2010年12月31日
小平市小川町「手打ちそば そうま」
大晦日の今日、
東京の片隅で小さな暖簾がそっと下ろされる。
東京都小平市。
青梅街道沿いに掲げられた幟に誘われ路地に入ると
なんとも微笑ましい、「自宅改造」というより「自宅そのまんま」の
お蕎麦屋さんが現れる。
陶芸家である店主が自宅で営んできた「手打ちそば そうま」。
ぼっち盛りの「ざあるそば」は
ほのぼのとした名称がよく似合う
柔らかめのやさしい食感だ。
やや熟成感を含んだ風味がひろがる。
天ざるそばの天ぷらは
ドーンと家庭的な豊かさ!
店内には近所の人らしい老夫婦が
まるで自宅にいるかのようにくつろいでいる。
お蕎麦はもう食べ終わったのに、ここが好きなようで
ぽつぽつと話をしている。
玄関には「ごめんくださーい。おじゃましまーす」の明るい声。
「はぁーい!」と店の人のこれまた明るい声。
こんな風に、近所の人に愛されてきた店。
嬉しげに席に着くお客さん。
店内は陶芸の作品や
「そば」と書かれた小学生の書道が飾られ(シビれた!!)
心温まる楽しい雰囲気。
大切な空間が、ここにあったのだ。
2010年12月30日
昨日のご報告☆
2010年12月29日
本日ですが、出演のお知らせ!
もう本日ですが、こんなおめでたいお席で
歌わせていただきます。
山口椿さんの『おとなの国語』出版記念パーティー。
大変ユニークな、一筋縄ではいかない芸術家の方々が集まります。
http://www.la-donna.jp/performance/305.html
私は15分ほど、数曲歌う予定です。
ご興味のある方は是非いらしてくださいませ〜
吉祥寺「手打そば処 ほさか」
吉祥寺は私にとって危険な街である。
ブランドのバッグより小さな雑貨が好き、
手作りも大好き、というタイプの人間には
誘惑が多すぎる街なのだ。
手芸用品など必要なものを買いに行っただけのはずなのに、
気がつくと手に紙袋をいくつも持っていたりする。
ああ恐ろしい。でもなんて楽しい。
お蕎麦屋さんも多いのでどんなにヘトヘトでも
低血糖ならぬ低血蕎麦で倒れることはまずないのだが
クリスマス前のこの日、
私は家族へのクリスマスプレゼント探しを頑張りすぎた。
あまりにもギリギリまで頑張ったためふと気づくと
本当に「ブッ倒れそうに」なっていた。
そんな時心強いのが、
何たって駅の真ん前、「手打そば処 ほさか」。
気づけば10年以上ぶりである。
これまたああ恐ろしい。光陰流水の如し。
駅前に出て店に近づくと懐かしい看板。
ギク。あの黄色の表示は、もしや・・
ゆ、柚子切りやっております・・・
全国の柚子切りを出すお蕎麦屋さん、
及び柚子切り愛好の皆様には申し訳ない限りだが
私と柚子切りは天敵?の関係にありまして・・
否柚子切り蕎麦そのものが悪いわけではない。
柚子切り蕎麦によって柚味に染まった釜湯が私の敵なのだ。
それはかなりの確率で他の蕎麦まで全て柚味に染めてしまうため
蕎麦の香りがほとんどわからなくなってしまう。
柚味でないせいろや田舎、更科を食べたければ
開店直後に入店するしかない。
師走の今日、「ほさか」は大繁盛であろうし
柚子釜湯、濃そうだな〜〜と半ば恐る恐る、
店がある地下に降りてみると
なつかしや「ほさか」!!
店構えも店内も、10年(以上)前と全く変わらぬ雰囲気に
一気に心がぐにゃぐにゃにゆるむ。とける。素晴らしい。
ハイ、柚子云々なんて私がイヤな奴でした。
もう今日ここに来られただけでしあわせ。
三色もり、せいろと田舎と白雪で、ください!
まずは「輪っか」がやってくる。
(正式名称は知らぬが)
この輪っかの上に次々運ばれてくる蕎麦たち。
せいろ
太打ち(田舎)
あれ?
全然柚子切り病じゃない。
隣の熟年夫婦も、その奥で一人忘年会を盛大に開催中の男性も
柚子切りを注文したことからも柚子切りの人気ぶりはうかがえるが
とりあえず「せいろ」と「田舎」からは
柚子の香りはしない。
蕎麦の香りや味わいも淡いのだが、「ほさか」らしい
おおらかで素朴な蕎麦である。
そして白雪。
おおー!
「ほさか」の白雪はさらに記憶にないほど久しぶりだが
これは相当良さそうだ。
うれしいなぁ〜♪と手繰り上げると
ゆずさんがイッパイ。
(>_<)
・・・そうか・・・・
やはり穢れなきものだけに・・・・
あー、この柚子の香りの下に、素晴らしいさらしなの香りが
絶対に潜んでいると思うんだけどなあ!!
しかしふと見やれば、
向こうの「一人忘年会」の男性の笑っちゃうほど楽しげな姿。
二人向い合って柚子切りをすする熟年夫婦。
田舎家のような印象の店内は
10年前と少しも変わらない。
変わらないでいてくれることのありがたさが
静かに私の胸を打った。
心ならずも感激してしまった私は、
会計時に店の人に話しかけてしまった。
「少しも変わらなくて嬉しかったです。10年以上ぶりで来たんですが」。
すると大学生のようなその店員の女性は
「そうなんですかあ〜、私はまだここへ来て3日目なんですぅ〜!」
といかにも若々しく天真爛漫に答えた。
私は、なんだか80歳のじいさんにでもなったような気持ちで暖簾をくぐり、
師走の吉祥寺の街へ出た。
お腹の中の蕎麦湯が温かった。
.
