2010年08月29日
9/12 ライブのお知らせ☆
伝説のベーシストでありウード奏者でもある國仲勝男さんと
チェロと笛を自在に操る星 衛さんのデュオライブに
ゲスト出演させていただくことになりました。
日時: 9/12(日) 18:30open 19:30startt
場所: 西荻窪 サンジャック(地図)
出演: 國仲勝男+星 衛 デュオ
國仲勝男 gui. 星 衛 vc. ゲスト 高遠彩子 vo.
charge: 2,500円+1drink order
完全即興ライブ、私もとても楽しみです。
一緒に楽しい時間を過ごしましょう〜〜!
2010年08月27日
埼玉・深谷「遊歩」
高崎線「深谷」駅から徒歩20分程。
たどり着いてみると、店は古いボウリング場の横に
奥まってひっそりと佇んでいる。

竹林の葉擦れの音も清々しい、「遊歩」。
ちょうどお昼時だったので入店時はなんと満員。
奥の隠れ座敷(?)までいっぱいだったが
ほどなくしてゆっくりとした昼下がりに。
窓からの青々とした眺めはさながら探幽の軸の如き鮮やかさ。


まずは「そばがき」。
八ヶ岳山麓産の信濃一号を手挽きした蕎麦粉、
なんて聞いただけで胸ときめいてニヤニヤ待ちきれない思いだったが
むむっ。
やはりやはり、香りが線香花火のように飛んできそうな
そばがきさんがやってきましたよ・・・

ぽってりとまとまりつつも、
ドロッと感の感じられる眺め。
そして何より、その極粗挽きのつぶつぶがたまらない。
箸先にとると、
ふわふわ感よりモチモチ感より
ゆるやかなドロっと感のある個性的なそばがき。
ドロッとしながらも、箸でちぎった後は
生クリームを泡立てている時のようにツノを立て、
そっと近づくとフレッシュな蕎麦の香りが華やかに漂ってくる。
うっとりと口に含めば、
口中をゆっくりと流れるような極粗挽きの蕎麦粉が心地いい。


一枚めのお蕎麦、「せいろ」は
先ほどの「そばがき」同様八ヶ岳山麓産、十割蕎麦である。
密度の濃い滑らかな肌。
箸先で寄せた香りは淡いのだが
太さの割に重量感のある蕎麦を噛みしめるうち
じわじわと下から支えるように、実に美しい香りが満ちてくる。
そしていよいよ。
十食限定、手挽きの「粗挽き」の登場である。

この、震える輪郭線。
手挽き粗挽きならではの不規則な曲線は眺めるに飽きないものである。
手繰り上げると
「!!!」
同じ八ヶ岳山麓産でありながら、
何故弾き方が違うだけでこうも美しく香るのだろう。
たぐり上げ、寄せた香りもさることながら
口に含んだ瞬間、かぐわしいそよ風につつまれたような
やわらかな感激を覚える。
極粗挽きの不定形な肌が口中を心地よく撫で
噛みしめるとしっかりとしたコシの内側からもまた香りがひそやかにこぼれる。
香り爆発,というのではないのだが
その香りの美しさに酔うひととき。
「今日は太さがちょっとマチマチになっちゃって・・」
なんて他のお客さん(こちらのご意見番のようです)に謙遜する店主。
いえいえいえ、
私はこんなにしあわせにしていただきましたよー♪
食後には、「遊歩オリジナルジェラート」もおすすめ。
なんと「遊歩」自慢の「手挽き粗挽き蕎麦粉」「返し」「蕎麦焼酎」が入っているという
無添加ジェラート。
これがね・・・さっぱりして、
ちょっと塩気のある深い味わい、美味しいですよ〜
しかもお蕎麦入っちゃってますから
猫にマタタビ、高遠に蕎麦。
東京からはちょいと距離があるが、
その距離がまた楽しい小旅行。
手挽きゆえ,次回はまた全く違うお蕎麦に出会えるだろう。

2010年08月23日
ありがとうございました!
「山下洋輔 檜原村フジの森 JAZZ CONCERT」
おかげさまで、無事終わりました!
もうもうもう、言葉では言い尽くせないほど
素晴らしい体験でした。
全て、スタッフの皆様の手作りのようなイベント。
何から何まで、人の温もりを感じるもので、
ご縁に感謝せずにはいられませんでした。
屋根のないところで歌うのが好きで、
そして森が大好きな私には夢のような会場で・・・

本番の様子は、いらしてくださったお客様と森のほうが
私よりよく知っているかと。
私は「別のもの」になっちゃっていたので・・
ハイ、山下庵主には「ケダモノ」の称号を頂きました。万歳!
そして、当日のブログで
「聞き捨てならないサプライズ情報」と書いた事件は、
ジャーン、なんと!

手打ち蕎麦ーー!!
なんと私がくると言うので、蕎麦打ち名人が森に参上し
二八と十割、二種類も打ってくれていたのです。

二八は、みずみずしく滑らかな肌に
やわらかい香りをまとい、二八らしい弾むコシ。
表面が滑らかなので皆のつゆにつけてすする音の
勢いのいいこと,売れること。
ご馳走もいっぱいあったけどやはりお蕎麦は大人気!
(私までうれしい♪ お蕎麦が愛されているとしあわせな気分)

そして、十割。
箸先にたぐるとふわあっとさわやかに蕎麦の芳しい香りが伝わり、
うわぁー美味しいです〜〜!
福井と北米産のブレンドということでしたが、
蕎麦打ち名人は、もしやブレンド名人?
最初爽やかだった香りは時間をおくとたまらぬ濃厚さとなり、
いいですか、別にダジャレじゃありませんよ、
檜原村だけになんだかちょっと檜・・まではいかなくても
少し生木のような良い香りに。
ふわりと軽さのある歯ざわりも心地よく、
ああ〜コンサートがあんっなに、あんっっなに楽しくて、
打ち上げも即興演奏に突入したりこんなに楽しくて、
口の中が美味しいお蕎麦で、
こんなにしあわせでいんだろうか。
なによりあのケダモノ時間が
脳の奥を消えない色で染めている。
我らがアンシュ、そして共演のみなさま、
スタッフの皆様、そして山の神様、
ありがとうございました!!
2010年08月21日
森リハ
2010年08月20日
立川「無庵」(同じ釜の蕎)
「山下洋輔 檜原村フジの森 JAZZ CONCERT」
いよいよ、明日でございます!
いやー、楽しみです。
屋根のないところ、できれば森があるところで
歌うのが一番好きなわたしには
これ以上ないくらい楽しみなステージです。
昨日はリハの後、
我らがアンシュのお心遣い&名采配で
皆で立川「無庵」へ・・・
こんなに素敵なメンバー、
こんな楽しいシチュエイションでの無庵は新鮮で感激もひとしお。



