2011年07月01日
代田橋「手打蕎麦 まるやま」
代田橋の超・名店「手打蕎麦 まるやま」。
この店がどんなにすんばらしいかは
既にうるさいほど吠えているので
今回はなるべく落ち着いてご紹介したいところ。
しかし落ち着くには最近の東京は暑過ぎる。
お日様の恵みはとてもありがたいが
照り返しで焦げそうだ。
そんな日のこんな時間は、まあ天国に近いと言っていい。
ひんやーーり冷やされた陶器の器で、生ビール。
「まろやか豆腐」
「しらすおろし」
全てが見るからに美味しそうで、ちゃんと美味しい。
そして居心地はすこぶるいい。
お蕎麦が美味しいということは最高に素晴らしいことだが
それに加えてこういうことをされるともう私は困ってしまう。
ここにいるのに「またすぐ来たい」と思う店。
今回ははじめて「玉子焼き」も頼んでみた。
東京らしい甘辛の玉子焼き。
そしていつも必ず頼んでしまうのは
「ねぎ焼き」である。
ねぎ、焼いただけ!!
これが本当に美味しい。
私は何事もこういうシンプルなものが好きだが
シンプルなものほど家庭で作るとこうはいかない。
鴨の脂で焼かれた新鮮なねぎ。
ベストな焼き加減、この焦げ目がたまらない。。
そしてお蕎麦。
あああ・・来た。
「せいろ」
見るからにときめく粗挽き。
重なる夢、白き陽炎、めぐる燈籠・・
ともう私の頭は恍惚でイカレ気味だが
とにかくもううっとりするしかないほど美味しそうだ。
そしてその予感どおり、たまらぬかぐわしさ!!
見た目の通りの、白く甘くフレッシュな香り。
口に含んだ風味も、舌触りのやさしさもたまらない。
しっとりほどけていく様もたまらない。
こんな、こんな極上の世界が、
なんでもなさそう〜に甲州街道沿いに控えている。
ありえません。
素晴らしいにも程がある。
「田舎せいろ」
おおっ
これは・・・
粗挽き加減も容赦なくゴージャズだが、
それ以前にちょっと仰け反る程の赤さと透明感である。
相当な熟成なのか・・?
と思いつつたぐり上げてみれば、
香りは意外なほど淡く、微かな穀物感を漂わせているのみ。
しかし噛みしめると突然、ふわぁーーっと口中に香ばしさが広がり
濃厚な味わいがどんどん深まっていく。
何が凄いと入ってこの個性にしてこの品の良さである。
これだけの赤さ、粗さを持ちつつ、生々しい熟成感などは微塵もなく
かえって澄んだ印象すら受ける、味わいの美しさ。
なにをどうしたらこうなるのか。
拙著「蕎麦こい日記」で進化し続ける蕎麦と紹介させていただいたが
「手打蕎麦 まるやま」の蕎麦はいつ来ても違う表情で美味しい。
その眼を見張る進化の影にはどれほどの努力が、と思わずにはいられないが
当の店主はいつもこちらの力がへなーっと抜けるほど飄々として
そして私もついつられてしまうほど、たまらぬいい笑顔である。
本日私はすごい言葉を聞いてしまった。
「俺なんか、石臼から出てきた蕎麦打ってるだけからさぁー、
あ〜今日はこんなん出てきたァーって!」
これだけの蕎麦を出してこのセリフ・・
そして屈託ないあの笑顔・・
たまりません、「手打蕎麦 まるやま」。
「せいろ」も「田舎せいろ」も美味しくて
ひとりできたらこれだけでお腹いっぱいだが、
困ったことに名店というものは種物もおいしいのだ。
季節のメニューのボードが壁に。
なんと冷やかけだけでも
「梅とみょうがの冷やかけ」
「辛味おろしの冷やかけ」
「「花巻のひやかけ(海苔と梅干のハーモニーを)」
と三種類。
ぶっかけではなく冷やかけというところが
「手打蕎麦 まるやま」らしい、親しみやすいが洗練のセンスである。
これがどれも素晴らしく美味しい!
「花巻のひやかけ」
「梅とみょうがの冷やかけ」
蕎麦は「せいろ」と同じものだが
別の蕎麦かと店主に聞いてしまったほど端正で粋な印象。
なによりこの汁が、すっきりとたまらなく美味しい。
すっきり冷たい澄んだ味わいの汁の中に、ひんやりと泳ぐ洗練の粗挽き蕎麦。
そこに、花巻(海苔)ですよ。
梅とみょうがですよ。
夏にこれを食べないでどうするんですか。
もう、私は全く参った。
ちなみにボードにある宮城のお酒、「黄金澤〜橘屋〜特別純米」。
おいしいですよぉ〜〜〜
2010年10月の「手打蕎麦 まるやま」
2010年3月の「手打蕎麦 まるやま」