2010年12月27日
信濃町「手打そば さわや」
信濃町駅前の手打ち蕎麦屋。
古いビルの階段は容赦なく急で
うっかりヒールの高い靴なんて履いていってしまうと
落っこちそうで怖い。
しかし常連は慣れた風でひょいひょいと降りていく。
ドキ。
私の心を一瞬にして波立たせる「手打そば」の文字。
薄暗い通路に立ちつくし、しばし眺む。
ああああ、美しい。
「手打そば」「手打ち蕎麦」「手打蕎麦」「手打ちそば」
どの表記もそれぞれに、少しずつ違った光彩で私の心を染める。
「送り仮名なしの ”手打” に平仮名 ”そば” ・・・ああこれもやっぱり素晴らしい・・・」
店に入りもせず恍惚とする私は、端から見たら不気味かもしれない。
つるつるとすべらかな肌。
小麦粉と蕎麦粉の混じった甘い香りが
のんびりした気持ちにさせてくれる。
今日は偶然か、やや熟成感も感じられる濃い味わいだ。
地下の店ゆえ目立たぬはずだが
店はたいへん賑わっている。
次々入るオーダー、はなやかに蕎麦すする音、テーブル客のおしゃべり。
厨房で働く人のキビキビとした美しい動きを眺める人は誰もいない。
喧騒の中のやすらぎ。
古いビルの地下に、こんな時間が流れている。
古いビルの階段は容赦なく急で
うっかりヒールの高い靴なんて履いていってしまうと
落っこちそうで怖い。
しかし常連は慣れた風でひょいひょいと降りていく。
ドキ。
私の心を一瞬にして波立たせる「手打そば」の文字。
薄暗い通路に立ちつくし、しばし眺む。
ああああ、美しい。
「手打そば」「手打ち蕎麦」「手打蕎麦」「手打ちそば」
どの表記もそれぞれに、少しずつ違った光彩で私の心を染める。
「送り仮名なしの ”手打” に平仮名 ”そば” ・・・ああこれもやっぱり素晴らしい・・・」
店に入りもせず恍惚とする私は、端から見たら不気味かもしれない。
つるつるとすべらかな肌。
小麦粉と蕎麦粉の混じった甘い香りが
のんびりした気持ちにさせてくれる。
今日は偶然か、やや熟成感も感じられる濃い味わいだ。
地下の店ゆえ目立たぬはずだが
店はたいへん賑わっている。
次々入るオーダー、はなやかに蕎麦すする音、テーブル客のおしゃべり。
厨房で働く人のキビキビとした美しい動きを眺める人は誰もいない。
喧騒の中のやすらぎ。
古いビルの地下に、こんな時間が流れている。
2010年12月26日
今年のクリスマス☆
プレゼントの山とミミちゃん。
みんな早くこないかな〜
ターキー切り分けるのは男の仕事?
猟が趣味だった深雪パパの見事な包丁さばき!
これがジョンが作ってくれたキャセロール。
キャセロール自体は「鍋」という意味で、国や地方で
独特の鍋料理やオーブン料理を「キャセロール」と呼ぶみたい。
ジョンはテネシー出身だからテネシー風かな?
セロリが入ったグラタンみたいな感じ。おいしーい!
ターキーとキャセロールとマッシュポテトとソースを
最初は品よく盛ってみました。
2回もおかわりしたけど(≧∇≦)/
なんとクリスマス生まれの人が二人もいる素敵なファミリーです。
鎌倉「レ・ザンジュ」のケーキ。
Happy Birthday~~!
こんなにいっぱいプレゼントもらっちゃった・・
しかもうれしいものばっかり!
クリスマスって楽しいなあ〜
そして慌ただしい私は一人失礼させていただいて江ノ島を後にし
夜はジュリエッタ・マシーンのライブ@二子玉川ライラへ。
かっこよかったー!!
もうただただ、純粋にファンです。大好きです。
とにかく曲が素敵、演奏もso cool!
まだジュリエッタ・マシーンの音楽を聴いたことのない方には
是非とも一度は聴いていただきたい。
1/15ゲスト出演させていただくライブ@千歳烏山TUBOが本当に楽しみ。
ライラも小さくて素敵なバーでした。
.
2010年12月25日
American Christmas☆
クリスマスはおいしい日
何の信仰も持たぬ者が
メリークリスマスと嬉しがるのは憚られるが。
クリスマスはおいしい日。
健康とか家族とか、普段当たり前に思っていることに感謝する日。
そういうことにしている。
楽しいことは多い方がいいではないか。
蕎麦好きが誰もいない高遠実家のクリスマス。
蕎麦こそ食べぬがこの張り切りぶり。
そう、家族全員大変な食いしん坊なのだ。
母と三姉妹4人で作るChristmas dinner♪
私を熱狂的に喜ばせた、真ん中の姉調理による
「豚肉と豆板醤トマト」、食べた食べた!
三女(私)調理による「牡蠣と青梗菜のミルクスープ」。
この器、お気に入り!
ケーキは、田園調布のLes Creations des Patissier SHIBUIにて。
渋井シェフらしい大人クールなデザインのケーキかと思い見ずに予約し、
受け取りに行ったら予想外のかわゆいデザイン。
サンタさんのシュガードールに和みました〜
the gift from my eldest sis♪♪♪
2010年12月24日
神田「眠庵」(八種もりの会)
毎年恒例、天皇誕生日の祝日は
「クリスマスイブを台無しにする八種もりの会」。
皆で後先考えず飲み食い楽しみ、
頭のてっぺんまで蕎麦にまみれるこのしあわせ。
参加者12名。
それぞれ持ち寄った絶品おつまみや名酒を楽しんだ後に、
いよいよ8回転の蕎麦ラリースタート!