無庵らしい洗練の演出に酔わされつつ・・・

リハで歌いまくって血中蕎麦粉度砂漠レベルだった私。
最初の蕎麦粉である「そばがき」を舌に載せた瞬間
「これは絶対におかしい!」
と確信。
麻薬とか中毒とかとしかいいようのない、
口に含んだ刹那目が開かなくなるほどの恍惚の芳しさ、
二の腕がシビレるような体への染み渡り方・・・
もちろんおかしいのは蕎麦でなく私なのだが。
そしてそして待ちに待ったお蕎麦・・・!

黒っぽい肌に大きめのホシをふんだんにはらんだ、
本日の「挽きぐるみ」。
不規則に揺れる輪郭線に見入りたどれば
思わず息をこらさずにはいられない。
大切に育まれ作られたものだけが持つ、素朴な気品。
白い陽炎のようなホシをうっすらと浮かべる
この肌の透明感、ツヤは熟成かな?と思ったらまさに。
ムワァ〜と重低音な熟成の香りである。
口に含むと、大小無数のホシの夢。
ざらついた肌は心地よく口内を撫で、
噛みしめると儚く途切れ消えてしまう。
さながら、素朴で壊れやすい素焼きの名碗のような。
コースのお蕎麦は1種類だったのだが
私の慕情?気迫?が伝わってしまったのか
もう1枚、生粉打ちに出会えたー!
これまたなんと気高い眺めだろう。
繊細な輪郭線、軽みを持ったその重なり。
蕎麦と蕎麦の間に繊細にはらむ空気にすらときめいてしまう。

しかし美しいのは姿ばかりではなかった。
その芳しい、クリーミーとでも言ってしまいほどまろやかな
蕎麦という穀物の新鮮な香り。
何よりその歯ざわりが、にくい。
舌触りはどこまでも控えめなやさしさを持ちながら
噛みしめる最後の最後で ふっ、 と噛み切らせないコシに驚かされる。
柔和な顔の武術の達人に出会ったかのような
しかし凄みよりもその柔和さに和まされる心憎さ。
皆で「同じ釜の蕎麦を食い」まして、
楽しい時間、美味しいもので明日のコンサートへの栄養注入完了ー!
実はこの後はこんな面白い展開にもなったのだが・・
(笑った笑った!)

@めし おさけ くぼかた(^o^)♪
ではでは、明日、檜原村でお会いしましょう!
2010年08月17日
綱島「手打ち蕎麦清風庵 富嶽」
東横線「綱島」駅から徒歩20分ほどの住宅街。
この角を曲がれば店があるはずなのだが・・
おっ?

まるっきり普通の住宅過ぎてどうしましょう。
物干し台に揺れる洗濯物が平和過ぎます。
ほんとに入っていいのかな?と迷うほどだが、
暖簾は下りている。
ヨシ、と入ると・・・

よかったー
入ってよさそうだ。
住宅街のこんな目立たないお店ながら、
お蕎麦の種類は意外な程多い。
「せいろ」「手挽きせいろ」本日は変わりで「抹茶せいろ」、
「手打ちひやむぎ」「うどん」までやっている。
そして読み応えがあるのはおつまみメニューである。
「じゃこ天」「板わさ」「山芋切り株」・・・
ふんふん、おいしそう。
「えび塩焼き」「どじょうの唐揚げ」
すごいね。
「穴子の柳川風鍋」「牛すき焼き風鍋」
なんともゴージャス。
「かえるの唐揚げ」
えっ?
「混雑時にはお断りする場合がございます」。
そうか・・
そうなのか・・・
何だかわからないがここの厨房には
かえるくんがスタンバイしているらしい。
東南アジア料理や中国料理ではおなじみかもしれないが
お蕎麦屋さんで思いがけずピョン吉に出会い
軽いショックを受ける私はまだまだである。
軽いショックの次にはヘビーなショックに見舞われた。
「手挽き売り切れ」・・・!
がーーーーーーーーーーーーん・・・
みっともないほど落ち込むが
それでは「せいろ」さんに失礼だ。
気を取り直して、「せいろ」一枚、くださーい!


つやつやとおおらかな印象な蕎麦が
気持ちよさそうにざるの上に重なってやってきた。
たぐりあげるとやさしい粉の香り。
口に含むと少し生々しいような味わいの中に
甘さが広がってくる。
他にお客さんがいない店内は静かで、
厨房でコトコトと作業している音、
住宅街を飛び回る鳥の声だけが聞こえてくる。
もう蕎麦が出ているのに、
他にお客さんはいないのに
コトコトは何の音かと思っていたら、
最後にこんなサービスが。

