、かぐわしさ。
この前の富山であんなにヘベレケ(?)になったのに・・
今回のトランスはこうして始まった。
もはや何が何やら全部美味しくてわからない物語。
メモを見ると頭の悪そうな字で
「きょうれつ、コシぜつみょう、味こい こわれる〜〜〜!
味 新蕎麦と思えない 煮詰まったようにこい」
と書いてある。
ここで壊れたらしいので皆様どうぞよろしく。
5枚目「長野・松本」2011年、信濃一号。
素直でおおらかなな印象のライン。
そしてこれまた強烈なほど濃厚な芳しさ!
今日は本当に凄い蕎麦続きでわたしゃもうへにゃへにゃである。
口に含むと見た目通りのおおらかで直線的な舌触りで
しかもそれでいて「やさしくやわらかい」のが眠庵らしい。
6枚目「大分・豊後高田」2010年、新品種・さちいずみ。
これは前回の蕎麦会でも登場した新品種・さちいずみ。
どうやら私はこの品種がとても好きである。
今までの5枚と違い、香りの中に甘さの要素がなく、
下を強く支える野性的な香りがギューーーー!
肌はスルスルとすべらかで、食べても甘味は少なくスッキリ。
そのぶんかぐわしさが
濃厚なまま天高く広がっていくように感じられる。
7枚目「鹿児島」2008年、鹿屋在来種。
ビスクドールのような、なめらかな泥のような
ごく細かいざらつき。
みずみずしいせいか、舌に触れたときは
味が濃いような淡いような珍しい感覚だったのだが
やわらかくやさしいコシを噛みしめると、なんという味わい深さ!!
甘くたくましく、まさに老成したイメージの味わい。
こんなに味が濃いのに水水しいさっぱり感があるから不思議である。
3年半熟成の魔法?
適切に管理された蕎麦は年月を経てこんな美味しさをまとうのだ。
8枚目「福井」2011年、大野在来種。
他の人のところへ運ばれてきた段階で
色の美しさに目を奪われる。(人のを見過ぎ)
うっすら、ひんやりとしたような美しい青み。
これまた、ひとつ前の鹿児島に似たビスクドールな肌で
何よりも、超がつく華やかフレッシュ、濃厚な香りが素晴らしい。
ほんのりと甘くすっきりした味わい。
いつもながら眠庵蕎麦会で食べる福井は最高においしい!
美味しい蕎麦が続き過ぎて
背骨も脳もトロけてへにゃんへにゃんのメモだったが
翻訳(?)したらどうにか形になってヨカッタヨカッタ。
しかしへにゃへにゃ&同席の皆さんとの時間が楽しすぎたため
今回は玄蕎麦の写真も「お酒マンハッタン(林立し過ぎ)」の写真も
撮り忘れたぁ〜
2012年3月の「八種もりの会」
2012年2月の「八種もりの会」
2011年12月の「八種もりの会」
神田「眠庵」
神田「眠庵」(豆のスープ)
2011年11月の「八種もりの会」
2011年9月の「八種もりの会」
2011年7月の「六種もりの会」
2011年5月の「眠庵」手挽き蕎麦
2011年3月の「眠庵」
2011年2月の「八種もりの会」
2010年11月の「八種もりの会」
2010年9月の「八種もりの会」
2010年7月の「八種もりの会」
2010年4月の「八種もりの会」
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2012年05月04日
打ち放題
国道沿いの巨大看板「打ち放題」の文字を見て、
え!
「お蕎麦を打って打って打ちまくれる場所」
かと一瞬本気で思ってしまった・・
(本当はゴルフ場)
場所が茨城だったせいもあることにしておいてください(^^;;)
県北には「そば道場」もあるしね!
はあー
それにしても、茨城のお蕎麦さんは
美味しいところだらけでスバラシすぎる!!
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