今回は5枚目までは全て新蕎麦という
「眠庵」にしては珍しい新蕎麦率の高さなので
そのあたりも注目されるところ。
お蕎麦は小鉢に盛られて迅速に配られ、
参加者が各自パカっと自分の笊の上に盛るスタイル。
故に写真に写った蕎麦の盛り方、散らし方が雑なのは私のせいなので
何卒ご容赦を。
1枚目は、私の大好きな栃木の新蕎麦。
1枚目の感動はいつも筆舌に尽くし難い。
いくら香りが濃厚ったってここまでやるか!
想像、期待の何倍もの濃厚さである。
そしてこれこれ、私の大好きな栃木のスモーキーなかぐわしさ。
しっとり、ぴたぴたとしたやさしい肌の感触もたまらない。
2枚目、山形は高畠の新蕎麦。品種はでわかおり。
1枚目の栃木と比べるとやさしい香り。
しかしふっくらとした豊かさを感じるかぐわしさである。
「眠庵」の蕎麦にしてははっきりとした輪郭があり
口中で感じる束の感触が心地よい。
すぐに次の蕎麦が来てしまうので見た目の美しさに恍惚とする時間は無いのだが
この蕎麦、もう少し眺めていたい美しさだった。
3枚目、北海道・鹿追の新蕎麦。品種は牡丹。
キャー(>_<)
何だか今年は北海道にシビレやすい私。
この鹿追も、素晴らしい!
写真ではたくましい印象の蕎麦に見えるが実際見たときは細切りで端整な印象だった。
それを手繰り上げると、うわーっと声を上げてしまうほどの力強くふんだんな香り。
輪郭のはっきりした感じや口中を流れる束の心地よさは
山形と似ているところが面白い。
今日の「眠庵」店主のムードは、この方向なのだろう。
4枚目、長野・松本の新蕎麦。品種は信濃1号。
もう何だか自分が狼少年のようで嫌になるが
これもまたものすごい香り高さである。
しかし噛みしめるとなかなか個性的な上品さのある蕎麦。
甘みや味わいは淡いのだが、そこにかえって浮かび上がってくるような
何とも言えない、品の良い粉の風味がある。
その不思議な美味しさを追いかけ、
ああ〜・・とうっとりしようとしたら、なくなった。
5枚目、富山・八尾の新蕎麦。在来種。
むーーーんっ
肥沃な大地を思わせる豊かな香り。
極上の米に通ずる甘さを含む、豊穣のよろこびの象徴のような香りだ。
見た目の太さはそれ程変わりないように見えたが
口に含むと実際の太さ以上の食べ応えのあるムッチリとした食感。
やや伸びるようなふんだんなコシの中から
驚くほど濃厚な美味しい蕎麦の味わいがいくらでもあふれてくる。
これが新蕎麦?信じられない。
6枚目、08年新潟の蕎麦。品種は津南在来。
おおっ
何やら迫力のある赤みを帯びた蕎麦。
かと思いきや、本日の蕎麦の中では唯一淡白に感じた。
ヤル気まんまんの濃厚キャラ続きのなかでは
癒し系とすら感じるおだやかな蕎麦だ。
7枚目、聞いただけで嬉しい、大好きな徳島。06年つるぎ町在来種。
これぞ、「眠庵」。
しっとりとしたざらつき。
どこまでもやさしく、しかし確かな存在感。
下からぐわっと支えてくれるようなたくましい香りと
口中いっぱいにひろがる濃厚な味わいと甘み。
私のメモには
「むわぁー! 美味しすぎて味わえない」
とある。意味不明だがよくある真実。
8枚目、06年福井。大野在来。
また狼少年登場である。
私が悪いのではない。
「これが最高だ!」と思わせた蕎麦の次に
すかさずその上をいく蕎麦を出してくる「眠庵」が罪である。
まあいつもここでトリを飾る福井の凄さはわかっていたことではあるが
それにしてもこの唯一無二の強烈な魅力には
大人しくノックアウトされるしかない。
箸先にたぐり上げ、全身全霊で心を鎮めこの蕎麦に対峙してみた。
なんとたくましき穀物の生命力。
香りの濃さは一つ前の徳島もそうだが、
この福井の香りはこちらにぶつかってくるかのようだ。
しっとりやさしいが、男気のやさしさ。
これをコシと呼んでいいのかためらうほどの
「やわらかいのにしっかりしたコシ」。
流石は、「眠庵」の手にかかった福井の蕎麦である。
2010年11月の「八種もりの会」
2010年9月の「八種もりの会」
2010年7月の「八種もりの会」
2010年4月の「八種もりの会」
2010年12月22日
小平「手打そば 吟」
2010年12月20日
豪徳寺「あめこや」
ドタバタだった先週、
ひときわ楽しみにしていたのは
「あめこや」での忘年会!
1/15のライブでもゲスト出演させていただく、
ジュリエッタ・マシーンのメンバーはじめ
各界で活躍される魅惑のメンバー7人が集結。
うち4人が「お蕎麦ならあめこや」という超のつく美味しいもの通の常連さん。3人が尾道出身。
ということで美味しいもの談義、尾道談義で盛り上がり楽しい楽しい。
私ははじめての「あめこや」おまかせコース。
蕎麦寿司から始まるたぁ、シビレるじゃありませんか。
あおさを入れて焼いただし巻き卵入り。
おつまみ三種盛り。金時草のおひたしは「あめこや」定番。
秋鮭とまこも茸のグラタン。
イワシのお刺身。おいしい!
そして、今回は常連さんもびっくりの初スタイル。
トレイを持った店主自ら、ひとつひとつ揚げたてを運んできてくれる天ぷら。
「天ぷら あめこや」臨時開店〜
ひとつひとつの食材が名前を聞いだけで
「オッ、おいしそう」と思わせる「あめこや」の天ぷら。
サトウエンドウ、安寧芋など、
写真は一部しか載せられなかったが、メヒカリが特においしかったー
これはコースにはなかったが
壁の張り紙を見て日本酒好き、美味しいもの好きの我がチームの
堪忍袋の緒がブチ切れた「生からすみ」。
こんなに美味しいものがあっちゃあ、と皆さん飲むこと飲むこと♪
えっ 私?