小さい頃、母と作るのが夢のように楽しかった白玉だんご。
ふたつくっついて小さな器に並んで、
あらためて、白玉だんごってなんて可愛らしいのだろう。
その都度作ってくれているらしい、
小さな、懐かしい、うれしいもてなし。
さあまた、のんびり歩いて帰ろーっと。
2010年08月16日
コンサート出演のお知らせ☆
高遠彩子HPの方でも告知しておりますが
「山下洋輔 檜原村フジの森 JAZZ CONCERT」
いよいよ今週末です!
8/21(土) 18:00~20:00(open18:00〜)
こっそりひょっこり、私も出演致します。
檜原村、ちょっと遠いですが
そのぶん空気も星も綺麗です。
野外ステージなのできっと満喫出来ると思います。
夏の森で、一緒に楽しい時間を過ごしましょう!
チケットはまだ買えますので
詳細はこちらを御覧下さいね〜
ayako takato web/topics
2010年08月15日
浦和「庵 浮雨(un peu)」
埼玉県浦和市「浦和」駅。
都心からは遠いイメージもあるかもしれないが
高崎線に乗ってしまえば上野からわずか18分である。
その浦和駅。
西口の駅前のデパート裏に
戦後の香りをすら残す「ナカギンザ通り」という
古いアーケード商店街がある。
昼なお暗い通路は夜ともなればさらにひっそり。
ぽつりぽつりと灯りをともす居酒屋などは
古き良き日本映画を思わせる情景だ。
その中で、新店ながらユニークなセンスと実力で
一際輝くお店がある。
「庵 浮雨(un peu)」。
あんぷう、お蕎麦屋さんである。
フレンチ出身の店主、店名の由来はフランス語で
塩少々、胡椒少々,というときの「少々」。
それに「浮くくらいゆっくりした雨」という漢字を当てたという辺りからも
この店主の自由な感性が伺えるではないか。
(学生時代「あやぷー」と呼ばれていた私には
個人的に親しみを感じてしまう名前でもあるのだ)
うら寂しいアーケードに掲げられた「un peu」の看板と和のしつらい。
他にはない、エスプリに富んだ外観は
まさにこの店そのものを表している。

神田「眠庵」で修行した店主だけに蕎麦はもちろん良いのだが
まずこの店の魅力としてあげられるのは
お酒好きにはたまらない日本酒の品揃え。
そしてそれをガッチリ支える魅力的なおつまみの数々である。
アルコールが余り強くない私ですら
これは飲まなきゃ始まらないでしょ!と思うほどの
「求酒力」を持った美味しいおつまみ。
それに合わせて選りすぐられ、しかも種類も豊富な日本酒が
非常にリーズナブルに楽しめてしまうのだから
これは行かなきゃソンソンの隠れ名店なのだ。
さて今日は・・
「鳥ハツとブロッコリーのガーリックマリネ」
「地鶏のササミと三つ葉の鳥わさ」
「小松菜とトマトのお浸し」
などなども大変気になるのだが
ここはやはり、どうしても
「眠庵」仕込みの「自家製豆腐」なのだ!

「庵 浮雨」の豆腐は「眠庵」よりさらに濃厚。
地元埼玉産の、その名も「借金なし」という大豆使用というのも面白い。
この「借金なし」、地元の農林振興センターによれば
「借金なしは、こくと甘みが豊富で美味しい在来大豆。
収量が多くこれを作っていれば借金をなすことができると言われていたのが
命名の由来という説がある。」
ということなのだが、本当に濃厚な味を持った大豆である。
それが「庵 浮雨」店主の手にかかり,今日などは豆腐というより
クリームチーズのような味わい。
お酒にあわせチビリチビリ、ということができる、
地産地消の名品なのだ。
そしてそして何よりも、この店において絶対にはずせないのは
燻製名人の店主の自慢(いや店主は自慢していない、したいのは私)、
その時々で種類も変わる楽しい燻製メニューの数々である。
本日できますのは
鴨、サーモン、カツオ、カンパチ、タラコ、うずらの卵。
単品でも頼めるし、人数に合わせて盛り合わせにも応じてくれるのが嬉しい限り。
今日は「できるだけちょこっとずつ」と我が儘を言ってみたのだが・・

いや〜〜〜〜
私が燻製好きということもありますがね。
この盛り合わせの楽しさは筆舌に尽くし難いものがありますよ。
お酒は強くないとは言え、こんなにも美味しいものには
日本酒がとんでもなく合っちゃって困っちゃう、ということを
某師匠だの、某師匠だのに教わってしまった私。
今日もちょびっと舐めつつ・・・
うははは・
うははははは・・・(昇太風)
これは・・・合いすぎではございませんでしょうか?
そして、本日のお蕎麦は「新潟」と「茨城」。
このお蕎麦がまた「庵 浮雨」らしい個性を放っている。

箱盛りの、ふたつの小山。
この2種が2種とも、平静で眺めろと言われてもどうにも無理な
胸打震わす眺めである。
まずは茨城山に近づいてみましょう。

もはや不整脈でも起こしそうなこの姿。
極粗挽きの肌に浮かぶ、白い陽炎のような淡いホシ、
まばらに見え隠れる橙色のホシ。
不規則に震える素朴な輪郭線。
ロミオのようにいつまでも賛美していたくなるのは
さっきの日本酒のせいなのかこのアーケードの魔法なのか。
箸先の香りはまるみを持った、おだやかながら芳しい蕎麦の香り。
しかし店主は
「この蕎麦、すごく変わってて、出したて,挽きたてなのに
もう熟成臭がするんですよ」
と言う。
へ、そうかい?とワクワクして、口に含み
香りを探って探って味わうと・・・
確かに。
底の方に流れる熟成のような力強い香りを見つけた。
しっとりした舌触りの中から生まれる、
甘みと、香ばしい味わいと、底に流れる熟成感。
奥深い、厚みのある味わいに恍惚のひとときである。
そして、お隣にありますのは新潟山でございます。
ううう・・
これはさらにすごい眺めとなっておりますよ・・・

見るからにしっっっとりとした、茨城よりもぐっと黒めのお蕎麦は
こちらも粗挽き。
肌の下にうごめくように淡い大小のホシが見え隠れしている。
箸先に手繰り上げて衝撃。
感じたことの無い香りがする!
これは・・・蕎麦なのか?というほど
胡椒でも無い、生姜でもない、どこかスパイシーな香りである。
完全な十割で、原材料は蕎麦のみなのだから
蕎麦という穀物の奥深さにあらためて驚かされる。
口に含むと思った通り、いやそれ以上のしっとり感。
もにゃもにゃとやわらかい夢のなかに
異国情緒すら感じる不思議な蕎麦の香りと
いわゆる蕎麦らしい滋味溢れる味わいが織りなされている。
衝撃を受けているのは私一人ではなかった。
今日はじめて、はるばると電車に乗ってきたというお隣の男性。
「カレークリームせいろ」のあまりの美味しさに
あまりおしゃべりな人ではないようなのにその感動を店員さんに伝えている。
そうこの店は、この店主ならではの楽しい種物のファンが非常に多く
ランチ時はかき揚げセットや種物目当ての客でいっぱいなのだ。
種物は
「カレークリームせいろ」
「花巻クリームせいろ」
「トマト蕎麦」
などなどいろいろ。
花巻クリームせいろはアサリの出汁がきいていて
そう、まさに青海苔入りクラムチャウダー!
そんなのおいしいに決まっている。
ちょっと試食させてもらったが
本当に本当にお腹が2つ欲しいと切望せずにいられない
美味しさであった。
ここは「眠庵」同様、蕎麦湯がまた大変に美味しい。
釜湯にわざわざ蕎麦粉を溶いて
ポタージュのようにしてくれるところが増えたのはうれしいのだが
ただ濃いだけ、のところも少なくはないの事実。
美味しい蕎麦湯は、やはり蕎麦から味わいが溶け出した釜湯が美味しくなくてはならないし
そこ溶いてくれる蕎麦粉の香りももちろん大切。
その両方が素晴らしいらしいここの蕎麦湯は
お風呂のように入ってしまいたいほど美味しすぎる。