あはははー やっちゃいましたよニッカニカでしたよ!(^o^)
お蕎麦の前の最後は、牡蠣と野菜を昆布で仕立てたもの。
昆布って偉大だなーとのんびり感心していたら!
ジャーン!!
ハッ!
あなたはもしや、常陸秋そば様では?!
というのは村芝居で、
少し前からお蕎麦の登場が待ちきれなくなってきた私は
正面の壁の「常陸秋そば」の貼紙をジーッと眺め、
ついにキッチンからお蕎麦が運ばれくるのが見えるか見えないかの瞬間には
「ハーイッ お蕎麦です!!」
と叫んじゃったんですがね・・
この、茨城の常陸秋そば。
新蕎麦とはいえなぜこんなにも青いのでしょう。
近づけば、ときめくどころではない。
動揺するほどの、これ以上はないという濃厚なかぐわしさ。
むんっ と力強くふんだんな香りが鼻腔を染め続け、
しかしそれだけではない。
新蕎麦だというのに、なぜ味わいまでも、こんなに深いのだ。
処女作が「晩年」みたいな。
うおー ナニコレー あー
と変な声がテーブルをひとり歩く(私)。
2枚目は福井・大野在来。
なんと、ジュリエッタの江藤さんがニコニコと
「高遠さんコッチのほうが多いわ!」
と盛りが多かったご自分のとサッと取り替えてくださいました。
「エーそんなぁー、いいんですかあー!」
とつい口から正直がはみ出てしまった自分・・・
全然遠慮出来ず、ああ恥ずかしい。
江藤さんありがとうございますm(_ _)m
舌の根も乾かぬうちでお恥ずかしいが訂正申し上げる。
先程の常陸秋で
「なぜこんなにも青いのか」
と書いたが、こっちの方が青かった!
先程の常陸秋で
「動揺するほどの、これ以上はないという濃厚なかぐわしさ」
と書いたが、こっちの方が濃かった!
まったく、何がどうなるとこうなるんですか「あめこや」さん。
今回は10年以上ご無沙汰し
ずっとずっとお会いしたかった舞台女優の神野三鈴さん
(相変わらずカワユすぎや(>_<)小曽根真さんの奥様です)
が偶然眼の前のテーブルで輝いていて再会出来たという嬉しい大事件もあったし
本当に楽しい忘年会だったなー
私がゲスト出演させていただくジュリエッタ・マシーンのライブは
1/15、千歳烏山TUBO。
また告知しますので皆様是非いらしてくださいねー!
2010年10月の「あめこや」
2010年8月の「あめこや」
.
2010年12月19日
報告・名物かいぶつ祭!
私が仲間に入れていただいている「かいぶつ句会」の
年末恒例「名物かいぶつ祭」。
今年も大盛況でした〜
会場は吉祥寺「伊千兵衛 dining」。
この祭のためにデザイナーユニットの方々が
可愛い楽しいデコレーションをしてくれていました。
面白い空間でしょう?
今回は私、末森樹(すえもり・たつる)さんという
ギタリストの方と演奏したのですが
決まったのが直前だったのでクレジットが間に合わず
プログラムには
「高遠彩子 歌唱」。
歌唱だってよオイ!と本人も驚くドラマティックなこの響き。
なんだか翼でもつけて大空に羽ばたかねばならないような・・それは飛翔では。
いたずらで歌った「あめふりくまのこ」が喜んでもらえてうれしかったぁー
2010年12月18日
ピットイン初乱入!
昨日は、昼間お蕎麦屋さんのハシゴをし
夕方は最近ちょっと通っている恵比寿某所に。
そして夜は山下洋輔Solo&More@新宿ピットイン!!
もう、あまりのかっこよさに客席で座ったまま
心は武富士ぐらい踊っていました。
アンシュは相変わらずあまりにも最高(>_<)!
あんな方が地球上に棲息していることが
そしてそれを目撃できていることが奇跡のよう。
レオナルド・ダ・ヴィンチくらいしか比較出来る人は思いつかない。
しかも、アンコールのテキーラに飛び入りで入らせていただき
うっひゃー 楽しかったぁーーーー!!
終演後は世にも面白い、
ガウディーでベーゼンドルファーで碁盤な美味しい場所に移動し、
対局見物したりクレイジーセッションに突入したり
夜空に歌ったりしましたとさ。
そんな楽しい夢に足を取られながら、今日は吉祥寺で「かいぶつ祭り」。
初めてのパートナーと、とても素敵な曲を、数曲演奏します。
15時から、皆様、いらしてくださいね〜
.
夕方は最近ちょっと通っている恵比寿某所に。
そして夜は山下洋輔Solo&More@新宿ピットイン!!
もう、あまりのかっこよさに客席で座ったまま
心は武富士ぐらい踊っていました。
アンシュは相変わらずあまりにも最高(>_<)!
あんな方が地球上に棲息していることが
そしてそれを目撃できていることが奇跡のよう。
レオナルド・ダ・ヴィンチくらいしか比較出来る人は思いつかない。
しかも、アンコールのテキーラに飛び入りで入らせていただき
うっひゃー 楽しかったぁーーーー!!
終演後は世にも面白い、
ガウディーでベーゼンドルファーで碁盤な美味しい場所に移動し、
対局見物したりクレイジーセッションに突入したり
夜空に歌ったりしましたとさ。
そんな楽しい夢に足を取られながら、今日は吉祥寺で「かいぶつ祭り」。
初めてのパートナーと、とても素敵な曲を、数曲演奏します。
15時から、皆様、いらしてくださいね〜
.
2010年12月15日
祐天寺「蕎や 月心」
駅からはすこしばかり歩くが
是非とも歩いていただきたい。
その先に灯る小さなあかり。
「蕎や 月心(つきごころ)」。
小さな入口の奥に、私の大好きな時間がある。
拙著「蕎麦こい日記」編集打ち上げ蕎麦会の時もこのブログでご紹介したが
あの時は「是非、月心で!」と私が熱烈セレクトしたのだ。
蕎麦ネタ漬けの日々のせいで「蕎麦ボルテージ」が
最高潮に達した編集スタッフの皆様。
責任とって絶対に美味しいお店にお連れしなくては、
ということで選んだのだが、
あの時はたのしかったなー
皆さん口々に「こんなお店があるんですねええ!!」
と感激して下さり、もう私まで嬉しくって大ニヤニヤ。
あの日も大人気だった「辛味鳥」。
大好物なので、やっぱり今日も一番に頼んでしまう。
地鶏美桜鳥のささみと辛味大根を和えたものなのだが
ささみの生感といい味付けといい、実にすばらしい。
そこにおろしというのがありそうでない組み合わせだ。
さっぱりしているのに、
鮮魚の刺身をつまんでいるような「ご馳走」の存在感。
凝った料理より素材を味わうのが好きな私にとっては
最高に美味しい鶏肉の食べ方と言っても過言ではない。
今日はじめて頼んでみた
「鴨ハツの塩焼」。
オヤジな食べ物が好きではあるが美的な趣味は女子な私、
まずこの「見せ方」のセンスに嬉しくなる。
洗練の塩味、ガツンとおいしい大人のつまみ。
私が本物のオヤジならここまでで2合はいってしまうだろう。 うーん、月心さん、さすがです〜
そして、「牡蠣のみぞれ煮」。
外が寒かったせいもある。
お腹がすいていたせいもある。
ただ単に大根おろしと牡蠣が大好物ということもある。
理由はどうあれとにかく私は今回これがべらぼうに気に入った。
「全てのお蕎麦屋さんにこれがほしい!!」
と訴えながら(?)食べた、全身に染み渡る素材の旨み、あたたかさ。
吹雪だろうが氷点下だろうが、かたくなにせいろしか食べない大馬鹿者の私、
こんなに大好きなものづくしで体をあたためてもらえると、
かたじけなくて男泣きしそうである(文章はイメージです)。
こんなふうにすっきりと、季節の喜びを堪能させてくれるごちそうスープはなかなかない。
蕎麦。
「蕎や 月心」の蕎麦はそのネイミングからしてしびれる。
まずは「玄挽田舎」から。
細切りの黒い蕎麦は
ずっしりとした存在感を誇るかのように小山盛りでやって来た。
はじめの香りは、お、 意外なほど何も感じない。
しかし「いやちょっと待て、これは・・」と
猛犬(私)を制御するかのように努めてゆっくり食べると、
出てきました出てきました、すんばらしい香りが!!
野性味、と言っても荒々しさ生々しさにつながるものではなく
侘寂の野趣。
しっとりとした食感の中に時々ごく小さく、
しかし鋭い「ジャリッ」という粗挽きの粒を感じるのが快い。
「玄挽田舎」という美しい名前、この蕎麦には実に似合う。
そこへ「細挽せいろ」が運ばれてきた。
こんなことはあまりないのだがお店の人がこちらへ歩いてくる時から
私はその手にあるものにただならぬ何かを感じた。
(今思うと私スゴイ)
前に置かれて固まる私。
この神々しさ・・・
これは一体、何だ。
大袈裟でなく、伊勢神宮の本殿に対峙した時の感動に似ていた。
ある意味初めての感覚だった。
清らかで,おおらかで、超越した存在に見えた。
たぐりあげると、清澄なかぐわしさがひそやかに伝わり
食べてさらに驚く。
ひとくち。一瞬の静寂。
そこに、水面にひろがる水紋のように、パァーーッと
かろやかな味わいが口中にひろがった。
蕎麦の味わいの美しいところだけをふわっとすくいとったかのような。
お、お、おいしい・・・
何なのだ、この蕎麦は・・
おいしすぎて目が全然開かない私にお店の人が
「これ、いいでしょう?茨城なんですよ」
と教えてくれる。
あー、そうだったのか!
今年もあちこちで食べているが、今年も赤城、やっぱりいいなあー
農家の人が頑張ったんだなあー
ありがたいなあー
そしてその蕎麦を選び、そこにただ水を加え、あとは腕だけで
「伊勢神宮の本殿」をつくっちゃった「月心」さんは私には魔法使いだ。
いつも、思うのだ。
名店の打ち場は、鶴の機織部屋。
魔法の生まれる場所である。
.
2010年12月12日
三鷹市野崎「吉田屋 玄庵」
それは、美しき漣。
驚くほどの極細でありながら、こんなにも、
ドキドキするような粗挽きの穀物感のある肌。
見つめているだけで、私の脳内は何かおかしなことになってくる。
恍惚、というのが一番近いが、どうしていいかわからなくなってくる。
吸い込まれたい。いや吸い込みたい。
たぐりあげると、あああああ、麻痺した脳をゆさぶるかのような
かぐわしい香りをふんだんにまとっている。
極細ゆえちょっとショワショワしたような感触もあるのだが、
歯ざわりに頼りなさは全くなく、むしろ凛とした、端整な印象。
穀物の香ばしさと地味深い味わいがたまらない。
久々に来た「吉田屋 玄庵」、なんだか以前よりすごいことになってるぞ!
しかし今頃そんなこと言ってる私はどうやら遅れているらしい。
なんたって私が入店した時、店内は「満員」。
しかも皆さん非常に楽しそうで、のんびりゆっくり、
おつまみから楽しんでいる人もいる。
決して交通の便がよいとは言えない店だが、
美味しいものを食べさせてくれる店には人が集まってしまうのだ。
「おろし浅草」という変わったネーミングの蕎麦は
おろしだけじゃあ ありません。
おろし、ネギ、鰹節、海苔、そこに天かすまで入ってしまい、
これが美味しくないわけがないという反則技の危険な美味しさ。
あー!お腹が2つあったらいいのに!!