扉を出れば、ふっ と寂しいナカギンザ通り。
しかしその暗さが、
今過ごした時間の楽しさ、
3回もお代わりした蕎麦湯で温められた自分のお腹を
照らし出すのだ。
2010年08月14日
豪徳寺「あめこや」
本を出版するにあたってつらかったことは
大好きなお店を「選ばなければならない」ことだった。
本文で取材させていただいたお店はもちろんのこと、
巻末の「お蕎麦屋さんデータページ」でも
掲載出来る店数はごくわずか。
掲載のお願いをするお店の選抜にあたっては
エリアやお店の個性等が近く二者択一を迫られるケースあり
「本気で教えたくないんですけど・・・」と煩悩に苦しむお店あり。
その他様々な理由から断腸の思いであきらめたり。
結局掲載できずものすごく悲しかったような、
できなくてよかったような、
一番思い出に残るお店(心残りとも言う)、
それが「あめこや」だ。
「あめこや」さん、あまりにも人気で、
かなり先まで予約でいっぱい、という声を当時よく聞いたので
それがあきらめられた一番の理由。
せっかく行ってくださった読者の方が
何度も入れなかったりするのはよくない、
と思ったのだが、
なんとなんと、週末だというのに
6時過ぎに電話してスルッと入れてしまった。
「豪徳寺」駅、「山下」駅から徒歩1分。

だってね、だってね、もう、どこをどうとっても、
素晴らしすぎるんですよ、「あめこや」さん。
ナチュラルな木のインテリアのお店は、海辺のカフェのような、
絵本の中のお店のようなかわいらしさで。
まだ若い店主夫妻は何をどうしたらこうなるのかというほど素敵で。
そしてなんといってもおつまみ類が、
メニューを見ただけできゃーっと一気に盛り上がるほど美味しそうで
実際想像以上に,本当に美味しくて。
極めつけ、蕎麦は毎回連獅子のように頭を振り回したいほど素晴らしい。
もう・・・これ以上どんなしあわせがどこにあるのさ・・・
語るだけでうなだれたくなるほど
どうにもこうにもしあわせなお店なのだ。
こんなお店、みんな大好きに決まってるのだ!
実際今まで、「美味しいもの好き」「情報通」の友人や知人の方、
多方向から「あめこや大好き!」の声を何度聞いたことか。
やっぱりねえ〜・・・
だって、ほら!

この、焼き鯖・・・
その下に隠れたいちじくと白ウリ・・・
一つ一つの素材の選び方からして
メニューを見た人の心をわしづかみにしてしまうのに
それをここまでおいしく仕上げてしまう
全体のセンスには唸るばかり。

鰻の黄金焼もふっくらの焼き加減といい、
さっぱりだけど豊かな味わいといい
夏のおつまみにぴったり。
ほおずきに見立てたと言うプチトマトがまた、
「あめこや」らしく可愛らしい。
そして何よりお蕎麦・・・!
「あめこや」は、私が大好きな「毎回全然違うお蕎麦」が出てくるお店。
判で押したように毎日同じものを提供する努力というのも
謹んで敬意を払うべきものだが
柔軟かつ積極的な姿勢で、その時々の美味しい蕎麦を各地から仕入れ
状況に合わせてその個性を最大限に引き出し
最後にその店らしいウ゛ェールをふわっとかける。
毎日が実験のようにそんなことに挑戦し
進化し続けるお蕎麦屋さんは
私にとっては職人というよりまさにアーティスト。
今日の「あめこや」、
一枚めは福井県大野在来種。


見た目はほっこり、のんびりした風情ながら
たぐりあげて衝撃。
むわぁー!
福井らしい力強い香りを、それはそれはゴージャスにまとっている。
ここで私、何やら感激の声だか雄叫びだかをあげたような記憶もあるが
そのまま口に含むと、これまた。
今日の福井は、香りも凄いが
その「食感」においても穀物の生命力を感じさせられてしまうような、
むっちりムチー!とした密度の濃さ。
噛み締めるごとのコシ、そこから溢れ続ける甘み。
ちょっとちょっと、これが一枚目って、
2枚目はどんなことになっちゃうんですか!


ヒー。
確かに確かに、この茨城は桜川産の常陸秋そば、
トップノートの香ばしさが華やか!
そのやや軽さを持った香ばしさは食べ進むうちに、
常陸秋らしいふくよかな香りに変わり、
ふと気づくとまさに常陸秋らしい「王道」バランスにすっかり酔わされている。
連日の猛暑、やはりお蕎麦には厳しい季節であるのに、
(最近はやはり「アレ?」という体験も少なくなく)
その中で、これだけ美味しいお料理のあとで、
ひょいーっとこんっなお蕎麦を出してくれちゃうなんて。
みんな大好き「あめこや」さん。
まずは、電話してみてから
行ってみてくださいねー!
(こんなに正直に書いたら「あめこや」ファン達に
確実に怒られるーf^_^;)
.
2010年08月12日
神奈川・東神奈川「手打そば 蔵」
10年程前なのか、それともそれ以上なのか。
まだ私がパソコンというものを
持っていなかった頃のことである。
ある夏の朝、私は新聞の片隅に、
元横浜市長の某氏が書いた小さな記事を偶然読んだ。
その中に
「横浜の東神奈川駅のそばに、かつての部下が
実にうまい、いい手打ち蕎麦屋をやっているのだが
不況の昨今、本当にいいものでも
商売には難しい時代であるらしい」
というようなくだりがあった。
なにー!それは聞き捨てならない。
当時から既にシステム手帳が「蕎麦手帳」化していた私は
「ボール取って来い」と言われた忠犬のごとく
すぐにでも走りだしたい気持ちに駆られた。
しかし今でこそ「じゃあネットで調べよう」
と話は簡単なのだが、何せ当時は何も手立てがない。
ではどうするか。
今思えば、何も持たぬ者のパワーって恐ろしい。
(と言うより自分の食い意地、蕎麦意地が恐ろしい)
「何だかわかんないけどとりあえず行ってみよう!」
と無謀にも一切の情報も持たぬまま名前もわからぬ蕎麦屋を探しに
電車に乗って東神奈川駅に降り立ったのだ。
しかし「東神奈川」、私鉄駅ではなくJR駅。
駅前には第二京浜が走っていて区画が大きく、
こちょこちょと駅前商店街があるような私鉄沿線とは訳が違う。
大型トラックが行き交う駅前は広々して
どのあたりにありそうか見当もつかない。
途方に暮れていても仕方ないので
とりあえず闇雲に歩きまくった私。
お蕎麦屋さんがあると、その店構えを睨み
「む・・!お主か、お主なのか、違うのか」
と斬るか斬られるかの無言問答を交わし意を決して入店した瞬間、
アリャーこりゃ絶対違うよ(でももう後には引けぬ)
「つけとろ1枚ください」・・・・
といった失敗も。
(もりでなく、好きな種物を美味しく食べた方が確実に幸せな店もあるのだ!)
そんなわけで結局一日では見つからずまた後日出直し
今度は交番のおまわりさんを味方につけ
交番にある駅周辺の拡大地図を見せてもらって1軒1軒をワンワンわわん!と嗅ぎまくり
ようやくようやく探し当てたお店が

ここ。
東神奈川「手打そば 蔵」である。
自分の足で見つけた感激はひとしお。
大喜びでもりそばを食べたものだった。
その後、何度めかにこの「蔵」を訪れた、また夏の日。
例によってもりそば1枚食べた私は、
なんと会計時に、自分がお金をほとんどもっておらず
支払いに30円足りないことに気がついた!!
(私はダメ伝説には事欠かない人間なのだ)
その時の
「あーいいですよ〜、今度で」
と言う店主の、
特に愛想がいいわけでもない、こちらに全く気を使わせない、
実に何でもなさそうなおおらかな態度に、
私はさらにこの店が好きになった。
もちろん30円は翌週返しに行き、
その後も時折訪れていたのだが
ここ数年なかなか行く機会がなく、
今回は久々の訪問であった。
店内は始終テレビの音に占領されている。
客層はサラリーマンから家族連れまで色々で、
子連れ客への対応も家庭的で親切だ。
蕎麦は特に研ぎ澄まされたものでもなければ
洗練されたものでもない。
誠実に打たれた、ほんわかとした、
そしてちょっとダイナミックな味わいの蕎麦である。
しかしわたしは、ここの蕎麦に対峙すると
味わい云々、香り云々より
ただ懐かしく、ほっとするのだ。
あの、この店に出会いたくて歩きまわった夏の日が
そして30円の御恩に与った何年後かの夏の日が、
遠く白い光の中に浮かぶ。
そのまぶしいような懐かしさに目を細めつつ
「ただいま」
と、この蕎麦に帰ってきたような気持ちになるのだ。

2010年08月11日
立石「手打そば 玄庵」

相変わらず通りからは全く目立たない店である。
奥戸街沿い、ドラッグストアの派手な看板の横。
自家製粉、手打そばの文字はあるが
素っ気ない1階の入り口からは店の様子は想像できない。
2階の店内に初めて行った人は
その重厚な空間に驚くだろう。
私が行くのは大抵遅い時間なので
ただでさえ贅沢な空間をほぼ独り占め。
育った家と木の色のトーンが似ているせいか、
私には、森の奥にでもいるかのように自然で落ち着く空間だ。


まずは十割。
そう、ここはドカンと「小山盛り」である。
箸先の香りはそう強くないが、
しっかりと密度濃く、程よい弾力が心地いい。
噛みしめるうちに根底を支えるような香ばしい香りも感じられ、
十割のお手本のような、優等生十割である。


そして2枚目は粗挽き。
これこれ、これですよ。
1本1本に野生の力が漲っているような、
近く見入れば目を細めずにはいられないような
「玄庵の粗挽き」の眺めである。
箸先で香りを寄せると
野趣あふれる穀物の香りがふわぁとこちらに迫ってくる。
うわあこれは美味しい!!まだ食べてないが。
今日は見た目からして熟成感を感じたのだが
実際の香りにはほぼ熟成感はない。
いよいよ口に含むと
口内に触れるざらついた粗挽きの肌が心地よく、
噛み締めるとまた、その瞬間のジャリッとした刺激がたまらない。
舌に痛いのかと一瞬勘違いしそうな程(無論全く痛くはない)
愉快な刺激である。
この歯ざわり。
その中の刺激。
味わい。
舌全体に広がる甘み。
それらを探り、確かめ、
そしてまたうっとりと追いかけ・・
ふと気づいたらアラ不思議、
あんなにどっさりとあった小山盛りが手品のように消えてしまった。
店内は他に誰もいないから、おそらく私が食べたのであろう。
この店は蕎麦打ち教室を兼ねていて、
ここから巣立ち名店に成長していった店も多い。
今日私が食べた蕎麦を打った人にも
いつかまたどこかで出会えるのかもしれない。
そんな風に思うと、
こんな小さな夜もまた大切な夜なのだ。
それにしても、最近立石づいているなあ〜♪
「荒川を渡る夜空に蕎麦の夢」
2010年08月10日
新橋「ときそば」