それにしても、隣のご夫婦が食べていた「玉子焼き」。
玉子焼きに興味が薄い私も釘付けになるほど美味しそうだったなあ〜
2010年12月11日
柴又「日曜庵」
先週某日、東京に大風が吹いた日。
風が去った後の掃き清めたような爽やかな青空に
帝釈天の「瑞龍松」の映えること、勇ましいこと!
名木や盆栽、襖絵など、丹精した松の姿に滅法弱い私は
珍しくも「蕎麦屋さんの暖簾をくぐる前からメロメロ」。
食べないうちから、お蕎麦の香りをかいだだけでメロメロってのは
日常茶飯事ですがね・・
ああ瑞龍松さま、惚れてしまうわぁー
小さな駅も、かわいらしい参道も、
柴又、いいとこだあー
しかも金・土・日は、「日曜庵」がある!
帝釈天の境内から徒歩1分。
路地に入ったときからもう、店主の演出は始まっている。
南ヨーロッパ風の漆喰の壁に
可愛らしい重厚な扉。
そこにはためくキャンバス地のストライプの暖簾が
なんとも「日曜庵」らしい洒落ぶりだ。
建物も、空間も、料理の一つ一つも。
次々と繰り出される店主の美意識、演出の心憎さ。
お酒は直径20cmはありそうな、広々と大きな片口で。
黒い水面は夜の湖。
川越のおぼろ豆腐「なごり雪」も、
「日曜庵」の演出でさらに美味しい。
今日のは特に、スーっと羽根のような切り口に見惚れるばかり。
今日の蕎麦の実。
何を持ってきてくれても、その時選ばれた皿、分量に
この店のセンスが出てしまう。
若草色の粒たち。
「そばがき」。
これがなんとも素晴らしい!
ぽってりと箸先にとり寄せた香りのかぐわしさ。
「おいしいぃぃぃ〜〜〜〜!」
思わず声に出てしまう。
口に含むと、これは夢?
私は雲の上の人?
類を見ない極上エアリー。
ふわっふわっの空気のような天使にひょいと抱き上げられたかのような。
軽いのに、素朴な味わいはしっかり。
ああーおいしいーーー
「そばがきはこれでどうぞ」と出してくれた
紫蘇オイルと醤油をブレンドしたもの。
すみません、相変わらず全然言う事きかない不良なので
ウホウホ夢中で食べてたらつけないうちになくなっちゃいました・・・
でもまたまたこの演出ぶり。
素焼き風の皿のせいで、
オイルと醤油が映す天窓の光にも心打たれてしまった。
さて、待ってました御本尊様。
ああ、うれしい。今日はいい日だ。
「大風に清められた青空」、「天に登りだしそうな瑞龍松」、
そして日曜庵の「せいろ」!!
おなじみの赤いお弁当箱のような蓋付きのせいろ。
どきどき開けると出会えるこの瞬間がたまらない。
素朴な色ムラの美しさに感激しつつ口に含むと
素朴な穀物感が口の中に静かに広がる。
なんと貴い蕎麦だろう。
「粗挽きせいろ」は白木のせいろで。
この白木のせいろは四隅に銀細工の縁があるのがなんともお洒落。
(こういう銀細工、大変に私好みです)
そして実は銀細工を愛でる心の余裕が出来たのはずっと後のことで、
この魅惑の肌はどうしたらいいのでしょう。
危険なほど美味しそう。ああ早く食べたいでも見つめていたい!
待ちきれず口に含むと、ザラザラした舌触りがたまらなく心地よく、
そっと噛みしめるとふっくらとした蕎麦の甘味が溢れ出す。
そして、「田舎せいろ」。
圧巻の野趣。悩殺の洗煉。
高台つきの美しい笊の上の小山盛り。
味も然ることながら、ひとつひとつの世界の完璧な演出に
私はいちいちノックアウトされてしまう。
無骨さの全くない、端整な野性味。
むわあーっと力強い香りと濃い味わいを追いかけて
あっという間に食べてしまい、たった今完璧な姿で提示された世界は
私の眼の前から跡形もなく消えてしまった。
蕎麦湯と、食後の梅のデザート。
デザート皿の金継ぎは店主の手によるものだが
私は最初山の絵のデザインかと思ってしまったほど、
この皿と梅とに合っている。
全く、「日曜庵」の美意識の高さときたら。
店主は繰り返し言う。
「全部自分の好きなようにできる。こんな面白い商売はない」
こんなにもはっきりと素直に、自分の仕事への純粋な愛着を語る人を
私は久しぶりに見た。
テレビ等のCMカメラマンだった店主。
今は誰の注文にも左右されず、
自分の感性の赴くまま、自分の好きなものだけを追い求め
次々と形にしているのだ。
その一皿一皿は、
それぞれがアングルと状況を計算し尽くされて撮られた映画の1シーン。
眼の前に置かれた瞬間にはじまり
食べてしまうまでの儚い物語なのだ。
2010年12月10日
綱島「石挽きそば 蕎真」
前回も書いたが、「せいろ以外のもうひとつの蕎麦」は
どこの店でも「せいろ」より売り切れやすい。
「田舎」や「粗挽き」、「手挽き」といった蕎麦だ。
「せいろはたっぷり打っておくから
あっちはまあなくなったらなくなったで、せいろ食べてね」
ということなのだろう。
限定ともなれば尚更なくなるのは早い。
それはよくわかる。
わかるのだが、つらすぎる。
しかし「なくてよかったかも、かえって得した気分!」ということもたまにはある。
半年ぶりの「石挽きそば 蕎真」。
東横線「綱島」駅から綱島街道を歩き、鶴見川を渡った先にある。
車通りの激しい綱島街道沿い、店らしい店もない付近だが、
店に入ると外の喧騒が嘘のように静かな時間が流れている。
自然光と複数の照明が織りなす陰影。
さあここではやっぱりいつもの「せいろそば」と「手挽きそば」・・
と思ったらなんと!