拙著「蕎麦こい日記」でご紹介した、
新橋「辻そば」が上総一ノ宮に移った跡が
お弟子さんによって「ときそば」となって一年。
開店からそんなに経ったことに驚きつつ
久々に訪れてみる。
店内の印象は辻そば時代とほとんど変わらず。
私はここのこざっぱりと清潔な雰囲気が大変気に入っている。
「ときそば」だけに落語がBGMとしてかかっているのが面白い。
うるさくない程度にかかっているのでよく聞き取れないが
「時そば」ではないような?
私にとっての「時そば」は昇太師匠が標準&最高なのでわからないが。
(って書いただけでも細部を思い出してニヤニヤしちゃうほど可笑しいのだ!)
「ときそば」のお蕎麦は細打ちと太打ちの2種。
まずは細打ちから。


おおー
実に艶やかな黒っぽい蕎麦。
疎らに散る、黒々はっきりとしたホシが目にまぶしい。
見るからに密度の濃さを感じる蕎麦は
細打ちながら重量感をもって箸先に絡まり
干し草にも似た香りをほんのりと放っている。
口に含むとつるつるとした肌が口内を滑り
その中で時折感じる粗挽きのチリッとした刺激が実に快い。
全体の印象は違えどこの「時折チリッ」の心憎さは
師匠の「辻そば」を思い出すではないか。


太打ちは、平打ちで。
これも黒いホシがピリリとアクセントになった黒っぽい蕎麦である。
香りや味わいがそっくりなので
細打ちと太打ちは切り方の違いだけなのかもしれないが
やはり太打ちだけにしっかりと噛みしめて味わうことができる。
太さだけでなくこの密度の濃さであるから
噛みしめ甲斐もあるというものだ。
色々とても似ているのに、「辻そば」とは全く違う蕎麦。
時の流れに思いを馳せつつ、しみじみと味わう時間。
ここは「ときそば」、いい店だ。
お楽しみの蕎麦湯の湯桶には
見慣れぬものがささっている。

なんと濃いところが下に溜まってしまいがちな蕎麦湯のための
「竹製マドラー」なのだそうだ。
竹製だが竹のにおいもしっかり抜けており、
雰囲気も全体によく馴染んでいる。
何よりこういう、使う人の立場に立った思いやりというのは
嬉しいものではないか。
とは言え、かつて
「しあわせは蕎麦湯の底の濃いところ」
と詠んだ私。
しあわせは貯金して最後に楽しみたいため
残念ながらこのお店の素敵な思いやりは使えなかった。
ああもうやめたいこういう頑固な自分。
でもこれ、
「蕎麦湯と見たら、どんなに湯桶が大きくてもあるだけ飲み干す!」
という頭のおかしい人(私)以外には
本当にとってもいいですよね!
そうそう、湯桶の奥にチラと見えていたメニューも
チェックいただけましたでしょうか。
えいひれ、肉豆腐、焼きナス、干物盛り。
新橋の蕎麦屋で飲みたい者の心をいかにもくすぐりそうなラインナップ、
今度は飲める人とゆっくり来なくっちゃ。
また来ますね〜
ときそばさん!
.
2010年08月09日
国分寺「きぬたや」(お蕎麦の写真)
「どうしてお蕎麦の写真を撮るの?」
隣席に偶然隣り合わせたTNKさんが私に聞いた。
土曜の夜のことである。
いい加減酔っ払っているようで、目をシバシバさせている。
適当に流すのが下手な私は大真面目に考える。
このブログのため?
否それだけではない。
ブログに載せているお店、使っている写真はごく一部だ。
ブログに載せもしないのに撮る、
その一番の理由は
「その時私がドキドキしているから」だろう。
会えて嬉しい、見入ればドキドキ。
その美しさに出会えた喜びを、
その内なるときめきを、
何か形に残したいと思うのは実に自然な感情ではないか。
と私も段々熱くなりかけて隣を見れば
酔っ払ったTNさんは自分でふった話のくせに既に全く聞いちゃいない。
目が泳いでいるところを見ると
どうやら「自身の今後の生き方」について真剣に考えている。
お酒とおつまみの配分だ。
そして
「ここの玉子焼き、うまいですよ」
とか言ってくる。
あのー!
聞かれたから、
私一生懸命考えて答えてたんですけどー!
そんなわけで、今日は国分寺「きぬたや」の蕎麦写真。
開店一番に入店し、
まず出されたのが板状の蕎麦刺。
今日は4種のうち、最初の2種が食感を大切に、
あとの2種が風味を大切に打ったそうである。
お湯に沈められた最初の2種のうち、
白っぽい方のじわっとした風味がとてもいい。

と思ったらあとの2種は湯から揚げられた状態でやってきた。
確かに、最初の2種よりこの2種の方が
風味も甘みも豊かで素晴らしい。
右にある方がより粗挽きで、味わいもより濃厚だ。
うんうん、血中蕎麦粉度、上がってきましたよ!
盛り上がってまいりましたよ!

そしてお待ちかねの蕎麦である。
実に1年ぶりの「きぬたや」の蕎麦。
相変わらず、吸い込まれそうに美しい。


店主の狙い通り、最初の2種は実際香りや味わいは淡い。
しかし、その食感はまさに「きぬたや」ここにありといった繊細さ。
壊れやすいものを扱う時の緊張感を覚えるような、
はかなく高貴な印象の輪郭線ながら
その肌は意外なほどの強靭さをもち、
無数の夢が口内を細かく撫でてゆく。
目を閉じれば私は、
小学校の教科書で見た「スイミー」の絵の中、海の底。


そして後半の2種である。
どちらも素晴らしいのだが、
特にこの最後の1枚の美しさは何なのだ!
あなたは神か。(蕎麦だ。)
出会った瞬間、持っていたものを全てバサバサバサーッと落とす、
古き良き少女漫画の「一目惚れ」のレベルである。
椅子に座り、何も手に持っていない私はどうやってこの一目惚れを表現できようか。
とりあえず椅子から落ちてみるか。
否食べて椅子から落ちそうになったことは何度もあるが
食べないうちから落ちたら食べられない。
食べなくちゃ。食べるぞ。と頭では信号を送っているのだが
何せ少女漫画の一目惚れであるから実行に移らない。
目に星とハートをキラキラ浮かべて
ぼーーーーーーーーーーっと阿呆のように見入る宇宙。
ああ何もできない。どうしていいかわからない。
これを恋と呼ぶのなら私はやはり人間じゃないのかも。
なんでもいいや、もう食べよう。エイ。

っはーーーーーーーー。
美しい・・・・
その香りは、その芸術品のように美しい肌の内側に、
無数にゆらめく蕎麦の粒子の奥に
静かに、そっと眠っていたかのようにひそめられていた。
箸先にたぐりあげ、香りを寄せようとも、
こちらに漂ってくるのは清らかな冷気のみ。
しかし口に含み、その肌を、歯ざわりを確かめるうちに
あまりにも「蕎麦そのまま」のフレッシュな香りが
体を吹き抜け、目が覚めるような思いがする。
蕎麦の一番よい香りは
蕎麦打ちの時に打つ人だけが楽しめるものと言われ、
私も初めて嗅がせてもらった時は
「えー知らなかった!!一人でこんないい思いしてたんだ!ズルイじゃないか!」
とお蕎麦屋さん不信に陥ったものだが
まさにあの香りがする。
あの、最初の一番貴い香りが、
この吸い込まれそうな宇宙の奥に
そっと閉じ込められている。
ね〜〜〜TNKさん、
今度は聞いてました?
2010年08月08日
うひょ
2010年08月05日
神奈川・西鎌倉「ぐる庵」
北鎌倉なら知ってるけど「西鎌倉」なんてあるの?
あるのです、あるのです。
私にとって日本一懐かしい乗り物である「湘南モノレール」。
レールの上に乗っかっているのではなく
レールの上に「ぶら下がっている」このモノレール、
大船から江ノ島まで、
鎌倉の山の中を相当なスピードで暴走してくれる
一見のどかなようでなかなか激しいヤツでして。
私の姉が初めて乗った時の感想は、
「ねこバスだ!」。
確かに。
時に街を遠く見下ろしながら、
時に山に分け入り木の枝にゴンゴンぶつかりながら
高いところをワサワサワサーーーッッッと駆け抜ける勢いは
ねこバスそのものだ。
そのモノレールの「西鎌倉」駅から徒歩5分。
車通りは多いのに、
どうにも湘南、どうにものんびりした通りに面して
新しく綺麗なお蕎麦屋さんができた。
「ぐる庵」。
名前もなかなかユニークで興味をひくではないか。

明るく甲斐甲斐しい印象の奥さんが持ってきてくれた「せいろ」は
やや太め、平打ち気味のお蕎麦。
「気味」というのは太さ、形状がややバラバラで断定しづらかったからなのだが
ここで申し上げたいのは、
この「太さがバラバラ」というのは私にとっては全く欠点ではないということである。
いろんな味がしてこれもまたすごく美味しいじゃないか!
と本気で思うのだ。
この辺が、頑なに蕎麦打ちをせぬままここまで来た
「ただ食べるだけの高遠」ののんきでしあわせなところである。
蕎麦打ちのことはよくわからないし
美味しいお蕎麦屋さんは私にとって魔法使いなのだ♪


箸先にたぐると粉の甘い香りがむぅと漂う。
一本一本がずっしりと重量感のあるので口に入れるにも
やや暴れる感じのあるやんちゃな蕎麦だが、
噛みしめればすんなり優しい弾力を持ってほどけ
口内に甘みの余韻を残して消えていく。
金曜日は10食限定で田舎そばも打っているのとのことなので
それも気になるなあ〜
そして「名もなき豚とネギの蕎麦」ってネーミングいいなあ〜
さあ帰りもモノレール乗れるんだ!
うれしいなー
2010年08月04日
American Enoshima
素朴シリアル好きの私に、
Jonがファイバーのシリアルを買っておいてくれました♪
甘いのが苦手な私。
日本のシリアルがどれも甘いので
最近は海外ものに手を出してます。
最強はイギリスのAlaraのBran Sticksで
この素朴穀物好きの私(素朴なら素朴な程よろしい)
が食べても
「これは…人類の食べ物か?」
と思うほど手強い。
甘味が全くないのはいいのだが
牛乳かけても牙が必要なほど固く、
味わいも限りなくゼロに近い。
ちなみに原材料は「有機小麦ふすま」「有機全粒粉」のみ。
そう聞くと、もうちょっと穀物らしい味がしてもいい気がするのだが・・・
例えていうなら段ボールに牛乳かけて食べているような?
しかしそれも慣れてくると美味しくなってくる私は
どこまで修行僧なんでしょう。
自然そのままのものから淡い味わいや甘みを探るのが
どうにもこうにも好きらしい。
もちろんその中でも
お蕎麦への反応レベルは特別なのだが。
さあ〜このFIBER ONEはどんなかな。
巨大な無脂肪乳がなんともアメリカ。
Thank you,Jon!
Itadakima----su(^O^)!

2010年08月03日
たーまやー
2010年08月02日
田園調布「兵隊家」
田園調布の住宅街に
突然現れるお蕎麦屋さん、「兵隊家」。
広々とした店内の雰囲気は一見普通かもしれないが
なんだかんだでよく行く私にとっては
通えば通うほど、その店名の如くちょっと不思議な店である。
広々とした感じや住宅街の静かな雰囲気から
地方にあるのんびりしたお蕎麦屋さんのような印象も受ければ
やはり田園調布、客層も独特で、
赤坂砂場に似た風情もあるのだ。
ここがありがたいのは二色せいろがあることである。
(最近メニューの呼び名が変わった)。
石臼、寿、田舎と三種類ある蕎麦の中から
好きなものを2つ頼めるのだが、
石臼は機械打ちということもあり
「寿と田舎の二色」が私の定番である。

この二色、横長のせいろ二枚に
実にぎっしりたっぷり盛られてくる。
「寿」を一枚で頼むと900円、
「田舎」は800円となかなか高額であるから
この二色せいろ1250円は大変お得に思える。
とはいえ普通のもりを頼んだことはないし
周りの方々も大抵セット物を頼んでいるので
普通のもり一枚の量は知らないのだが
とにかく実に豊かな気持ちにさせてくれる「二色せいろ」である。
さて、本日の寿。
ちょっと緑がかっている。
新蕎麦のようなフレッシュな青緑というのではなく
韃靼のような黄味のある緑。
香りは淡いが、微粉の舌触りとむにぃーと伸びる歯ごたえが個性的。
噛みしめずとも舌の上に甘みが広がる、
やさしく品の良い味わいの蕎麦である。