「本日手挽き売り切れ」!!
( °o°)
ガーーーーーーン
ま、まあ10食限定っていうのはわかっていた話だしね・・・
と、何とか「大人な自分」を自分の中に見出そうとするが情けない程見つからない。
こんな時、
「売り切れ?アラ〜残念、ではこっちの下さい」
と即座ににこにこと言っている人を見かけるが
ああいう方々の心の内は
どうなっているのだろうか。
やはり私のように堪え難きを堪え、
断腸の思いを乗り越えての演技なのだろうか。
いや、私だってお蕎麦屋さん以外では
この半分も悲しくない。
とにかく落ち込んでいても仕方ないしこれも何かのご縁。
今日は「せいろそば」と
食べたことなかった「さらしなそば(10食限定)」を
頼んでみよう。
その前に。
自家製の「刺身こんにゃく」。
前日に、とある画家の方からコンニャク作りの楽しさ美味しさについて話を聞いていたので
余計美味しく感じてしまう。
きめの粗いふるふる感がたまらない。
「おろしきのこ」
おろし好き、きのこ好きの私は条件反射的に頼んでしまう。
そして、「せいろそば」。
ぱっと見ていかにも美味しそう。
目を凝らせば、あああ
ほんのりとした白い影を無数に浮かべるこの美しき肌。
素朴な凹凸のある肌は窓からの光を浴びて不規則な透明感を呈している。
まず箸先で香りを寄せ「おいしいー!」。
食べもせぬうちから小さく叫ぶ。
うっとりせずにおられぬ、上質な蕎麦の、素朴なかぐわしさ。
口に含むと、やさしい風情の見た目よりも端正さを感じる舌触り,歯ざわり。
ああ、おいしい・・・来てよかった。
「手挽きそばが売り切れで残念だけど・・」という
実は大変失礼な気持ちでお迎えした「さらしなそば」。
うひゃ
これは。
どうも、ごめんなさい。
あなた、おいしいですね。
きっと、おいしいですね。
だってこんなに、こんなに、これは、ぜったい・・
ウワ〜〜〜〜
何これ〜〜〜〜〜
「石挽きそば 蕎真」の「さらしなそば」ときたら。
今まで食べなかった私が馬鹿でした。
箸先で寄せた、馥郁たる香り。
こんなにも澄んで清らかでありながら、ふくよかな豊かさも同時に感じる。
口に含むと単純なツルツルではない、端整な輪郭とすべらかな肌。
本当においしいさらしなそばは、
こんなふうに香りも味も舌触りも清らかに深いのだ。
あー、今日はすっかり得した気分!
でも困ったぞ・・・
次回は「せいろそば」「手挽きそば」「さらしなそば」
全部食べたくなっちゃって、しかも手挽きもさらしなも限定だから
心配事が余計増えるではないか・・・
次回は是非、開店直後で!
.
2010年12月08日
京成立石「蕎麦処 むらこし」
京成線「京成立石」駅から奥戸街道を歩き
本奥戸橋を渡ったところに「蕎麦処 むらこし」はある。
たまたまお客さんのいない時間に行ったため
店内はシンと静か。
テーブルにはスポーツ新聞が置かれている。
白いエプロンが甲斐甲斐しい、感じの良い女性に
「せいろ」と「田舎」をお願いすると
年配の店主が出てきて
「田舎は時間がかかりますがよろしいでしょうか・・・」
と申し訳なさそうに言ってくれる。
ん?まさか、今から打ってくれるのだろうか?
たしかにメニューをよく見ると
「ご注文を承って打ち上げる本格そば
お時間少々ご了承ください」
とある。
待っていますからいいですよと答えると
店主は早速打ち場に入り、
落ち着いた動作で蕎麦を打ち始める。
迅速だが、急ぐ風でもなく、
彼が毎日そうしているように、確実な動作で打っている。
気がつくと私は、うっとりとその職人に見惚れていた。
その人のさっぱりと整った風貌が、
いかにも江戸下町の職人らしく感じられたせいもある。
断りも無く写真を掲載するのはいけないことだが
私がシビレていたイメージを、ほんの小さく。
静かな店内にコトコトと聞こえてくる仕事の音。
貴い時間だった。
「おまたせいたしましたー」
長く待たせて申し訳ないという心のこもった声で
女性が持ってきてくれた「せいろ」。
いやいや、今ないものを注文したのはこちらですから・・
とこちらが恐縮したくなってくるほどだ。
というより、「注文を受けてから打つ」ということを当たり前のようにしている
この店が凄すぎる。
「田舎終わりました」「粗挽き売り切れです」という
痛恨ズタズタのショックを週に一度は受けている私には
おとぎの国のような店である。
甘い粉の香りをふわりとまとい、
ふっくらとしたコシを持つ「せいろ」。
筑波山の麓で栽培された常陸秋そば。
噛みしめるとほくほくとした蕎麦の味わいがやさしく広がる。
そして、たった今打ち上がった「田舎そば」。
もう何だかありがたくってどうしましょう。
黒めの肌に小さなホシをまばらに浮かべた
見るからにやさしい風情の田舎。
口に含むとふわんとしたコシが受け止めてくれ
ほのかに野趣の感じられる薫りが広がる。
この、まごころのこもった「せいろ」と「田舎そば」がですよ。
500円。と600円。
もう、本奥戸橋のたもとまでダッシュして泣いてもいいですか。
「蕎麦処 むらこし」。
本奥戸橋東詰からすぐである。
2010年12月06日
日本橋小舟町「仁行」
「Dancyu」 蕎麦特集号発売日の今日。
掲載店の「仁行」さんはものすごく混んでしまうのでは、