こちらは田舎。
つやつやと輝く、美しく切りそろえられた蕎麦は
およそ「田舎」というイメージではないが
赤みを帯びた肌に近づけば
微かに熟成感を帯びた香りが、むわぁ〜と濃厚に打ち寄せてくる。

こちらはむにぃーと伸びる感触のある寿とは対照的に
スパッと潔く噛み切れてしまう蕎麦。
しかし味わいは濃厚なのでそれで十分に楽しめる。
座敷席では賑やかにフランス語が飛び交っているし
隣の品のいい老夫婦は二人してロースカツセットを大人しく待っているし
日に焼けて金のネックレスしてブランド品のセカンドバッグもった男性は
ずっとスポーツ新聞を読みながら
やたらにゆっくり楽しそうに一人晩ご飯している。
私はと言えば、ちょっと薄い蕎麦湯をくゆらせ
(私の感覚では蕎麦湯をゆっくり楽しむ時間には
「くゆらせる」という言葉が実にしっくりくるのだ)
これまたしあわせな時間である。
店員のおばちゃんの勢い?に時々縮み上がったりもするが
それまたここの個性の一つ。
さあー、豪邸街の夜道を、帰りますか〜

2010年08月01日
立石「土日庵」
立石で「立石らしく飲む!」のが大好きな友人が多い私にとって、
立石のお蕎麦屋さんに誰かを誘うのは至難の業である。
確かに、
「江戸っ子」のもつ煮込みは美味しいし、
「栄寿司」の雰囲気は立石ならではだし、
「ミツワ」の刺し盛りはびっくりだし、
「串揚げ100円ショップ」は笑っちゃうし、
「宇ち多”」に至っては自分が外国人になったかのような
カルチャーショックを覚えるが・・・
でもでもでも、私はやっぱり、
お蕎麦が好きなのだー!
というわけで「土日庵」。
土日でなくても「気まぐれに」やっている、
そんなゆるくて楽しい店。
扉を開けるとそこは立石。
今すぐ私が肩を揉まなくていけないのかと言うくらい
開けたその場所にお客さんの背中がある。
カウンターに7人座ればいっぱいの、小さな小さな店内。
扉を開けた私に
「一人?」
「奥入る?」
「こんなおやじの隣で大丈夫?」
店主よりも先にお客さんが口々に
私をどこに座らせるか世話を焼いてくれる。
しびれるねえ、立石人情。
店主はてんてこ舞いながらも
「どうぞ、よかったら奥へ」と
穏やかな口調で声をかけてくれる。
店内は今店主が焼いている「鴨つくね」のいいにおいでいっぱいだ。
まるで、昔からの知り合いのようにぽんぽんと、
でも本当は一人で酔客の中に入り込んだ私が居づらくないように、
気遣いながら話しかけてくれるお客さん達。
このお客さん達がまた、
みなさん実に「いい顔」をしていらっしゃるのには驚いた。
どの方も、
「どういう人なんだろう?」と興味を持ってしまうような、
目の奥に印象的な輝きがあったり、
実際(年季の入った)美形だったり、
ヒゲもじゃながら私が映画監督ならスカウトしたいような渋い味わいがあったり。
いい店にはいいお客さんが集うんだなあーとしみじみ。
店主は始終忙しそうだが常に自然な気遣いが感じられ
はきはきした奥さんの明るい対応も気持ちが良い。
この小さな宝箱のような雰囲気を壊したくなくて
写真がほとんど取れなかったのが申し訳ないが
かろうじてお蕎麦の写真だけは。


思わず「わあっ」と声を上げたくなるような、
目にまぶしい一面のホシである。
塵入りの土佐和紙のような素朴な風情。
自然そのままのような姿でありながら、
はっきりと、この国にしかない魅力を感じるのが不思議なほどだ。
香りは淡いが、繊細な歯ざわりと
じんわりと舌の上に広がる穀物の甘みを追いかけながら
もう一口、もう一口と
汁もつけずに夢中で食べる私に
「へえーっっ お蕎麦好きなんだねえ!!」
「アラッほんと〜」
「ここよく来るの?」
「最近は若い人でもお蕎麦食べるようになったんだねえ」
「たいしたもんだ」
と次々に声が。
や、ヤバイ見つかってしまった。
汁を付けなくては!!
と思った矢先、
「汁も美味しいんですよ〜・・」
とこれまた穏やかな店主の声。
あ〜〜ごめんなさいごめんなさい!
お蕎麦屋さんでつゆを付けないのは、
トンカツ屋さんでソースを付けないのとは訳が違い
お寿司屋さんでネタを剥がしてネタだけ食べているような
失礼なことだと思っている私。
(思っている癖に毎回やるのもどうかと思うが・・・)
いま、汁、つけます!
いただきます!
ズルズルッ
アレ
ほんとに美味しい。
ここの汁は東京においては実に個性的。
鰹と、昆布もかな?出汁の香りがふんわりと、
今関西の気鋭の店で楽しめるような汁だ。
あらー
しかもこの蕎麦には実に実によく合っているではないですか。
立石の飲み屋街の蕎麦ってったら
小麦粉味の大盛り蕎麦に
あまから〜〜い、濃い汁を思い浮かべるが
この蕎麦にしてこの汁。
こんな意外さもまた鮮烈でいい。
蕎麦1枚なので他の皆さんよりもさっさと食べ終わってしまった私。
「ああ〜そこ出るから」
と何故か遠くのお客さんが声をかけてくれ
「アラッ通れるかしら」
「オイオイ大丈夫かね」
「いけそう?」
「若い人はねえ〜」
すみませんすみません、よいしょっと、
他の方の背中をかき分け、引っこ抜かれるように店を出た私。
「ありがとうございましたぁ〜」と
実に自然な店主と奥さんの笑顔。
午後7時半。
日曜日の飲み屋街は、がらんと静かである。