とおっかなびっくり開店時刻11:30に訪れると・・・
よかったー
まだみんな「今買って読んでいるところ」なのかも(^o^)
「ハレの日の蕎麦」といった趣のメニューをじっくり眺めた挙句
今日はなんと贅沢にも、おまかせで。
柚子の風味の蕎麦味噌。
白菜漬。
素敵な器に惚れ惚れ。
豚と京芋、青菜の煮物。
だし巻き。
このだし巻きが、とにかく素晴らしい。
卵焼きの類を普段すすんで食べない私だが
これは素晴らしくおいしい。
ふるふる震えるような柔らかさはないのに
口に含むとフワーッとだし汁が弾けるかのようなジューシーさ。
その出汁がまた甘ったるくなく(甘辛が多い江戸においてこれは奇跡)
すっきりと、上質な味わい。
これだけのだし巻き、東京では久々にお目にかかった。
まぐろの鍬焼き。
そして、待ちに待った「せいろ」。
やっと会えたぁー
細い。
わかっていたことではあるが、あらためて眺めて、細い。
そして箸先の香りを寄せ、口に含んで新鮮に驚く。
清澄なかぐわしさ、しなやかな歯ざわり。
これだけ細いのにそれを全く意識させない凛とした存在感に
何か超越した迫力のようなものを感じずにいられない。
爆発的な香りがあるわけでもない、じわじわ染み出すことさらなあまみがあるでもない。
一歩控えた、澄んだ、凛とした上質。
ああおいしい・・
おいしいよう・・・しあわせだよう・・
うー
ふたつめのお蕎麦は「胡麻汁」と「おろし」から
「おろし」を選択。
おろしはぶっかけスタイル。
他のお客さんにはおろしが人気の様子。
デザートは、洋梨のゼリー。
鎌倉彫の朱に青い硝子器が美しい。
「三越前」「人形町」「小伝馬町」と
どの駅も近いが、このあたりの地名の香りにうっとりしてしまう私は
敢えて町名で表記した。
日本橋小舟町「仁行(にぎょう)」。
私には高下駄の大男が目に浮かぶ、いい響きだ。
2010年12月04日
神奈川・藤沢本町「手打ち蕎麦 ひら井」
今日は、生粋の湘南育ちのみゆきちゃんと
湘南を心の故郷とする私とでのんびりランチ
湘南はお蕎麦屋さんがとても多いのでありがたい。
「石臼挽自家製粉 手打ち蕎麦 ひら井」は
小田急線「藤沢」駅の隣駅である「藤沢本町」駅からもすぐ。
商店街・・と呼ぶにはあまりにのんびりした、
駅から一番わかりやすい道に面している。
新しく美しい店内、
研ぎ澄まされた和の意匠。
世界に誇りたいような眺めである。
インテリアばかりでなく
蕎麦が運ばれてきて更にこの店の美意識の高さに驚かされる。
木や笊で出来た食器、水でこねて茹でただけの穀物。
いつもは当たり前のことながら
そのミニマリズムに胸打たれ、つい猪口等を退かし
真上から、蕎麦だけを、心ゆくまで眺む。
大切に作り上げられ、今日このテーブルで出会うことできた
「限定手挽き田舎そば」。
見入ればさらに、
その肌の美しさに引き込まれずにはいられない。
昼下がりの日差しの下、
そのみずみずしき透明感に息をのむ。
大小のホシをゆたかに浮かべた肌はさながら土佐和紙のような趣。
ああああ ずっと眺めていたいけど
早く食べたくて待ちきれない。
上品な甘い香りをまとった蕎麦は
見た目の通りのつるりとした舌触り。
噛みしめると優しいコシが受け止めてくれる。
なんと贅沢な午後だろう。
こちらは、「太打ち田舎そば」。
黒々とした肌に無数のホシ。
コシのしっかりした太打ちだが
歯ざわりはつるりとすべらかなので食べやすい。
味わいは淡いのだが、
ほわんと甘い香りは「限定手挽き田舎そば」にも通ずる上品さがある。
のどかな街の、静かな時間。
帰りは駅前のスーパーを覗いてみよう。
名前を聞いただけでのけぞるほど懐かしい、
「やまかストア」があるんだもの!
2010年12月01日
三軒茶屋「玄そば 東風」
今日は急に思いついて
三軒茶屋「玄そば 東風」へ。
外観も店内も、洗煉された美しいデザインのこの店。
しかし席に通されてみると
あたたかく家庭的な居心地の良さにいつも心が解ける。
昼間の明るい雰囲気も好きだが
やわらかい照明のもと人々が楽しげに憩う夜の時間もとてもいい。
カウンターの一人客である私も
そこにゆったりと身を投げる。
しかし一人のつらいところは
「あまり感激してはおかしい」
というところである。
そんなこと言ったって、こんな蕎麦を出されては・・・
「せいろ蕎麦」
高台付きの工芸品のような笊に盛られた見事な眺め。
まずその美しさに胸打たれ、
手繰りあげて香りを寄せた刹那の衝撃。
ひんやりとした冷気に乗って、
たまらなくかぐわしい香りが私の脳を染める。
「あー!」
とここで声を出してはいけない。
無言で上半身をぴょんぴょんさせてもいけない(よくやるが)。
私はカウンターの一人客である。
しかもまだ食べていない。
口に含むとこれまた素晴らしい。
舌触りに端整な輪郭を感じさせつつ
噛み締めた食感はどんな姿なのかもっと追いかけたくなるようなやさしさ。
しかし追いかけるうち穀物の滋味深き味わいとたまらぬ香ばしさが口中に広がり
もう何がどうだかわからなくなってくる。
「おいしかったですー」
「またどうぞ」
すっかりしあわせ蕎麦オーラをまとい店を出れば
「紅白歌合戦」から「ゆく年くる年」に投げ出されたかのような夜道。
この灯りの中に、あの時間が流れていたのだ。